第10作目はカクヨム書籍化決定作品200話の話題作(5日間)

『いちいち癇に障るんですけどっ!』 如月芳美 著

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880958153


 1.読了20160929 第1話~50話、うち音読了は33話~41話(約30分)21:00

  1万字程度

 *1日50話を目途に4日間で読破の予定


 良作を選んで読め、との師の教えに則り、カクヨム書籍化が決定してるこの話題作を10作目に選んだ。200話もあるのは少々怯むが、実は連載当時から夢中になって追い掛けていた作品なので、物凄く読み易くて面白いことは分かっているので気持ちはとても楽だ。


 せっかくの再読なので、今回はテーマを設けて読んでみた。

 思い当たったのは以下である。

 ・どこで神崎さんは花ちゃんに惚れたのか――第35話 ピンクのワイン

 ・花ちゃんはどこで神崎さんに落ちたのか――第36話 うあーん!

 ・神崎さんが完全に恋心を意識したのはいつか――第41話 あふあふ


 外見はカバだけど心はイカす乙女の花ちゃんの魅力に気付いた神崎さんはエライ!と第35話の場面に拍手し、第36話で花ちゃんが胃袋を掴まれての号泣シーンはこっちまで泣きそうになる。恋は胃袋を掴んだものの勝ちだ、まさに料理は愛を制すを地で行く展開に笑いと涙が溢れる。

 そしてこちらもラブコメの王道として、障害があることで恋心を意識した第41話はなかなかに読ませる、本当に楽しい小説だ。


 作者は「カクヨム開始と同時に書き始めたばかりの素人で、プロットという言葉さえ知らなかった」と豪語するが、それでここまでのものが書けてしまうというのはよほどの才能&努力家なのだろう。


 また、コンテスト不参加の本作が、早々に編集部に拾い上げられ書籍化が決まったことは、当時、連載を嬉々として追い掛けていたファンの一人として本当に嬉しく思うと同時に、編集部の「観る目」をとても頼もしく思ったものだ。


 さて、読む読む修行の視点に戻ろう。

 これまでの音読に比べると、途中から京都弁が入ることもあって、口が上手く回らないところが多々あった。普段あまり自分が使わない語彙が入っていたり、句読点の位置などの癖が違うと、音読では如実に出るようだ。

 また会話文は、軽いタッチでありながら、実際に口に出してみると非常にインフォーマティヴ(情報量が多い)なことに気付いた。なかなかの技量の持ち主だ。


 本作を選んだもう一つの理由は、軽妙な会話文にある。

 以前に萩原編集長が書籍化作品を拾い上げる基準の一つにそれを挙げておられたからだ(確かカクヨム放送局の初回)。リズム感のある会話文&センスは作家の個性と直結しており、編集者が手を出せない、出してはいけない部分だと。逆に、それ以外の部分は編集の方でサポートすることが出来るからと。


 それを聴いた途端、実は私はこの作品を思い浮かべた。まだ書籍化発表の1か月以上前のことだった。いま改めて読み返してみて、やはりこの軽妙なやり取りと絶妙な間の取り方、展開の仕方は本当に読んでいて心地よい。


 翻って、さて自分の書き方修行の点でこうした学びをどう生かせるかと考えると、もちろん如月芳美氏のようには絶対に書けないが、自身の作風に照らすと、まずは「余計なことを書き過ぎない」に留意して観ようと思った。

 

 読者から「分かり難い」「説明が足りない」「誰と誰の会話か分からない」と言われるのが恐くてつい書き過ぎる悪癖があるのはエッセイでも以前に書いたが、未だに改善できていないことに改めて気付いた。そして余計なことを書くから会話文のリズムが乱れることも多々あるのではと。もしかすると現在改稿中の作品は前後編(各10万字)に分かれているが、それを合体させて15万字程度を目指すことも検討してみようかと思った。


 明日以降、続きを下記に追記していく予定。


 ――――――

 2日目 読了20160930 第51話~第100話 

    音読了(約30分、約1万字相当)22:30 第51話から60話


 抱腹絶倒の展開に、音読するのが拷問の如しである。

 如月さん、勘弁してくださいよ~♪ お腹の皮がよじれてしまう~。

 そして花ちゃんが神崎さんに落ちたのはやっぱり胃袋だ、第51話以降のお弁当のくだりでは長年子供の弁当を作って来た身としては涙なしには読めない。

 またこのお話では食事のシーンが幸せの象徴のように表現されるのが堪らなく好きだ、改めて思う。

 

