スルメ魔王とツッコミ勇者

彩詠 ことは

スルメ魔王とツッコミ勇者

ついに。ついに着いたぞ!

これまで数多の戦いに勝利してやっと魔王城に辿り着いた。

突然王様に呼び出されて「もしかしたら君勇者かも」と言われて魔王討伐という難題を背負わされた。

でもここまで諦めずにやって良かった。

本当に俺が勇者なんだっ!

待ってろよ、魔王。今から俺がお前を倒しにいくからな。

魔王城の周りは毒の沼で通れない事は調査済みだ。ならば正面から突破するまでよ!

魔王城の正門にはインターホンが付いてた。

「え、なにこれ。押さなきゃダメ?」

とりあえず押してみる。

ピンポーン・・・

『はーい』

「えっ」

『どちら様でしょうか』

「えっと、あの、勇者ですけど魔王いますか?」

『あら勇者君?今門を開けるわね。』

ギギィー

本当に開いちゃったよ・・・つうか、あのお母さんみたいなの誰だよ。

!!

分かったぞ、これは罠だな。こうやって招き入れて殺す気だな!甘いわ!

さすが魔王。卑怯な手を使いやがる。

この剣で奴の息の根を止めてやる!

正門を抜けて魔王城に侵入。

少し進むとだだっ広い部屋に出た。

あれが・・・魔王・・・?

ゴツいおっさんで玉座に座ってて、ハンマーか鎌か斧をもってる俺の魔王イメージが跡形も無く崩れ去る。

なんていうか、カンガルーがよくしてるあの格好、別名休日の親父の型。

横になって頭を手で支え、もう片方の手でケツを掻く。オーソドックスな型。

あれをしてた。

ボリボリ、ケツ掻いてた。

もうね。なんかもうね。

「こいつが魔王…?」

「ん」と言って俺の方を向く。

俺はまた衝撃を受ける。

なんと女だった。

しかも結構な美人。まあ人間だったらの話だけど。

そんな外見の持ち主があんな格好してるなんて。デパートの屋上でやってる特撮ヒーローショーの舞台裏を見ちゃったような気分だ。

「お、来たわね。勇者」

なんか満面の笑みを浮かべてるんですけど。

しかも口にあるのは何?スルメ?スルメ食ってるこいつ・・・

「お前、本当に魔王なの?」

俺、こんな奴と戦うの嫌だよ。

「どう見ても魔王でしょ」

「どう見ても休日のおっさんだよ!」

「まあまあ。遠いところからよく来たね。こっち来て座りなさいな」

「いや、座らねぇよ?絶対」

「座らなきゃ落ちついて話ができないよ」

「話なんかしねぇよ。問答無用で掛かってこいよ!」

「なに、君ツッコミなの?」

「なんなの!?じゃあお前はボケなのっ?」

「うーん。どっちかって言ったらツッコミかな」

「真剣に答えんなよ!聞きたくねぇよ」

「なんでやねん」

「何がだよ!!!真顔でしかも棒読みすんな!」

あぁ、疲れた。僕もう疲れたよパトラッ◯ュ。

今のでHP半分くらい削られた気がする。

「もういいや。この剣でお前を倒す。こんなんでも一応魔王みたいだし」

「その剣は・・・!」

「気付いたか。今まで数々の魔物を錆びにしてきた魔物殺しの剣だ。今更真剣な顔したって遅いぞ」

「その剣私のだ」

はぁ?








はぁ!?

