グッドナイト・シガーキス Good nights cigar kiss
朔 伊織
nothing
20××年 8月×日付「浅義達也への手紙」
別に、嫌いじゃないのよ。
だけど、
好きでもないのよ。
だから貴方が私を忘れて他の良い人を見つけてくれた方が、私は楽だし貴方は幸せだ。お互い
だから、もう、忘れてくれない?
利害はとっくに一致してるんだから。
それにほら、恋愛感情なんてなかったでしょう?
少なくとも私の方はなかった。貴方がどうだかはついぞ知ることがなかったけど。あぁ、でも笑ってはくれたわね。そういえば。それだけは嬉しかった。ああ、私だけって、思った。
今でも時々思うのよ。
どうして出会ったんでしょうね、って。
運命ではないことだけは、わかっている。
だから多分。必然ね。
だから今貴方がこれを読んでいることも、茫然自失でようやく立っている状況だっていうことも、必然よ。
貴方が私の首から引きちぎって持って行ったロケットに入っているこの手紙を、貴方が読むことなんて、この先に続く未来へのただの布石で必然。
だからね、別にいいのよ。
貴方に殺されるんなら私は本望だわ。
むしろありがたいのかも。
軍の誰かに殺されるより、得体の知れない敵に殺されるより、何かに殺されるより。
それに死に場所もここでよかったと思うの。普天間のあの白い基地で死ぬのも嫌だったし、かといって東京第二基地のあの汚い地下で死ぬのも。
あぁでも、戦場で死ぬよりかはマシなのかも。
とかいろいろ言っているけれど本当のところはわからないわ。そう、わからないのよ。だってわからないことが世界というものでしょう?
でも
いろいろ、自分の気持ちでさえわからないけれど、少なくともこれだけは言えるわよ。
これを読んでくれてありがとう。達也。
また会いましょ。
立川 小枝
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