覚悟と奇跡
足もやっとこ完治して、バスケに勉強に…そしてケルシーとのお話にと毎日忙しく、充実していた。
でも、もやもやとした感情が残っていた。
“ドナーが提供して、移植出来ない限り、私は治らないの”
“でも、ドナーが適合する確立は…かなり低いの”
“…私…、死ぬ事が…怖いの…!怖くて怖くてたまらないの…!”
ケルシーのその言葉が、ずっと頭を過ぎって居た。
もし、僕がドナー登録して、適合すれば…ケルシーの病気が治る。
死ぬ恐怖から、ケルシーを救うことができる。
本を読んだり、パソコンで検索して、ありったけの情報を集めた。
ドナーや登録する為の情報を何日も見たり読んでいたから、時々独り言で口走ってしまっては周りに驚かれた。
そして調べてから1ヶ月。
僕は休みの日に施設に行き…ドナー登録をした。
僕の場合は生きたままドナーになる“生体ドナー”という部類で、生きたまま臓器を摘出、及び患者に移植する“生体移植”をする事になる。
そして、登録から2週間程で連絡が届いた。
ドナーとして登録された、という電話だった。
更に1週間後、病院から連絡が来た。
“ケルシー・ニールセンのドナーとして適合しました…生体移植をなさいますか?”
まさに奇跡だった。
休みの日でもあった為、慌てて病院に行く用意をした。
(美術用の)スケッチブックに、報告を書いて、鞄に入れて。
髪型も綺麗にして、服も着替えて。
バタバタと外へ飛び出し、30分程で病院へ。
鞄からスケッチブックを取り出し、ページを合わせてからケルシーの病室に。
ケルシーはびっくりしてこちらを見た後、涙を溢れさせた。
何故なら、スケッチブックには“僕の腎臓、一つ君にあげるよ”って書いたから。
ケルシーは僕に抱きついて、何度も「ありがとう」を呟いた。
「あぁ…信じられない…嘘みたい…私、また普通に…普通に暮らせるように、なるのね…!」
何度も涙を拭いながら、幸せそうに話すケルシーが、とても愛しかった。
「そう、ケルシーはもう…死ぬ事を恐れなくても良いんだよ」
僕は笑って、ケルシーを抱きしめた。
ケルシーは僕の腕の中で泣きじゃくっていた。
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