第二章 第三話
「全機、スクランブル! 私も出ます!」
ミーナはそうウィッチたちに指示を出すと、自分もハンガーに向かいながら通信兵に
「どうしてこんなに発見が
「どうやら、高度100m前後の超低空飛行で接近してきたようです」
通信兵はミーナに歩調を合わせ、司令部からの通信に目を通しながら報告する。
「
「はい! 進行方向から見ても、確実かと」
(ネウロイが我々の目を
かすかに
「……でも、こうも不規則に来られると、みんなの負担が心配だわ」
ミーナは小さくため息を
一方。
「何で私が宮藤さんごときの
「そりゃこっちの
芳佳=巴御前を両側から
要領のいいルッキーニや他の面々は、もう先にハンガーで発進準備に入っている。
「ともかく、この頭の
「いいのか、それで?」
「
「……ないよなあ」
首を
しかし。
「
ハンガーに
「我も出よう」
「で、出てくださるの?」
ホッとした様子のペリーヌ。
「我は戦しか知らぬ
芳佳=巴御前は、
「なあ、今の宮藤にこいつの操縦法、分かるのか?」
眉をひそめてペリーヌに尋ねるシャーリー。
「……あ」
ペリーヌは、額に手のひらを当てた。
「ちょっと〜、二人とも急ぎなよ〜!」
と、声をかけてきたのは、すでに
「あなたねえ! この責任の
「
ニッと笑うルッキーニ。
「今の芳佳って、完全に巴御前って人になってんでしょ? だったら、絶対にいつもより
「どういう
「も〜、心配
「ああ、坂本少佐に
ペリーヌは絶望的な表情で頭を
一方。
「これがこの国の馬か?……
芳佳=巴御前は、ストライカー・ユニットに
「弓もずいぶんと変わった……」
弓、と呼んだのは、99式2号2型改13mm
「引き金を引きゃあ、
と、教えるシャーリー。
「ふむ。そうして乗るのか?」
シャーリーが装着するのを
「……ふむ。
その様子に、
「い、いやねえ、宮藤さん! いつものボケ、今日は特にひどいですわよ!」
笑って
「ほら、行くよ! 巴御前!」
ルッキーニがまず見本を見せる。
シュウウウ!
ブロロロロロロロ!
使い魔の耳と
「こうやるの!」
上空から振り返るルッキーニ。
「……なるほど、
ブワッ!
「飛べ! 天馬!」
こうして平安の女武将は、ブリタニアの夜空へと飛び立った。
* * *
「ネウロイの目標はレーダー基地。
真っ暗な洋上を飛行しながら、ミーナはウィッチーズに告げた。
かなり近づかないと
坂本は眼帯を押し上げて、ネウロイの姿を探す。
「……来た! 二時方向! 高度は……100……いや、50……超々低空の20mだと!」
ウィッチたちは
「まるで空飛ぶお皿ですわね」
降下しながらペリーヌがつぶやいた。
レーダーに映らない高度、というよりは海面上を
こちらに向かってビームを放つ
監視塔の報告よりも多い、十機編隊だ。
「新型だな。ずいぶんと小回りが
坂本の口元に
「バルクホルンとハルトマンが先行し、他の者は
「
「了解」
息の合ったバルクホルンとハルトマンのWエースはロッテ(二機編隊)を組み、ネウロイの編隊に
と、その時。
「……何だ、あれは!?」
坂本は一瞬、自分の目を疑った。
バルクホルンたちよりもさらに高速で、ネウロイに向かう機影があったのだ。
白い水兵服に、
「宮藤だと!?」
「あちゃあ〜」
手のひらで顔を
「きゃあああ、芳佳ちゃん!」
リーネが悲鳴を上げる。
芳佳=巴御前は、
「宮藤さん! 命令に従って!」
「……あれが敵、というわけじゃな」
ミーナの声を無視した芳佳=巴御前は、13mm
「我は巴!」
ビシュンッ!
いや、
「まずは一
黒い
「宮藤!?」
バルクホルンとハルトマンさえ、一瞬、動きが止まる。
「ほらほら! やっぱ、あれって巴だよ! 芳佳じゃないって!」
ルッキーニは大喜びする。
「……なあ、本当にトモエ何とかが
「暗示です! 暗示にかかっただけですわ!
