32作目は時代もの
読了20161111
『
初出「オール讀物」文藝春秋、1936(昭和11)年2月
約 1万字 青空文庫(えあ草紙)にて。http://www.satokazzz.com/books/
選んだ理由:師匠から古典と戯曲(脚本)をおススメされており、吉川英治はかつて両親の書棚でよく目にしており、その名を冠した文学賞もあるほどなので読んでみようと思った。ちなみに、吉川英治文学賞は大衆小説を対象とするそうだ。
読んでみて気付いたことは、句読点が非常に多いが、それが気にならないほど読み易いことである。それにより、小説の体裁ではあるが、あたかも目の前で芝居が繰り広げられているような臨場感が醸し出されていると感じた。
また、読み初めに主人公だと思った人物から徐々に焦点が移っていき、最後は……となるが、そこに違和感は全くない。むしろ、そうした書き方の効果なのだろうか、人間の多面性や奥深くに眠っていた狂気や異常性を垣間見るという、覗き見にも似たような不思議な感覚を味わうことになった。
時代劇の設定ではあるが、描いているのはどの時代にもあり得る人間の業だ。ある事件をきっかけに、それまで思いもよらなかった側面を見せられたり、自分の中に見出したりする。だがそれもまた、人間としての面白さであり怖さでもあるのだと感じさせる小説だった。ホラーではないが、それに近いテイストも横たわる。
鷹を巡る場面は非常に躍動感があり、臨場感に溢れ、映像が目に浮かぶようだった。登場人物それぞれの心情も丁寧に描かれ、感情移入しやすい。
娯楽小説として多くのファンを得たのも納得の筆だった。
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