第11話 無敵海星
「フフフ……これだけ金のタケノコがあれば私は無敵よ!!」
麻袋一杯の金のタケノコを見つめご満悦のマリア。
「もう勘弁して下せえ……」
うつ伏せに尻を突き上げた態勢で、ヒリヒリする尻をさすりながらうな垂れるアッシー。
「分かったわよ、当分はもうスーパータケノコは産まなくていいわ」
「スーパータケノコ~~~?」
ルイーズは首を傾げる。
「そうよ、私にスーパーな力を授けてくれるタケノコだからスーパータケノコ」
「まあ~~~素晴らしいネーミングね~~~お姉ちゃん~~~」
胸の前でポンと手を叩き瞳を輝かせるルイーズ。
「……そうですかい?」
対照的にアッシーの反応は冷ややかだ。
スーパータケノコの産み過ぎで力尽きたアッシーをルイーズが肩に担いでマリアたちは歩みを進める。
「あれ、何だろう?」
マリアが前方に高いポールが立っているのを見つけた。
「これは~~~何に使うのかしら~~~?」
「先端から紐が下がっているわね、もしかしてこのポール、アレじゃない?」
「アレ……ですかい?」
「そうアレよ!! もう、ここまで出かかっているのに!!」
マリアはへその辺りに水平に掌を当てる。
「それじゃあお腹を下しているみたいじゃないですか」
「余計な事を言うんじゃない!!」
「いてぇ……」
マリアはルイーズの肩からぶら下がっているアッシーの頭を叩いた、まさに理不尽この上ない。
「もしかして掲揚ポールの事を言ってるの~~~? お姉ちゃん~~~」
「そうそう!! それよ!! 分かってるじゃないルイーズ!!」
マリアは掲揚ポールに歩み寄り紐を手にした。
「姐さん、それをどうするんですかい?」
「決まっているわ!! これは旗を掲げるためにあるものよ!? 旗を上げなくてどうするのよ!!」
「う~~~ん、だからって何もわざわざそんな事をしなくても……」
「何か言った!?」
「……いえ、何でもありません」
また叩かれるのが嫌でアッシーは口を噤む。
「それ!!」
マリアは物凄い速さで紐を手繰り、それに合わせて旗がグングンとポールの頂点目掛け移動していく。
そして遂に旗がてっぺんに到着した。
「やったわ!! これでこの土地は私達の物よ!! マンションでも建てて分譲して大儲けよ!! わっはっはっ!!」
立てた人差し指を天に向かって突き上げ高笑いをし勝ち誇るマリア。
「ちょっと待って下せェ!! 姐さんたち、旗をよく見て!!」
「はぁ? 何なのよ一体?」
「あ~~~~……」
上空でたなびく旗には『ここに居るぞ!!』と書かれていた。
「これは罠です!! みすみすオイラたちは自分の居場所を敵に知らせちまったんですよ!!」
「何ですって!?」
(言わんこっちゃない)とそれこそ今まさに喉元から出そうな言葉を飲み込むアッシー。
こうして恐怖により発言の自由を奪われ独裁政権は維持されるんだろうな~~~なんて思ったりした。
「しまった、囲まれたわ……」
どこからともなく目つきの悪いタケノコたちが集まりマリアたちを取り囲んでいた。
きっと旗を目印に集ってきたのだろう。
「こうなったらやってやるわ!! 見てなさい!!」
マリアは麻袋に手を突っ込みありったけのスーパータケノコを口に詰め込んだ。
「ムグムグムグ……ムグググググ……!?」
マリアは一生懸命咀嚼したがあろう事か喉詰まりを起こしたのだ。
顔色が真っ赤になり次第に青くなり徐々に土気色に変わっていく。
「あ~~~~!! お姉ちゃん!! 大丈夫~~~!!」
「いっぺんに食べようとするからですよ!!」
ルイーズがマリアの背中を叩いて詰まったタケノコを吐き出させようとするが上手くいかない。
しかし敵はそんな事などお構いなしにどんどん包囲網を詰めてくる。
「ひいいい!! お助け~~~!!」
アッシーが頭を抱えて蹲っていると空に一筋の流れ星が流れた。
「まぁ~~~、流れ星~~~? じゃあ願い事しなきゃ~~~」
「いやいや!! いまはそんな事を言ってる場合じゃないですぜ!?」
「お姉ちゃんの喉詰まりが治りますように……お姉ちゃんの喉詰まりが治りますように……お姉ちゃんの喉詰まりが治りますように……」
「ちょとーーーーー!? もう嫌だこの姉妹、早く何とかしないと……」
アッシーが嘆いたその時。
『その願い、かなえて進ぜよう!!』
勇ましい声がした、それは上空の流れ星から聞こえてくる。
その直後、流れ星は何と、マリアたちがいるこの場所に勢いよく落下したではないか。
「わああああああああっ!!」
落下の衝撃により吹き飛ばされるマリア一行とタケノコたち。
それぞれが落下先で地面に叩きつけられる。
「ゲホッ!! ガハッ!! ガハッ!!」
思いきり背中を地面に叩きつけられたお陰でマリアの喉に詰まっていたタケノコが次々と口から吐き出されていく。
もちろん嘔吐物には虹色のエフェクトが掛かる規制が入っている。
「ゲロを吐くヒロインって……」
アッシーは眉間に皺をよせ渋い顔をした。
「よう!! お前ら!! 願いは叶えたぜ!!」
「……お前は……何者?」
目の前にいる存在に息を切らしながらやっとの事で話しかけるマリア。
「俺か? 俺は
無敵海星と名乗った生物はまさに☆の様な姿をしていた。
☆に顔が付いているのだ。
「これで助けたつもり……? 周りをよく見なさい……」
辺りには無敵海星が落下した事によって吹き飛ばされた者たちが多数倒れており、まさに死屍累々の様相を呈していた。
「俺はお前の喉詰まりを治してくれと頼まれたからそれを実行したまでだ、後の事など知らない」
「あんたねぇ!!」
マリアも人の事をどうこう言えるほどの良い行いをしていないが、流石に妹と下僕に手を出した無敵海星に対し怒りを露にした。
「まあそういう事だ、またどこかで会う事もあるだろう、アデューーーーーー!!」
「あっ!! 待ちなさい!!」
無敵海星は力強く地面を蹴ると再び空に舞い上がり流れ星と化して空の彼方へと去っていった。
「このバカヒトデーーーーー!! 二度と来るなーーーーー!! ヒトデナシーーーーー!!」
マリアは流れ星が去っていく方向へと大声で罵声を浴びせる事しか出来なかった。
スーパーマリアシスターズ 美作美琴 @mikoto
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