第4作目は古典‐芥川龍之介

『大導寺信輔の半生』(だいどうじしんすけのはんせい)

 副題:――或精神的風景画(あるせいしんてきふうけいが)――

 著者:芥川 龍之介 


 読了:20160918 21:15 全音読、約35分、恐らく一万字強。


 選書理由:「良書500冊」の観点から、古典を読んでみようと思ったことと、昔に読んだことがあるものの中で今の自分にはどう読めるかを知りたかったことから。


「えあ草紙」というアプリの御蔭で、PC画面上で実際の書籍のような縦書きで読むことができた。

 http://www.satokazzz.com/airzoshi/reader.php?url=http%3A%2F%2Fwww.aozora.gr.jp%2Fcards%2F000879%2Ffiles%2F32_ruby_615.zip&home=http%3A%2F%2Fwww.satokazzz.com%2Fbooks%2Fbookinfo%2F32.html&title=%E5%A4%A7%E5%B0%8E%E5%AF%BA%E4%BF%A1%E8%BC%94%E3%81%AE%E5%8D%8A%E7%94%9F&b=32#


 元は「青空文庫」から辿った。

 http://www.aozora.gr.jp/


「青空文庫」は、HPの説明によれば「誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めようとする活動です。著作権の消滅した作品と、『自由に読んでもらってかまわない』とされたものを、テキストとXHTML(一部はHTML)形式に電子化した上で揃えています」

(上記HPより抜粋 http://www.aozora.gr.jp/guide/aozora_bunko_hayawakari.html)


 今の私にはなんとも有り難いことだ。

 しばらくはここに浸って音読を続けることになりそうだ。


 本書を初めて読んだのは数十年前の受験時代だ。鬱屈した日々に出会って、ひどく共感したのを覚えている。その当時、自分では上手く表現できなかった心の中の黒いもやもやを全て言葉にしてもらったような気がしたのだ。


 また、三人称で書かれているが、信輔は龍之介自身であり、自伝とも評されており、彼ほどの文豪でもここまで嫉妬羨望と劣等感に苛まれるものなのか、と少し安堵したことも思い出す。


 そしていま改めて読んでみると、なんとまあ暗い内容で驚く・笑 共鳴した当時の自分が如何に暗かったかを思い知らされて、ちょっとやるせない。


 だがそれ以上に、今の時代でも頷けるような、エゴにまみれた人間の姿と、それに気付いていながらどうにもできない息苦しさを感じさせる筆には圧倒される。いつの時代も変わらぬ人間の本性に迫っていると思う。


 音読してみて感じたのは、全体的に一文が短く、とても読み易いことだ。最初は古風な言い回しに何度か引っかかりそうになったが、読み進むにつれて、スラスラと楽になった。俳諧に親しんだ文豪だからだろうか、リズム感が心地よく、もっと先へと心が逸るのだった。


 もう一つ、言葉の重複が意外にも非常に多いのに気付いた。なぜしつこく何度も同じ言い回しをするのかと、最初は気になったが、これもまた読み進めると気にならない。恐らく、文章や段落全体で韻を踏んだりするなどの工夫を凝らしているからではないかと感じた。


 英語圏の大学院で学んだ身としては、「同じA4用紙1枚の中に二度と同じ動詞を使うな!」と厳しく仕込まれ、類義語辞典を食べるように読めと鍛えられたゆえに、文豪とはいえここまで重複していいの?と思ってしまうが、逆に私の方が英語圏の癖を廃する時なのかもと思えた。


 さて、当エッセイにて本日加筆修正した「良書」についてだが、何を以て良書とするか、は人により基準は様々ある中で、私はもちろん「より良い書き手になるため」である。

 そして恐らくは、いまの力量で「良書」としたものは、もしかしたら200冊も進まぬウチに基準が変わって「なんでこんなのを良書にしたんだ?」という日が来るかもしれない。

 というわけで、「良書の基準」=「書き手の力量」とも感じるので、いましばらく自身の推移を見守りたい。

 もし我こそは、とご意見ご提案のある方は、近況ノートでお待ちしておりますm(__)m



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