第8話 穏やかな朝食

食堂につくと、リディアとカースさんが食事をしていた。


 普通、執事とかって主人と一緒に食べないよね?


 まあそれぞれのしきたりがあるんだ、それに従おう。


 郷に入れば郷に従えってね。


 「おはよう、リディア。カースさん」


 「おはよう・・・ございます」


 「おはようございます。ユウさん昨日はゆっくり寝られましたかな?」


 俺は軽く挨拶をするとリディアの左の席に腰かけた。


 リディアはなんか元気のない感じだった。


 昨日あんなに泣いてたし顔合わせずらいか。


 とりあえず様子見だな。


 そう思って俺の右前に座っているカースさんに返事を返す。


 「はい、よく眠れましたよ。

  朝は世話役とやらに寝込みを襲われて混乱しましたがね!!」


 俺はナツキを横目で見ながら茶化した。


 「誰が襲撃したって?

  むしろ襲われたのは私よ。いきなりお尻揉まれるとは思わなかったわ。」


 「いや・・・その・・それは・・あれだ寝ぼけてて・・・

  気づいたら触ってたというか・・・」


 しどろもどろになってしまった。


 ってかそんなこと朝食時に言うか?普通。


 「ふーん。寝ぼけてたらお尻触っても許されるんだ。へー。そうなんだー。」


 「はい。ごめんなさい。」


 「よろしい!!」


 ナツキは満足したようだった。



 ふとカースさんをみると口をあんぐりと開けてスプーンが口と皿の途中で止まってた。


 リディアもスプーンをシチューにいれたまま静止してる。


 そして、二人ともナツキを見ていた。 


 何事か?


 ナツキが優しい笑顔を二人へ向けると、二人の時間が動き出した。


 顔は二人ともなんともいえない微妙な顔つきだったが。


 このナツキという娘はいったいなんなのだ??



 そんな事を思ってるうちに、メイドさんが俺たちの朝ごはんをカートに乗せて持ってきてくれた。


 メイドさんは、俺とナツキの前に朝食を並べた。


 朝食はシチューとパンだった。


 「ニナさん、ありがとう。」


 「あ、ありがとうございます。」


 「いいえ、どういたしまして。」


 ニナさんと呼ばれたメイドさんもナツキを見て驚いた顔をしていたが、何も言わずカートを押して部屋を出て行った。


 「今のがニナさんよ。ここの食事とか掃除とか洗濯とかしてくれてるわ。」


 「そうなんだ。」


 「あとは、アイルさんとラニアさんがここで働いてるわ」


 「3人しかいないの?」


 「そうよ。忙しいんだからあんまり世話をかけないように。

  あ、でもしっかり自己紹介はしておくのよ?

  ニナさん達がいなかったらユウは生活していけないんだから。」


 「お、おう。後で見かけたらしておく。」


 俺はそう言って。いただきますをしようと手を合わせた。


 「それユウの世界の感謝の仕方?」


 「ん?ああ。俺たちの世界では食事の前にはこうやって食事になった彼らに感謝を捧げるんだ。」


 「へー。教育は行き届いてるんだ?」


 「まあな。」


 「じゃあ今日からはこうしなさい。」


 そう言って、ナツキは自分の左手を手刀にして右肩にあてた。


 「感謝を」


 そういって手本を見せた。


 俺も真似をして右肩に手刀をあてる。


 「感謝を」


 「よし、食べてよろしい。」


 犬か俺はっ!!


 ナツキに言ってやりたかったが食事中は静かにというじいちゃんの教えに従い、その言葉を飲み込んだ。


 食事はおいしかった。


 普通にシチューとパンだった。日本で食べていたものとほとんど違いは無かった。


 おいしく頂いてると、リディアとカースさんが立ち上がった。


 「あ、リディア?」


 「はい。なんでしょうか?」


 「その・・・なんだ・・・昨日の続きをしたいんだが、時間取れるか?」


 「はい。今日はやらなければならないことがあるので夕方頃なら。」


 「わかった。ありがとう。」


 「こちらの準備ができたらフォクシーに呼びに行かせますね。」


 「ああ、助かる。」


 そういうと二人とも食堂を出て行った。


 「なんか王女様元気なかったわね?あんたもしかして昨日変な事したんじゃないでしょうね?」


 「いや、してねーよ。」


 「なら、なんであんなに元気ないのよ?」


 「いやそれは・・・色々ありまして・・・でも、悪いことではないよ。リディアが優しいだけだ。」


 ナツキはふーんと俺を訝し気に見ていたが、食事に戻った。


 悪いことはしてない。俺間違ってない。


 原因は俺にあるんだけどね!!


 「そうそう、ユウ今日どうするの?なんか予定あるの?」


 「いや、特に何もないな。考えたい事はあるんだけど」


 そう、昨日保留した俺が召喚された理由を考えないといけないんだった。


 朝からドタバタしてて忘れかけてたことは内緒な。


 「じゃあこの砦の中案内したげるわ。」


 「助かるよ。」


 俺はそう言って、シチューの最後の一口を口に運んだ。


 そして、手を合わせてごちそう様をしようとした。


 「あっ。そう言えば食べ終わったらどうするんだ?」


 「どうするってどういう意味?」


 「ほら、食べる前に『感謝を』ってやつ。あれの食べ終わりバージョンは?」


 「ユウの世界では二回やるの?」


 「ああそういうことか。俺の世界では、食べる前に食材に感謝を。食べ終わったら作ってくれた人や食材を準備した人に感謝するんだ。」


 「へー。すごいね。どうやるの?」


 「こう胸の前で手のひらを合わせて、『ごちそうさまでした』ってやるんだ」


 「こう?『ごちそうさまでした』」


 「それでOKだ。問題ない。」


 ナツキは凄い満足気に胸を張っていたが・・・褒めてはやらん!!


 俺たちは席から立って、椅子をテーブルの中に入れ食堂を後にした。

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