第一巻 解説




 2003年に、一つのメディアミックス企画が立ち上がりました。そのキャラクターデザインを、かねてから気になっていたしまフミカネさんにしんして生まれたのが、『ストライクウィッチーズ』です。


 ただ、元々の擬人化兵器少女の設定では、TVアニメにするには難しい部分も多かったので、島田さんと改めて設定や世界観を詰める必要がありました。

 こうして、たいは我々の世界とは似て非なる世界、そこにはほうがあり、「ウィッチ」と呼ばれる魔女たちがいる世界が誕生しました。物語は、その世界の1939年から始まります。

 実際の第二次世界大戦をモチーフとしていますが、そのままだと女の子同士が殺し合う、さつばつとしてさんな物語になってしまいます。特に主人公が日本人である以上、最終的には負けることが最初から決まっているのも、展開上問題があります。もちろん、そういった方向性を好む人もいると思います。しかし、この作品のテーマは「いかにして女の子を可愛かわいくするか」でした。


 作品の方向性や設定、世界観、そして物語において、女の子が可愛くならないような場合はそれを変えて、可愛くなるようにしました。この「可愛く」というテーマは、TVアニメ版のたかむらかずひろ監督の意向も同じで、物語作りから行動や台詞せりふ回しにおいて、どのように可愛くするか、そして悩んだ場合はその子が(結果的に)可愛くなる方向が正しいとして進めていました。

 この可愛いというのは、表層的な見た目の可愛さだけではなく、行動し、考え、なやみ、のうし、傷付き、その中で成長していくさまが可愛い必要があります。物語は、まずキャラクターありきで、そのキャラクターをどれだけ魅力的にえがけるかということでもあります。


 そして、メディアミックス企画なので、他のばいたいでも作品が生まれています。このノベライズも含め、もう一つの小説、コミック、そしてイラストコラム、フィギュアなどと。それぞれに対してのオーダーも、まず女の子たちを可愛く描いて下さい、ということでした。色々な人が関わっている以上、それぞれの人が考える可愛さというのはあると思います。それを追求しつつ、生まれているのがこれら他の作品です。


 さて、そういったコンセプトの元に作られている『ストライクウィッチーズ』ですが、物語は前述の通り、第二次世界大戦がモチーフになっています。しかし、大きく違うのは、この世界では「ネウロイ」という異形の敵のしゆうげきを受けており、そしてそれに立ち向かえるのは「ストライカーユニット」と呼ばれるメカあしをはいた女の子たち=ウィッチだけでした。というのも、ネウロイは金属をしようめつさせるビームを発射し、しかも強力な再生能力を持っています。通常兵器の攻撃では、ネウロイに多少のダメージを与えても、すぐに再生され、しかも向こうの攻撃を防ぐすべはビームをけるだけです。それに対して、ウィッチの基本的な魔力の一つに、シールドをはれるというのがあります。このシールドにより、ネウロイのビームをはじき返し、身を守り、ネウロイに接近して攻撃できるのです。


 そして、メインキャラクターたちは、実在した第二次世界大戦のエースパイロットがモデルになっています。各キャラクターの設定、例えば出身、階級、誕生日、機体などにそれは使われています。例えば、「ハルトマン」と「バルクホルン」は、世界で二人だけ、それぞれのげきつい機数が300機を超えた、本当に空前絶後のスーパーエースでした。それ以前にもそんな戦果はなく、そして今後も多分ありえないでしょう。他のエースたちも、それぞれが驚くほどの活躍をしています。もちろん、その人たちが活躍できたのは、それを支える多くの人がいたからでもありますが。


 しかし、そんな人々のことは歴史の彼方かなたに忘れ去られつつあります。『ストライクウィッチーズ』を通じて、すこしでもそんな人々に思いをせてもらえればと思います。


 ちなみに「リーネ」だけが、モデルがちょっと他と違います。名前から想像できるウィッチではなく、そこから一ひねりしてあります。だれがモデルなのか、興味があれば調べてみるのもおもしろいかもしれません。


  鈴木貴昭(『ストライクウィッチーズ』世界観設定・軍事考証)

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