「ちょっと詳しく説明してください」

「だから、それ私の剣だ」

「お前の剣がなんで俺の手に?」

「そりゃ私があげたからに決まっているじゃないか」

「いやいやいやいや。これは誰かに貰ったとかそういうんじゃないから」

「でも封印の祠に突き刺さってたでしょ?」

「そうだ。俺が封印の祠にいた魔物を全滅させて苦労して手に入れたものだ」

「それ、あたしがぶっ刺した。これがあったら勇者が楽かなーって思って」

「楽かなーって・・・え?もう訳わかんない」

「ついでに言っておくとその剣じゃあ魔物は殺せないよ。それで攻撃すると魔物は魔王城に送り込まれる仕掛けになっていたのだ!」

「あぁ。だから道中の魔物達が自分から剣に向かってきたのか」

お母さん。俺、勇者じゃなかったみたいです。

「で、でも勇者しか開けられない扉を開いたりできたぞ」

「それも私が開けた」

うわぁ・・・

「他には魔物にお金を持たせて消える間際に落とさせたり、ダンジョンに宝箱置いておいたりいろいろ」

「なんでそんなこと・・・」

「よくぞ聞いてくれた!私には壮大な野望があるのだ」

「知ってるよ。人間界を征服するんだろ?」

「何を言っているんだ?そんなことどうでもいいよ」

「どうでもいいの!?」

もうこいつ魔王じゃねぇわ。

「私の野望は友達が欲しい!だ」

「はぁ?」

「勇者。君の事は君が幼かった頃からずっと見てきた。私の友達・・・否ダーリンには君が最も相応しい」

「そろそろお暇しますね」

「私は人間界と交流したいのだ」

嘘だろ?なら…なんで

「なら何故人を殺す!王都から外れている村の人たちは毎日怯えているんだぞ!くつろげるはずの自分の家でさえいつ襲われるかとビクビクしている。こんな状況を作り出しておいてよくそんな事が言えるな!」

「君は」

「あ?」

「君は人が魔物に襲われているところを見たことがあるの?」

!?

ない…かもしれない

いつも村は壊滅させられた後だったし魔物を見つけたらこっちから仕掛けてた。

「私たちは人間を襲っていないよ」

「でも・・・でも今まで魔王城を攻めた勇者は誰一人帰ってこなかった」

「あぁ。あれは記憶を消して村人にしてやった。全員幸せに暮らしているよ」

「じゃあ俺が今までやってきた事って・・・虐殺じゃねぇか」

「いや、だから魔物は死んでないからね?ほら」

横を見ると今まで倒してきた(と思ってた)魔物達が勢揃いしていた。

「お前ら・・・ほんとごめんな」

「わわっ、泣くなよ勇者」

ゴーレムが寄って来て慰めてくれる。

優しいゴーレムって気持ち悪いな。

でも優しいのはゴーレムだけじゃなかった。

狂暴だって恐れられてたゴブリンやドラゴンも皆優しかった。

ドラゴン。お前喋れるんだな。

この前会ったときはギャオーとかしか言わなかったのに。





「お前たちが襲ってないんだったらなんでこんな事になったんだ?」

「それは私が説明しますね」

お!

この声はインターホン押した時に聞いたお母さん魔物の声だ!どんな姿してるのか気になってたんだ。

!!!

ゴツいおばさんだった。

玉座に座って武器を持たせたら完全に魔王だった。もうあんたが魔王でいいよ。

カオスだぜ!魔界…

「では始めに勇者君に質問するよ。人間と魔物の違いとはなーんだ?」

違い?

