第2話 白の世界

youは勝利した。


PC画面がちょっとしたラグの後、相手陣営まで移動し相手のコアが破壊される模様が映し出されている。

この後はいつもどおり『Victory』の文字が表示される・・・筈だった・・・。






気づけば、俺は真っ白な世界に立っていた。


いや立ってはいなかった。浮いていた。


さっきまで空間を隔てていたホワイトベージュのパーテーションみたいなものではなかった。

完全なる白。


知覚するものが何もない世界。それだけで完結しているかのような世界。


風もなく音も聞こえない。空気自体が存在しないかもしれない。


己以外を観測することができない世界。


よって自分が落ちているのか昇っているのかわからない。

それともその場にとどまっているのか・・・?


ただ、超高層ビルの高速エレベータで降りているかのようなふわっとした感覚。


ちょっとした浮遊感と白。それだけが全てだった。


手を動かしてみようと思った。


動かない・・・。


あれ?動かし方がわからない。俺普段どうやって手を動かしてたんだっけ?


視界を下に向けようとしてみた。俺の体がそこにあるのか確認したかった。


顔を下に向けるという動作ができなかった。いや・・やり方が分からなかった。


目線だけを下に向けようとした。


これはできた・・・いやできなかった・・・よくわからない。


下をむけたのかどうか確認できなかった。


そこには先ほどと変わらない白だけがそこにあった。


自分が下を向けたのかどうなのかそれすら知覚できない世界。






どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。そもそも時間という概念がこの世界に存在するのだろか・・・。


ただ、思考することはできた。俺がなんという名前でいつ産まれてどこに住んでいたのか。

なんでこんなところにいるのか・・・。

考えたところで答えなど出なかったが気晴らしにはなった気がする。


ふと、そんなことを自嘲気味に考えたところでこの世界に終わりが来た。

何故かそれは理解できた。


白の世界。目の前の白の世界の奥からさらに強い白が来た。


それは白ではなかった。輝いていたのだ。色のない光。


それはどんどん俺に近づいて来る。いやもしかしたら俺が近づいているのかもしれない・・・。

もはやそんなものはどうでもよかった。


その光の輝きは凄まじく直視したら視覚が潰れるそう思った。


しかし目を閉じることなどできなかった。ただそれはどんどん俺との距離を縮めていった。


光が近づいて来ると何か音が聞こえたような気がした。


違う・・・聞こえてなどいない。直接脳に何かが響き渡った。


「jafehoafueafa@fkfaoeuriaeuea;jqpoe@opfjkclajfkvkalraroiaj」


何も理解できなかった。ただただ、強烈な不快感だけが残った。


俺はたぶん死ぬのだろうと思った。

いやもう死んでいるのだろうか。


俺の理解の範疇を凌駕するこの世界。これが死の世界なのだろうか・・・。


それにしてもあんまりだと思った。自分はなぜ死んだのかそれすら理解できなかった。


せめて終わりを迎える前に教えてくれよ神様よお。


それくらいいいじゃねーかよお。


そんな俺の思いは虚しく誰にも聞き届けられることもなく。


俺は光に飲み込まれた。

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