不思議な気持ち


「…久しぶりにこんなにお喋りしたわ」


彼女はそう言って笑った。


「…そうなの?」


僕が不思議そうに尋ねれば、彼女は頷いて。


「皆、忙しいから来れないのよ」


「…本当はどうなんだか、わからないけどね」


そう静かに話す彼女は、どこか寂しそうで。


「…僕、退院しても会いに来るよ!バスケやってるから、しっかり治った後は土日の夕方しか来れないかもしれないけど…ケルシーに会いに行くよ」


どうしてか、言葉が口をついて出た。


彼女といると、不思議な気持ちになる。


それが“恋心”だと気づくまでには、とても時間がかかったけど、ね。


「ありがとう、ジェイソン」


彼女はふわりと微笑んで、僕の名前を呼んでくれた。


「あ、ケルシーが迷惑なら来ないよ!ケルシーに迷惑かけたくないし!」


慌ててそうつけ足せば、彼女はクスクス笑って。


「本当、貴方って面白い人!」


彼女はそう言って、声をあげて笑った。

涙が出るほどに笑って、目を拭っていた。


「…本当に、私に会いに来てくれる?」


笑いが収まると、彼女は僕の目を見てそう言った。


「ケルシーが迷惑じゃないなら、会いに行くよ」


僕が再度そう答えると、彼女は笑顔を綻ばせて。


「じゃあ、時間があったら私に会いに来て…約束よ!」


そう言って、彼女は僕に紙を手渡した。


紙には、こう書かれていた。


“I believe in you(私は貴方を信じてるわ)”


その下に、携帯のアドレスと番号。


後々、ケルシーの話で病院では、ある場所で短時間に限り、携帯が使えると知った。


僕はそれをポケットに入れて、ケルシーに別れを告げて検査に向かった。


検査結果は、骨折以外は問題無く大丈夫だった。


松葉杖をついて、またケルシーの病室に行くと、ケルシーはどこかへ行く様子だった。


僕に気付いたケルシーは笑って言った。


「人工透析、するの」


「人工透析しなかったら、私…死んじゃうから」


そう言って、病室を去っていった。


僕は、松葉杖をついて自分の病室に戻った。

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