そりゃいろいろあるだろ。

「角」

「ぶぶー。角が生えてない魔物もいまーす」

「じゃあつばs」

「ぶぶー。勇者君は頭の回転が鈍いですね。正解は基本的には変わらない、でした」

「そんな訳ねぇだろ。普通の人間は腕が伸びたり、足が吹っ飛んだのに生えてくるとかしないぞ」

「それは独自の進化をしてるからだよ」

「独自の進化?」

「進化論ってのは聞いたことある?」

「少しなら」

「現存する生物の祖先、一番最初の生命はごく少数でその少数から枝分かれしたのが今の私たちです。簡単に言うとこんな感じね」

「それと今の状況何が関係しるんだ」

「そう焦りなさんな。じゃあなんでこんなに枝分かれして種族が増えたかわかる?」

「環境が変わったから」

「ピンポーン!大正解。猿が道具を使う為に二足歩行になったように、チーターが獲物を捕らえる為に速く走れる身体の構造になったように環境次第で特徴を変えていくんだ」

「ふむ」

「でも猿もチーターも基本構造は同じでしょ?心臓があって脳もあって」

「それが人間と魔物にも適応されるってことか?猿から人間とお前たち人型の魔物と枝分かれしていったのか」

「惜しいね。猿から枝分かれしたんじゃないよ。人間から人型の魔物が派生したんだよ」

「元を辿れば人間ってことか!?」

「正解。テレレン。またここで問題。なら人間は何故私たち人型の魔物に進化したのでしょう」

「環境に合わせたんだろ」

「その通り。大昔に人が魔界に移り住んだの。その結果魔界の環境に合わせて独自の進化をしていったってわけ」

「ちょっと待てよ。魔界と人間界ってそんなに環境が違うのか?同じ陸続きなのに」

「そこが肝なのよ。今でこそ魔界と人間界で分けられてるんだけど、昔は区別がなかったの。魔界は人間界とあんまり変わらないのよ。ただ一つ地中に魔力を生む鉱石が埋まってる事以外はね」

「魔力?」

「そう。魔物は魔力を使う為に様々な進化をしていったの。例えばドラゴン。DNAは人間界にいるトカゲと同じよ。でも魔力で体内に炎を蓄える為に大きくなって、魔力で飛ぶ為に翼が生えた。本当はあんな巨体が飛べるはずないのよ。それでも飛べるのは魔力のおかげ」

「でも人間にも魔法を使える奴がいるぞ。俺も使えるし」

「人間はみんな魔法使えるのよ。魔物程強くないにしてもね。それで魔界に近づけば近づくほど魔力は強くなっていくの」

「あぁ、確かに。自分でもビックリするくらい強くなってた」

「じゃあ最後の問題。魔王様が倒されて魔界から魔物が消えたら、得をするのはだーれだ」

「一番近い王都・・・俺を勇者だとか言ってたあの王様か。」

「そゆこと。ここに新しい国をつくって魔力を独占したいんでしょうね」

「そうゆう事かよ!ふざけやがって!!!」

「それで勇者君と魔王様が手を組んだら解決するんじゃないかーって」

なるほどな。

「・・・魔王あのさ、なんていうか、さっきは怒鳴って悪かっt」

魔王は腹を出して寝ていた。

それはもう幸せにそうに。

だから頭を踏んでやった。

「痛ー!!!何すんのよ勇者!」

「うるせー!お前の国の事でもあるんだろ、真剣に聞けよ!」

「へーんだっ。そんな話耳にタコができるくらい聞いたわ。それにこっちには勇者がいるから解決したも同然だもん」

「どうするつもりだよ。まさか武力行使とか言わないよな?」

「もし武力行使するならとっくにしてるわ!」

「それもそうか」

「話し合うのよ。勇者にも協力してもらうからね」

「おい」

「ん?」

「なんで俺なんだ?他にも勇者ならいっぱい居たろ?」

「勇者は他のと違うから」

「違わねぇよ。俺だってずっと魔物が悪だと思い込んでたし。ここまで来たのだってお前を倒す為だった」

魔王は少し悩んだ顔をしてから呟く。

「勇者が十歳のとき」

「え?」

「勇者、女の子の友達がいたでしょ?」

いたっけ?

「いたでしょ!?」

………。

「思い出せないな」

「ガイル!!」

魔王が叫んだ途端、地響きが鳴り始めた。

遠くの方から何かが走ってくる。

ズサーっと大きな音をたてて止まったのはケルベロス。

あのケルベロス。

「この子はね、私のペットなの。芸だってちゃんとできるのよ」

なんで今それを?

それにガイルって凶悪そうな名前だな。

「伏せ!」

ガイルは伏せた。

「お座り!」

ガイルはお座りをした。

「お手!!」

魔王が何故か俺を指差す。

え?なんで俺を……

するとガイルがお手をするような体勢じゃない、完璧な攻撃の姿勢で俺に振りかぶっている。

あ、俺死んだわ。

ドゴーーン!

勇者は938552のダメージ!