 そして、本作品は再読だが、改めて読むと神崎さんと花ちゃんのラブストーリーの展開で印象が当初と異なるのに気付いた。

 初回はとにかく毎回面白くてどんどん先を読み進めることに神経が行ってたせいなのか、二人のラブラブな雰囲気はもっと後半部だった気がするのだが、今回はもうこの第50話過ぎからどんどん濃くなるのが分かる。結末を知っていて読むのと、そうでないのとの差なのだろうか。となると、書き手としてそうした塩梅をどう決めて書くと読者はより楽しめるのだろうか。またしても一つ課題発見だ。


 さて、昨夜はたまたま師匠から会話文の「文章語」と「口語」について伺うチャンスがあった、超ラッキー! だった。


 本作品の音読が、これまでに比べて突っかかる率が高いのは、会話も地の文もかなり「口語」度合いが高いからではないかとの指摘に、なんとなく感じていたことをはっきり言葉にして頂いた御蔭で腑に落ちた。


 基本的に小説は会話文であっても文章語で書かれるものが多いが、ドラマや芝居の脚本を読むことでリズム感や抑揚のようなものを体得できるとのこと、早速週末に図書館に行って探してみようと思う。

 そして実は、中学以降の時期に倉本聰氏のTVドラマ脚本はほぼ読破していたことに気付いた。TVは芝居よりさらに口語度合いが高いそうだが、それでも知らぬ間に好きなことに没頭していたらそれが全部いまやりたいことに繋がっていく快感は、長生きすればこそである・笑 人生細々でも頑張っているとやはり良いことはあるものだ♪


 師匠に寄れば、文章語と口語の違いが分かるようになると、今度はそれらのバランスで作品の印象を変えられる、とのこと。

 現在の拙連載(休止して再度推敲中)は、セリフが10代若者の口語調なのが地の文の文章語に対してかなり浮いていたのかもしれない、再考の余地ありと気付いてしまった、これでまた推敲がさらに伸びそうだが仕方ない。いい加減なものをアップするわけにはいかないし、そのための修行なのだから。


 なお、本件が気になる方はぜひ以下をご訪問されたし。

 ・文語に近い「壷中天」、

 ・基本文章語の「昇る日」、

 ・口語寄りの「θの悲劇」

 以上、久保田弥代氏のカクヨム作品である。


 私が「昇る日」を最も好むのは、やはり自身の慣れた文章語がメインであり、読むのも書くのも文章語が好きなのだということに気付けた。

 だとすれば、自分の長所を生かすためにはそこを魅せられるような設定の小説を書くべしということなのかもしれない。

 そんなことも分からずに好きに書いてた、ただの素人の化けの皮は修行と共にどんどん剥がれていくのである。でもいいのだ。一旦古いものを剥がさないと、綺麗な皮膚は生まれてこないのだから。


――――――――――――

3.読了 第101話~150話 20161001 23:50

  音読了 約30分 約一万字 第105話~第112話


 昨日と同じく、黙読ではすらすら読めるお話なのに、音読はかなりハードだ。

 もしかすると、句読点の打ち方(タイミング?)がこれまでの作品と違うのかもしれない。特に神崎さんのセリフは、彼の知性を感じさせる長セリフが多いので、途中で息切れを起こしそうになる。花ちゃんが突っ込みを入れてくれる箇所は短くてテンポ良くてとても助かる。


 お話の展開は、昨日の部分でラブラブモードに突入した後に、本日の部分でさらに膨らむのだが、このお話で忘れてならないのは、ただのラブコメではなく、じーんとくるヒューマンドラマの側面もしっかりと描いているところだ。

 特にBBQの時のおやじさんと花ちゃんの会話や、神崎さんが花ちゃんの心に直接訴えかけるところは、男女の愛情の枠を超えた人間愛に踏み込んでいる。そこがとてもさらりと、それでいてじわあっと感動を呼ぶタッチで綴られているのは本当に凄いと思う。

 真似できたらと思うが、たぶん絶対に無理だろう。だってこれは作者自身の天賦の才&努力の賜物だろうから。

 だから私には私に出来るもの、私にしかできないものを探すしかないだろう、だからこその修行だ!

