17作目も芥川龍之介で『羅生門』

『羅生門』芥川龍之介 初出「帝国文学」1915(大正4)年11月

 約 12 P(500字/頁)=約6千字:えあ草紙にてhttp://www.satokazzz.com/books/

 読了 20161025


 音読(ツイキャス)21:20終了

 http://twitcasting.tv/happyendwriter/movie/317580325


 京都・洛中のさびれた様子から始まる町の描写も、登場人物の様子も、とにかく暗い。救いようのないほどに。さらには「貧すれば鈍す」と言わんばかりの下人と老婆のやり取りには心が一層暗くなる。


 なぜ人々はこんなにも暗い作品を文豪の名作として賛美するのだろうか。なぜ映画まで作ろうなどと思ったのだろうか。


 日頃は見て見ぬ振りをして、気付かぬように暮らしているけれど、確実にそこにある、生への執着、エゴまみれの保身の姿を作者は見事に抉って描き上げている。なんとも醜いその様は、実はどんな人間の奥底にも存在し、避けて通れない「負の側面」なのかもしれない。


 ぼんやりと感じているそれを、芥川龍之介は鋭く明瞭な言葉で描き出している。

負の部分と向き合うことが出来た人間の使命であるかの如く。

 その文章に触れたことで、自らの漠とした不安や例えようのない感情に納得できたり、腑に落ちたり、自分なりに昇華できるという読者が居るということなのだろう。

 暗い時代だから明るいものが読みたいという読者も多いだろうが、しっかりと己と向き合うことを望む読者も居る。すべては読む者に委ねられる。だからこそ、おもねるのではなく、本当に書きたいものをきちんと書くことが大切なのだと思った。


 明日も芥川龍之介の短篇を読む予定。

 

 



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る