Case.03-03
「これからどうしたら良いんでしょうか」
「うーん、どうだろう」
翌日、僕と園田さんは屋上でこれからについて話し合っていた。
これまでに聞いた話によると、園田さんと田中くんの関係はそんなに進んでおらず、僕に会いにクラスにやってきた時や帰りの電車の中では話すものの、それ以外では話す機会自体がないらしい。
「じゃあやっぱり連絡先を聞くことからかなぁ」
話す機会がないなら、新しく作ればいいのだ。
幸い田中くんはいつでもアニメを見れるようにタブレット型の携帯だし、確か園田さんもタブレット型の携帯だったはずだ。
電話やメールでは会話の回数もそんなにないかもしれないが、今流行のSNSであれば会話に困ることもないだろう。
「えっ」
しかし園田さんの反応は少しだけおかしい。
特に変なことを言ったつもりはないのだが、何かまずかっただろうか。
「い、いきなりですか?」
「えっ」
園田さんは「連絡先を聞く」ということがとても難しいことでもあるかのような反応をする。
恋愛において「連絡先」はかなり重要な部類で、普通に考えてもそこまで難しいことではないはずだ。
「い、いやちょっと難易度が高いような気がしたので……」
「そ、園田さん……」
もしかして園田さんって、案外ヘタレだったりするのだろうか。
確かに好きな人の連絡先を聞くのは勇気がいることなのかもしれないけど、そこは頑張ってもらうしかない。
「まぁ僕もちゃんとフォローするから」
「わ、分かりました。頑張ります……! 田中さんと付き合うためですから……!」
本当は両想いなのだがそんなこと露知らない園田さんはそう意気込む。
ほんと、僕の親友のためにも頑張ってほしいところだ。
◆ ◆
「それであの漫画雑誌、今週もおもしろかったんだよ!!」
僕と田中くんは帰り道を歩きながら漫画の話をしている。
どうやら昨日読んでいたやつが相当気に入ったようで単行本を買おうか迷っている途中らしい。
「面白かったら僕にも貸してよ」
話題の一環として何気ない言葉。
しかしここでいつもとは違う言葉が飛んでくる。
「わ、私も読んでみたいです!」
そう。
今日は帰り道なので園田さんがいるのだ。
園田さんは今まで黙っていたかと思うと突然話題に入ってくる。
もしかしたら会話に入るタイミングを窺っていたのかもしれない。
「そそそ園田さんもっ!?」
相変わらずというべきか田中くんは面白い反応をする。
「だめ、でしょうか?」
「いいいいいいいやまさかっ、全然いいけどっ!?」
もはや何を言っているのか僕にもよく分からない。
「……ん?」
園田さんの言葉も会話にはいるための何気ない一言だったのかもしれない。
でもこれなら使えるんじゃないだろうか。
「それなら二人とも連絡先交換しておいた方がいいんじゃない?」
「っ」
僕のその言葉に園田さんがばっと振り向く。
そしてまるで「天才か……!?」みたいな顔を浮かべている。
「そ、それがいいかもしれませんね!」
若干上擦っているが園田さんは凄い乗り気な様子で同調してくる。
まぁこの場合園田さんが連絡先交換を受け入れてくれれば田中くんもすぐに食いつくはずだ。
何せ好きな人の連絡先を知れるのだから。
「べ、べべ別に交換しなくてもいいんじゃない!?」
しかし田中くんは何を血迷ったのか、予想外の反応をする。
折角好きな女の子の連絡先を知れるチャンスというのに、一体どうしたのだろうか。
「たたたた種島くんに渡しておけば、そっちで受け取れるじゃんっっ!」
僕の苗字はそんな可笑しくないと突っ込みたいが今は放っておこう。
確かに田中くんの言うことは
でもここでそんなことに気付くなんて、なんて間の悪いやつなんだ……。
園田さんは園田さんで落ち込んでいるし、恐らく田中くんに嫌われているなんて勘違いしているのだろう。
もっとぐいぐい行ってくれれば僕も安心できるんだけど。
「ほら、帰り道とかも近いんだし交換しておいて損はないんじゃない? ほら僕もクラスの女子とは連絡とかで交換しておきたいから田中くんのもついでに連絡交換してくるよ」
そんな二人を見かねた僕は助け船を出す。
田中くんから半ば強引に携帯を受け取ると園田さんに連絡先を交換するように急かす。
携帯のパスワードは田中くんのお気に入りキャラの誕生日。
それはずっと昔から同じなので、どんどん連絡先交換を進めていく。
「はい、出来たよ」
連絡先の交換も終わり、田中くんに携帯を返す。
田中くんは少しだけ慌てているようだがやっぱり好きな人の連絡先が手に入ったからか、にやけ顔が上手く隠せていない。
そして園田さんも同じような感じだ。
全くこの二人は……。
僕はこれまでの恋愛相談とは違う二人のヘタレすぎる雰囲気に思わずため息を吐きそうになる。
そして一応念のため僕も園田さんと連絡先を交換しておいた。
これでいつでも恋愛相談に乗ることがことが出来るだろう。
「……」
気づけば僕たちの間には会話がなくなっている。
しかし決して険悪なムードなんかじゃない。
田中くんと園田さん、二人とも何やら携帯をいじっている。
大方SNS上で初めての会話に華を咲かせているのだろう。
『ブブブ……』
するとその時ポケットに入れておいた携帯がバイブ音をあげる。
見るとSNSに新着メッセージがあったらしい。
『園田:連絡先の件、ありがとうございます……!!』
ちらりと園田さんに視線を向けると、嬉しそうな顔で小さくピースを向けてきた。
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