 

――――――――

4.予定を変更して再読 20161002 121話から150話

  →現在改稿中の小説に生かせそうなポイントをいくつか見つけたので、ただ読み飛ばしてしまうのではなく、じっくりと「二人の恋が焦れったく展開する様子」を観察してみようと考え直した。

 

 音読了 第136話から141話まで 約30分 恐らく1万字弱 20161002 23:45

 →プロアナの友人に、音読のスピードをもっとゆっくりにして、ひと言ずつを味わうように読んでみるようアドバイスをもらったので、今日からやってみた。確かに、これは効く~!量より質だと改めて実感。


 本作は来月中旬の発売予定だが、原作を半分近く削っての出版になると聞いている。なんて勿体ないことをするんだ、と思っていたが、今回音読してみて、もしかしたら編集部はそれによってお話のスピード感を上げるのを狙ったのかもしれないと初めて思った。

 ファンとしては、もちろん、どこも削って欲しくないのだが、しかしもしどうしてもとなれば、前述のように、非常にインフォーマティヴで情報が詰まっているセリフや言い回しの部分が対象になるような気がしたのだ。それがあることで、神崎さんの知的な雰囲気と、元気溌剌の花ちゃんとのコントラストを楽しめる魅力がある一方で、もしかすると、長編に慣れていない読者はそうした部分をすっ飛ばして恋の行方にばかり気が向いてしまう可能性があるかもしれない、私自身その傾向があるので否定できない。


 作者とそしてこの作品の魅力を最大限に引き出して世に送る作戦の一つとして、それがあったのだろうか。それは出版されたものを手にした時に改めて分かることだと思うが、カクヨムにある原作と双方を読み比べて楽しめるなんざあ、贅沢なことだ。 


――――――――

5.読了 20161003 21:50 第151話から200話まで完了

  音読 約35分 約1万字強 第188話から198話まで。


 本日から恋愛ジャンルのコンテストが始まったが、参加される方はぜひこの作品を読まれることをおススメしたい。

 最後の50話は、読者は既に主人公たちが誰に恋しているかを知っている、にも関わらず焦れったい恋を時には神崎さん、時には花ちゃんの応援団になって必死で二人の幸せにエールを送ってしまうのだ。

 この強烈な引き寄せの力は一体どこから来るのだろうか。凄いとしか言いようがない。さりげなく書かれた様な印象さえ受ける文章なのに、気が付くとどっぷり嵌っている。

 師匠の創作論エッセイで、良作の条件として「全くストレスなく最初から最後まで読めたか」「その描かれた世界観に違和感を感じることなく没頭できたか」を挙げておられるが、まさにそのものだった。


 ただし、私の場合、音読はかなり苦戦した。だいぶ文体にも慣れて来たので、最終日ばかりはかなりマシになったが、神崎さんの長セリフはぜいぜいしそうだった。京都弁になるとさらに大変だ。


 しばらく英語を喋らないでいると、顔の筋肉(特に口や頬の周り)の動きが悪くなり発音にまで影響するが、最近は日本語まで可笑しくなってきているようで、参る。加えて、慣れない言い回しには普段は使わない箇所の筋肉や舌回しが必要になるので、どうしてもぎこちなくなる。それは同時に、自身のボキャブラリーが限定されてきたことも意味する。

 音読ではこんなことも明白になるのだ、侮れない。


 全話を読み終えて、200話に籠められたいろんな思いが押し寄せてくるが、私の中では「みんな幸せになろうよ」と語り掛けてくれたお話だと思う。ラブコメジャンルではあるけれど、前述のように、ヒューマンドラマの要素も織り込んであって、それぞれが置かれた場所でしっかりと足を踏ん張って幸せになるにはどうしたらいいのかを教えてくれている気がした。


 これから先、自分はどんな小説を書いて行きたいのかをとても考えさせられる、貴重な機会になった。


 本日で本作を卒業し、明日はまた新たな作品を読む予定。

 20161003全読了。


*なお、音読のススメ(効用)についてもう一つのエッセイの方で昨夜アップしています。宜しければそちらと併せて読んでみて下さい。


 

  


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