Case.03-06
「佐々木さーん、こっちだよー」
「あ、田中さんもこっちですよー!」
僕と園田さんはそれぞれ一人ずつ待ち人に声をかけた。
こちらに気付いた二人は手を振りながら走ってくる。
「なんだ、ここだったんだね」
「そそそそそそ園田さんお待たせっ!」
待ち合わせ場所に集合する四人。
僕、園田さん、田中くん、そして佐々木さん。
佐々木さんはこの前、クラスメイトでもある今西くんとの恋愛相談を成功させた以来だろうか。
僕の服装はいたって普通。
さすがに女子と出かけるので少しは気にしている程度、だろうか。
田中くんは、さすが田中くん。
好きな人との遊びでも普通の服装だ。
園田さんは今時風なワンピースに身を包み、華やかさがにじみ出ている。
ふわりと風に揺れるスカートは僕たち男子の目を惹きつける。
佐々木さんは、膝辺りまでのジーンズとボーイッシュな服装。
少し意外だったけどかなり似合ってて良いと思う。
そして今僕たちのいる集合場所とは、遊園地の入り口の前。
一体どうしてこうなったかというと、それはもちろん今回の恋愛相談に関係している。
園田さんが勇気を出して田中くんを遊びに誘ったのはいいが、田中くんに先約がいて、しかもその先約というのがまさかの僕だったのだ。
一度勇気を出して誘っただけに次はいつ勇気を出せるか分からなそうな園田さんを見て、僕は今回の案を思いついた。
それも『皆で遊びに行っちゃおうぜ』企画。
僕と田中くんで遊びに行く中に、園田さんを入れようという作戦だ。
しかし普段の帰り道と遊びに行くというのは違うだろうし、男二人の仲に女の子一人というのは心細いかもしれない。
だがここで問題が発生した。
僕にも田中くんにも女の子の友達というのがほぼほぼ存在しない。
そして園田さんも出来れば自分の好きな人に女の子を近づけたくない。
そこで抜擢されたのが佐々木さんだった。
友達、という関係なのかは微妙なところだが、少なくとも知り合いではある。
そして佐々木さんにはこの前付き合い始めたばかりの彼氏がいるので、園田さんの心配も不要という訳だ。
もともと街をぶらつこう程度にしか予定を立てていなかった僕たちに代わって、遊びの予定は女性陣二人に立ててもらっている。
事前に教えてもらった通り、僕たちは遊園地の入り口前に集まっているのだ。
「じゃあ早速入りましょうか」
どうやら親にもらっていたという遊園地のチケットを園田さんから受け取り、僕たちは入場ゲートをくぐる。
「いやぁ、遊園地なんていつぶりだろう。楽しかったら亮くんとも来ようかな」
なんてリア充発言をするのは佐々木さん。
そんな佐々木さんを羨ましそうに見つめる園田さん。
本当は二人きりで来たかったのかもしれないが、ヘタレな二人にとっては今は無理な話であるのは間違いない。
因みに、佐々木さんはこの遊びの目的を知っている。
つまり今回僕が田中くんと園田さんをくっ付けたがっているということを知っているのだ。
女子というものはゴシップ的話題が好きなのか、その話をした時、佐々木さんは興味津々と言った風に僕に詰め寄ってきた。
普段は絶対に恋愛相談のことは話さないけれど、遊びの中で潤滑に事を進めるため一応前情報を渡している。
園田さんから恋愛相談を受けていること。
その相手が田中くんであるということ。
そしてその田中くんは実は園田さんのことが好きだということも、伝えてある。
だから今回、佐々木さんには恋愛相談を手伝ってもらうつもりだ。
実はもう既にその第一段階は終えている。
「それにしても佐々木さんみたいな子が隣の男の子を好きなんて、意外かも」
「まぁ確かにそれは僕も思ったよ」
「まぁそれだけ園田さんにとって、田中くんが魅力的だったんだろうね」
「田中くんは良い奴だよ」
「そりゃあ種島くんの親友だもん、分かってるよ」
僕と佐々木さんは二人でこそこそと前の二人について話している。
そう、今僕たちの並び方はと言うと、前二人が田中くんと園田さん。
後ろ二人が僕と佐々木さんという組み合わせになっているのだ。
これなら自然の形で場を楽しむことが出来る。
実際前の二人も若干緊張しているようだけど、いつものように楽しそうに話している。
後ろから見ている限りでは結構いい雰囲気だと思う。
「……二人、案外いい感じじゃない?」
「やっぱそう思う?」
どうやら佐々木さんも同じことを思っていたらしく、僕に耳打ちしてくる。
やはり女の子から見てもそうなんだと、自分の感じ方に少しだけ安心した。
「そう言えば、今日のこと今西くんは知ってるの?」
「うん、もちろん。男女二人ずつとは言ってもやっぱり彼氏以外の男の子と遊びに行くわけだからね」
「今西くんは?」
「種島がいるなら全然オッケーだって」
「信用され過ぎじゃない!?」
僕は思わず聞き返す。
しかしこういったことは何も佐々木さんたちに限ってのことじゃない。
これまで僕が成功させてきた恋愛相談の人たちは大抵、どういうわけか僕に全幅並みの信用を寄せてくれているのだ。
嬉しくないと言えば嘘になるが、彼氏や彼女としてそういうのは大丈夫なのだろうかと聞きたくなる。
「まぁ、恋愛先生だし?」
少しだけ楽しそうに佐々木さんはそう呟く。
「恋愛先生言うなっ」
自分で言う分には冗談だと知ってるので気にならない。
でも他人から言われると妙に恥ずかしいんだ、ほんと。
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