顔を見合わせるシャーリーとペリーヌ。
「二の矢は無用!」
芳佳=巴御前はネウロイ編隊の中心に飛び込むと、さらにもう一機を
「どう……なっちゃったの?」
つぶやいたミーナは、すぐに作戦を
「バルクホルン、ハルトマン! 美緒も宮藤さんをフォローして! 他は待機!」
何しろ、芳佳=巴御前の動きが速過ぎる。
ついてゆけるのは、Wエースと坂本ぐらいのものだ。
「……あれが宮藤だと?」
「宮藤さん、すごいね!」
バルクホルンとハルトマンは目の前で起こっていることが信じられない様子だったが、ミーナの指示に従う。
「次!」
芳佳=巴御前は、銃弾を放ったあとの目標の
一撃で仕留めたという確信があるのだ。
ネウロイが応射するビームも、芳佳=巴御前のシールドにかすりさえもしない。
「私たちの援護なんか
ようやく一機を撃墜したハルトマンが
「……この戦い、宮藤に持っていかれたな」
だが。
「……
「宮藤の姿が二重に?」
魔眼に映った芳佳=巴御前の姿が、まるでピンボケ写真のように
「何が起こっているんだ?」
「やれやれ! やっちゃえ〜!」
「ブラボー! ブラボー!」
その声に坂本は
「ルッキーニ? それに……」
よくよく観察すると、シャーリーとペリーヌの様子も少しおかしい。
「……なるほど、あいつらの
坂本は、
「ならば、まずは目の前の敵を片付ける!」
坂本は軍刀を抜くと、目標と定めたネウロイとの
「あれが……大将か」
芳佳=巴御前は、他の
「いざ! 最後の
空中を
「木曾
降り注ぐビームの矢。
「義仲殿!」
芳佳=巴御前を、ネウロイのビームはまったく
「何ゆえ、巴を解き放たれた!? 巴は
ふと、その目に
平安末期、平家の暴政に対して挙兵した木曾義仲は、京に入って
芳佳=巴御前は、99式2号2型改をコアに
同時に、
「……よい戦であった」
血振るいをするように、
「義仲殿に、この巴の
プロペラが停止し、小さな
「キャアアアアっ、芳佳ちゃん!」
「芳佳ちゃん! 芳佳ちゃん!」
「……ん、ん〜ん?」
「……あれ、私……
自分の姿を見て、芳佳は
「ネウロイと戦ってたんだよ、さっきまで」
リーネが説明する。
「い、いつの間に
自分は確か、食堂でみんなとコックリさんをやっていて、突然、風が
そのあとの
「覚えていないのか?」
と、近づいてきて顔を
「あなたのおかげで、私たちは大、大、大
ペリーヌが
「わ、私のせいって……」
何も覚えていないのに、非難されるのは不当だと思う反面、覚えていない間に何をしたのか不安になる芳佳。
「……私のせい、なんですか?」
「決まっているでしょう!」
「うう……ごめんなさい」
うやむやのうちに謝らせられる芳佳。
やがて、他のウィッチたちも、芳佳のまわりに集まってくる。
「……」
心配しているのか、
「いい、宮藤さん? あなたの
と、芳佳を注意しようとするミーナを、坂本が視線で制した。
「……さあて」
坂本はルッキーニたちを
「どういう事態なのか、説明してもらおうか?」
芳佳やリーネたちの視線が、ルッキーニに集中する。
(え〜、あたし?)
小さく自分を指さし、顔をしかめるルッキーニ。
うなずく一同。
「じ、実はですね」
ルッキーニはしぶしぶ、説明し始めた。
「ほう、それでお前らは、コックリさんで何かに
話を聞き終わった坂本は、
その言い回しから察すると、どうやら坂本は本当に巴御前の
「でも、でも! 毎回出撃前にコックリさんをやれば、戦力倍増ですよ!
ルッキーニは、
「……微妙に役立たずって」
「ほうほう、そうか。なかなかいい提案だな」
坂本はニコニコしてルッキーニの前に立つと……。
ゴンッ!
こぶしをルッキーニの頭に降らせた。
「というわけがなかろう!」
「……つつつ〜っ」
「どうします、この連中?」
坂本はミーナを
「そ、そうねえ」
ミーナは困り果てた顔を見せる。
「……終身トイレ
と、とんでもない提案をするエイラ。
「こら〜! あんただって止めなかったじゃない!」
あまりにも
「んじゃあ、終身草むしり?」
「だ・か・ら! 提案しなくていいの!」
「……取りあえず、情けなくて報告書にも書けないので、この一件に関しての
ミーナは
「以降、基地内でのコックリさんは禁止」
「
「了解です」
ホッと胸を
「いいわね、ルッキーニ
「……は〜い」
しかし……。
* * *
数日後。
「中佐! クロステルマン中尉が、ルッキーニ少尉のダウジング
ハンガーの整備員が、ミーナのところに
「……ルッキーニ少尉をここに呼んで」
ミーナはこめかみを押さえて
その数日後。
「中佐! イェーガー大尉が、ルッキーニ少尉のダイス占いで、カラミティ・ジェーンになってしまってます!」
どこからか聞こえてくる
「ルッキーニ少尉を呼びなさい!」
ミーナは、バンッと
またまた数日後。
「中佐! 今度はリーネ
もはや実在の人物でさえなかったりする。
「ルッッッッキィィィィーニ少尉!」
ミーナは
もちろん。
その後、ありとあらゆるオカルト
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