エピローグ

エピローグ


 ブリタニア南部。

 グラストンベリーきんこう上空。

 時刻は、午前七時二十分。

 けるような快晴のそうきゆうを、五人のウィッチたちがっていた。


「まったく、早朝の自主訓練にかこつけて、こんなに遠出するなんて」


 編隊飛行を続けながら、ペリーヌは顔をしかめた。


「ちょ、ちょっと心配です」


 と、くまでも気弱なリーネ。


「ネウロイも昨日来たばっかだもん、今日はお休みでしょ?」


 先頭を飛ぶシャーリーが、ニッと笑う。


「にしたって……」


「ほらほら! 見なよ、芳佳!」


 ルッキーニが前方を指さした。

 大草原の真ん中に円をえがくように配置されたきよだいな岩々が、芳佳の視界に飛び込んでくる。


「あの〜、あれって何なんですか?」


 たずねる芳佳。


「……古代ケルトのたみせきですわ」


 ペリーヌが、そのそうごんさに打たれたかのような顔つきで、歴史に思いをせる。


「そう。あれこそが太古からの、大地に刻まれた人の営みのおくよ」


「人の営みの……記憶」


 無骨な岩を見つめる芳佳。


(お父さんも……見たのかな、この遺跡……)


「人間はこの美しい大地の上で生き延びるために、必死であらがい続けてきたのです」


 いつになくなごやかな表情のペリーヌ。


「ちょうど、今の私たちと同じように」


「そうそう、気の遠〜くなるような昔っからね〜!」


 と、ルッキーニ。


「……あなたが言うと、ずいぶん、軽く聞こえますけど?」


 ペリーヌのくちびるかられるため息。


「いいじゃない! ほらほら!」


 ルッキーニは遺跡の上で、インメルマン・ターンをあざやかに決めて見せる。


「気〜持ちい〜いっ!」


「……まあ、確かに、たまにはいききも必要かも知れませんけれど」


 あきらめた表情になるペリーヌ。


「お? お高くとまったおじようさまが、本日はずいぶんとかんだいなことで?」


 おもしろがるような顔つきを作ってからかうシャーリー。


「たまには、と言ったんですわ! たまには、と! あなたがたみたいに三十秒ごとに息抜きされてたまりますか!」


 ペリーヌはわめき散らしてから、そのいかりのほこさきを芳佳にも向ける。


「宮藤さん! あなたもいつまでもまめだぬきみたいなノホホ〜ンとした顔でダラケているんじゃありません! 坂本しようがお困りになるでしょう!?」


「だから、私は豆狸じゃないですってば! もう!」


 芳佳はベエッと舌を出してリーネの手を取ると、ペリーヌをり切るように速度を上げる。


「ま、待ちなさい! まだ話は終わっていませんことよ!」


いやですよ〜だ!」


 大きく左にせんかいすると、眼下はヒースの野原。

 草をむ白い羊たちが、まるでみどりの海にかぶ千切れ雲のようだ。

 ラバにまたがった羊飼いたちが、芳佳たちを見上げて、手を振っている。


「地球って……丸いんだね」


 ゆるやかにわんきよくした地平線をの当たりにして、つぶやく芳佳。


「うん。このまま一周できそう」


 うなずくリーネ。


(……私、がんるからね、お父さん)


 芳佳はリーネといつしよに、羊飼いたちに向かって大きく手を振り返すと、速度を上げてじようしようした。

 その後に続く、シャーリー、ペリーヌ、そしてルッキーニ。


「その力を……多くの人を守るために!」


 鋼鉄のホウキをじよたちは、蒼天高くに吸い込まれていった。

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