俺は吹っ飛びながら走馬灯のように思い出す。

いたなぁ。そんなやつ。

確か、毎日毎日付き纏われてめんどくせぇ奴だった。

走って逃げても先回りしてやがって逃げられないからいつも仕方なく二人で遊んでた。

でもある日突然現れなくなって、少し、ほんの少しだけ寂しかった気がする。

捨てられたバナナの皮みたいに地面に着地する俺。

「痛ぇ・・・」

不幸中の幸い、いや不幸中のさらに不幸か。ギリギリHPが残ったようだ。

「思い出したかしら?」

満面の笑みで聞いてくるけど目が笑ってねぇ。怖い。

なんか殺気が目視出来るくらい禍々しいし。

「思い出した。思い出したから早く回復魔法を・・・」

そのあと

見た目は魔王、声はお母さんのTHE カオスさんに回復魔法を施してもらって全回復。

「で、そいつがなんだって?」

「それ私だから」

「嘘乙」

「嘘じゃないもん」

「なんで魔王が人間界にいるんだよ」

「なんでって勇者に会う為に決まってるじゃない」

「その時の映像がこちらです」

大広間の壁に映像が映し出される。

そこには確かに幼き日の俺が映っていた。

その横には懐かしい(さっき思い出した)女の子が……あれ?…魔王に似てる?

俺はカメラに気付いていない様子。

『ねぇ。勇者ー』

『なに?』

見るからに不機嫌そうな俺。

『私ね、魔王の娘なの』

『ふーん。それで?』

『だからね。魔族なの』

『ふーん。それで?』

『勇者は人間でしょ?魔族、怖くないの?』

『全然』

幼い魔王の顔がぱぁーっと明るくなる。微妙に頬が紅く染まっていた。

『じゃあさ!今日は何して遊ぶ?』

『なんでもいいよ』

『じゃあ結婚しよっか!』

『いいよ。・・・・』

魔王がドヤ顔で言う。

「この通り、私と勇者はずっと昔に結婚の約束をしていたのよ」

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!一旦一時停止して落ち着け魔王!」

「何よ。物的証拠があるのにまだ抗う気なの?」

ツッコミどころが満載過ぎて頭がショートするわ!

「魔王の娘うんぬんの時の俺の顔見ろよ!ぜんっぜん!これっぽっちも信じてないだろ!!」

「えー?そうかなー?」

お前の目は節穴か。

「とにかく。この話は終わり。勇者は私と結婚して魔界の王になるのよ」

「勇者が魔界の王になるなんて話聞いたことねぇよ!」

「新しい時代の幕開けね」

魔王、さらにドヤ顔。

なんとかして話題を逸らさなければっ…

「と、ところで王都に話し合いに行くんだろ?善は急げだ。早く行こう」

「そうね。さぁ王都を叩き潰しにいくわよ!あっ間違えた。論破しにいくわよ!」

「おい、なんか物騒な間違え方してなかったか?」

「そういえば、王都に行く前に大事なこと忘れてた」

シカトかよ。

「あぁ。確かにぶっつけ本番じゃあキツイよな。軽く打ち合わせしておくか」

「打ち合わせなんてしないわ。それよりも今はあんまんを摂取しないと冷たくなって死んでしまう。やっぱりしょっぱいものを食べると甘いものが食べたくなるわね。これぞ負のスパイラル・・・」

こいつ……

「冷たくなって死んでしまえ」

「美味いっ!」

「食い始めるの早くね!?」

「はい。勇者、あーん」

「いらない・・・いや、いらないって・・・だからいらな・・・熱っ!熱いだろ!某お笑い芸人みたいになってんじゃねぇか」

「勇者が口開けないから仕方ないじゃない」

「何それ俺が悪いの!?」

「ふー。食べ終わったしそろそろ行きますか」

このくだり必要だったのか・・・?

