第三章 第三話
一方。
「あんたねえ、この陽気でスキー持ってきてどうすんの?」
ルッキーニは、夏の
「だから、予告編だって」
ご
「へ?」
「冬の
「予告編だけかい! って、あんた、あたしたちをからかうためだけに、スキー持ってきたでしょ!」
「おお、当たり」
わざとらしく
「むしろ、ピンポイントでルッキーニをからかうためだったり?」
「……もういいから」
ルッキーニは白旗を
「裏に行って、子供たちに配る風船
「はいはい、
エイラは舌を見せながら敬礼し、ヨタヨタとスキーを
「オメ〜、確かこの前、うちの畑に
お好み焼きと焼きそばを出す芳佳の屋台に、中年の農夫がやってきて笑いかけた。
芳佳は、坂本少佐から
この間、というからたぶん、二週間前の訓練のことだろう。
「そ、そ、その節はごめんなさい!」
ねじり
「まあ、いいってことよ」
農夫はニット
「
「はい! もう元気いっぱいです!」
「その、パイみたいの、俺にひとつくれ」
「はい! これ、扶桑名物、お好み焼きって言うんですよ!
お好み焼きは、たっぷりと緑と赤に染まった。
その
「へえ〜、あんたんとこじゃ、塩を入れないんだねえ」
村の主婦たちが、プレーン・スコーンの
「はい! その代わりにほんの少しだけ、レモン
「今度
「それに、こっちのルバーブのジャムはですね」
ワイワイやっている様子は、ほとんど、オバサンの
「そんでよ、こいつ、畑耕すのに使えんのか?」
ストライカー・ユニットの展示場では、シャーリーが農夫たちの
「ええと……どうかな?」
答えに
「
「水車には使えねえのか?」
スペック的な数字よりも、
「た、たぶん、無理じゃないかと」
「
「んじゃあ、
「
「……
楽をしようと思っていたのに、
「……これがストライカー・ユニットですか?」
ちょうどそこに立ち寄ったガレット
「間近に見るのは初めてですが、洗練された魔道エンジンですね」
「調整状態もいい。特にこれ」
ガレットは展示中の三機の
シャーリー自身のP‐51Dだ。
「無骨な機体に見えるけれど、かなり
「えへへ。分かるんだ?」
「家が機械屋なので、大いに興味がありますよ」
と、ガレット少尉もつられて笑う。
「へえ?」
「うちで
「じゃあ、こんどチューンナップを手伝ってもらおうかな?」
「私でよければ。エネルギー配分はどうなっています?」
「今のところは……ほら、このくらい。でもさ、実戦になったら……」
二人は村人そっちのけで専門的な話に花を
「さあさ、みなさんのお待ちかね! ストライクウィッチーズの
一礼したミーナは静かに、故郷カールスラントの映画で使われた
この世に生まれ ただひとたび
夢ともまごう 素晴らしさ
うたかたに 天から降りし
この世に生まれ ただひとたび
夢か、それとも
二度とはない喜び
この世に生まれ ただひとたび
二度とは帰らぬ 美しき
この世に生まれ ただひとたび
春の
花開く時に
言葉の
客席のあちこちから、すすり泣く声が聞こえてくる。
芳佳などはもう、
「ふと〜ももが〜
国防市民軍の老スコット少尉も
歌い終わった時には、ロンドンの大ホールのコンサートに
* * *
「リ〜ネ! 何か飲み物〜」
ステージが小休止に入ったところで、リーネの屋台にルッキーニが
「ルッキーニちゃん、ごくろうさま〜。オレンジ・ジュースでいい?」
「うん!」
ルッキーニは、リーネが差し出したグラスのジュースを一気に飲み干した。
「素敵だったね〜、ミーナ中佐の歌」
リーネはうっとりとした表情で
「ほんと、もうほとんどプロの歌手だよね〜。このまま営業に出よっかって感じ?」
「それにそれに〜、坂本少佐の
「そうそう、
「……いや、それは笑ったら
さすがにリーネは、困ったような顔になる。
「そう言えば、芳佳は?」
ルッキーニは、お好み焼きと焼きそばの屋台の方に目をやった。
「姉ちゃん、あと焼きそば二つな!」
「はい!」
「こっちはお好み焼き!」
「はい、毎度!」
「姉ちゃん、こっちも!」
「はいはい!」
どうやら大
「……戦いより、あっちの方が向いてるんじゃないの?」
ルッキーニは少しばかり
(ほんと、何であんな子が戦ってるんだろ?)
「……ペリーヌじゃないけどさ、坂本少佐が芳佳を引っ張ってきた理由って、よく分かんないよね」
「そうかなあ」
と、リーネ。
「私には、なんとなく分かる気がするよ」
「?」
「芳佳ちゃんはね、自分に
「自分に頑張れ、ねえ〜」
ルッキーニは首を
「……やっぱ、よく分かんないや」
「えへへ、私も分かってないのかも。でも、芳佳ちゃんを見ていると、何となく、元気
「あんたさ、元気と
ルッキーニは、さっとリーネの胸に手を
「な、な、何するんですか!」
「この半分でも、芳佳にあればねえ」
「半分あげたいですよ」
リーネは
「大きいのだって、大変なんですからね」
と、その時。
「!」
遠くからサイレンの音。
「あれって、基地の警報!」
今までの笑顔をかなぐり捨て、魔女たちは
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