Case.01-01 幼なじみ
僕、
好感度、それは人に対する好きの度合い。
0から始まる好感度は最大100まである、はず。
断定できないのは僕がそんな値を見たことが無いから。
僕がこれまで送ってきた生活の中で好感度については自分なりに調べてきたつもりだ。
因みに好感度の値がどのくらいかというと――
『0』 あー、君誰?
存在を忘れられるレベル。
『10』 あの、消えてくんない? 不快だから。
存在を否定されるレベル。
『20』 えっと、その、別に手繋がなくてもいい、よね……?
フォークダンス一緒に踊ってもらえないレベル。
『30』 あ、これ落ちたよ……?
落とした消しゴムを拾ってもらえるレベル。
『40』 好きか嫌いかで聞かれれば……好きかな?
そんなレベル。
『50』 お!おはよー!
すれ違ったら向こうから挨拶してくれるレベル。
『60』 お前マジでいい奴だな!
親友と言っても過言ではないレベル。
『70』 お前のことは一生忘れねーぜ!!!!
もはや永遠の友、みたいなレベル。
『80』 ねえねえっ、はいあーんっ!
あつあつバカップル、新婚ほやほや。もはやうざいレベル。
『90』 ??
宇宙くらいのレベル?
『100』 ??
いやもう神だろ、くらいのレベル。
――――こんな感じだ。
まぁ適当なところもあるが、実際こんな感じなのだから仕方ない。
僕だってそこまで詳しいことは分からないのだ。
好感度とはいえ仮にも人の心、そう簡単には知ることは出来ないということだろうか。
しかし、こんな変な力を持っていたがために、
「はぁ……」
一体今日で何組目だろう。
そもそも何時からだ。
僕が恋愛相談を受けるようになったのは。
うーん、思い出せない。
確かずっと昔に何かあった気もするが、やっぱりよく分からない。
「あ! 恋愛先生、おはよー!」
「先生言うなっ」
恋愛先生、俺をそう呼んでくるのは見知った顔のクラスメイト。
以前僕が恋愛相談を受けていた女子だ。
いろいろと恋愛についてアドバイスした結果、見事恋が成就したらしく、それ以来何かある度に僕をそう呼んでくる。
「でも皆も口にしないだけで、先生のことそうやって思ってるよ?」
「なっ!?」
ここでまさかの爆弾発言。
「じ、冗談だよね……?」
「うーん、まぁ皆ってのは言い過ぎかもしれないけど、先生のことを恋愛先生って思ってる人、私以外にも少なからずいるはずだよ?」
「ま、まじかぁ」
それは本当に初耳だった。
まさか目の前の女子以外にもそんなことを思われていたなんて。
それに僕が恋愛先生など呼ばれていいはずもない。
何せ生まれてこの方、覚えている限りでの話だが僕は初恋というものを経験したことがない。
そして当然、誰かとお付き合いの経験も皆無だ。
その理由としては、好感度のことも少なからず関係している、と思う。
僕は、好感度が見える。
他人から他人に対する好感度が見える。
そうーー「他人」から「他人」に対する好感度が、見えるのだ。
そこに例外はない、多分。
僕には、自分に対する好感度が見えない。
だからこそだろうか。
自分の恋愛というものが、正直怖い。
そもそもの話、僕は好感度の能力以外は、間違いなく並だと思う。
勘違い主人公とかそういう話じゃなく、本当に並。
もしくは並以下という可能性だってある。
そんな僕のことを好きになる人なんて、果たしているのだろうか。
答えは分からない。
ただ、それがごく少数以下であることだけは確かだ。
そういうこともあって、僕にはまだ恋愛経験がない。
だからやっぱり僕が「恋愛先生」などと言われるには少し、いやかなり違和感があるのだが……。
「それってどうにかならないかな?」
一縷の望みをかける。
しかし、目の前の女子は首を振る。
「やっぱり、先生は先生だよ。皆にとってどうかは分からないけど、私にとっては間違いなく先生なの」
嬉しいのか悲しいのか分からないことを言ってくれる女子。
「だって、先生がいなかったら私、好きな人と付き合えなかっただろうしね!」
「それは、もともと成功する可能性があったから、ちょっと背中を押しただけだよ」
その言葉に偽りはない。
確か目の前の女子が好きだった人とは、実は最初から両思いだったはずだ。
「私みたいな人間にとっては、そのちょっとが重要なんだよ?」
「……そっか」
そう言われると僕には何も言い返せない。
「あ、先生だ! じゃあまた後でね!」
そう言って自分の席に戻っていく女子。
朝、HRが始まる少し前のことだった。
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