「お前、簡単に言ってるけどここから歩いて王都まで一週間は掛かるぞ」

「なに言ってんの。ワープするわよ」

「ワープ?」

「うん。ワープ」

「そんなことできるの?」

「普通の魔物じゃできないけどね。魔王である私に不可能はない」

こいつは……ほんといろいろ規格外だな。

こんな奴に人間界が狙われたとしたら一日ともたないんだろうな。

魔王は俺の手を握ると「よっこらしょ」と言って、ちょっとトイレいってくるわみたいなノリでワープした。




結果としてはあっさり和解に至った。

死が目の前に現れたかのように怯える王様。

王様の前に魔王と共に立った勇者の俺。

ざわめく城内。

そして、殺気放出モードに入った魔王。

こちら側が全ての事情を知っていることを伝えると、王様はしどろもどろになりながら言い訳を始めた。

俺は黙って聞いていたんだけど、魔王が一喝したらペラペラと白状し始めて結局、魔界には侵略という形ではなく友好的な関係を築き上げていくという方針で固まった。

魔王は去り際、あ、そういえば、という感じで一言。

「今度、魔界に手ぇ出したら人間界、潰しますから」と、魔王スマイルでポロっと言った。怖えぇよ。

場の空気が一瞬で凍りついたのを俺は気付いてたけど、スルーした。


あれ?俺何もしてない気がする。




それで。

今は、魔王城に帰ってきて祝賀会をしている真っ最中だ。

各々、食いたいものを食って、飲みたいものを飲んだ。

魔王は帰ってきてから終始、にへらーっとニヤニヤしてたけど、何がそんなに嬉しいのか分からなかった。人間界と魔界の友好関係がそれの原因なのか。結局、俺は何もしていない。この結果は魔王が一人で勝ち取ったものだ。それならもっと前に一人で王様と話し合いの場を持てばもっと早く解決していたんじゃないか。多分、魔王もそれには気付いているはずだ。

それなら何か今日まで待たなきゃいけない理由があるのかもしれない。





会が終わって、片付けに入る。

参加した人数も食事の量もかなり多かったから皿の量も半端じゃなかった。

一気に五十枚くらいを持って広間とキッチンを六往復するとようやく終わった。

はぁー、終わった終わった。

結局、俺は勇者らしいことを何もしてないけど、どちらかが支配される結末じゃなくて、歩み寄れたのは最も良い結果なんじゃないかなと思う。

そんなことを考えながら広間に入ると、なにやら大勢集まって何かに注目してた。

なんか嫌な予感しかしない。

近づいてみると、あの映像を観てた。

俺の黒歴史とも、人生最大の過ちとも言える大失態を記録したあの映像。

『じゃあさ!今日は何して遊ぶ?』

『なんでもいいよ』

『じゃあ結婚しよっか!』

『いいよ。・・・・』

キュルルルルル……

『じゃあさ!今日は何して遊ぶ?』

『なんでもいいよ』

『じゃあ結婚しよっか!』

『いいよ。・・・・』

キュルルルルル……

魔王は再生しては巻き戻して、再生しては巻き戻してを何度も何度も繰り返して時折、「えへへ・・・」と、頬を赤くしたりキャーキャー奇声をあげながら足をバタバタさせたり。

この野郎……

「てめぇ・・・」

「あ、やべ。勇者きたぞ!みんな逃げろー!わはははは」

「死なす!!」

追いかけると、ギャーっと蜘蛛の子を散らすように四方八方に逃げていく。

俺はそれを追いかけていった。



俺の想い描いていた勇者像と違うけど。

まぁ、こうゆうのも悪くないか。








ところで。

勇者が魔王と魔物達を追いかけて広間から出ていった後も映像は流れていた。

・・・・・

『じゃあさ!今日は何して遊ぶ?』

『なんでもいいよ』

『じゃあ結婚しよっか!』

『いいよ。・・・・でも今はダメ。お前が魔王の娘なら、魔王になったときに魔族と人間が仲良くできるようにしてくれ。そうしたら結婚しよ。俺もお前の事・・・その・・・好きだからさ』

『うん!絶対だよ?約束だからね』



彼、勇者は図らずも最も難しい結果、平和的解決を引き寄せたのである。

そしてこの結果は小さな勇者が抱いていた彼女への大きな大きな恋心が招いた事だと彼が思い出すのはもう少し後の話。

彼の存在が彼女を惹きつけ、彼女もまた彼を惹きつけた。

その結果、世界を救ったそんなお話。

これは誰も知らない勇者ならざる勇者の伝説。










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スルメ魔王とツッコミ勇者 彩詠 ことは @kotoha8iroyomu

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