幕間 幸子、引き篭る

ウイに世界の発展を託してから幸子は今…


「小沼屋の塩ポテチがやっぱりジャスティスだわ〜。なんか硬いのが流行ってるけど……アレって刺さるのよね…上顎に、グサァっと…」


部屋でポテチを食べながら海外ドラマを見ていた。不可解な殺人事件を太っちょの外人が地道な捜査と閃きを駆使して解決していく。



「あ、何よこれ〜!なんでこう宇宙人とかで終わらせるのよ!!もうちょい綺麗な終わらせ方とかしなさいよ!結局モヤモヤじゃないー!伏線回収仕切れてないでしょー!!無駄にシーズン5まで続けてコレって!」


まぁ、シーズン3から少し迷走し始めててヤバいかな?とは思ってたけどさー!!


苛立たしげにリモコンを放り投げてベッドへ倒れる。


「監督に天罰を〜!!あ〜消化不良が半端ないわ………彼にイタズラメッセージでも送ろうかしら…」


カツ丼連呼メッセージは迷惑フォルダを作られて割り振られたっぽいし……直ぐ何かしら対処されそうね〜。


暇を持て余した神である幸子は、ゼプニスへと送りこんだ彼にどんなイタズラをしようか考える。




Pi〜rrr! Pi〜rrr! Pi〜rrr!



「んぁ?…これは確か………あ、まずいわね。彼の身に何かあったらしいわ……」


スマホみたいな端末から警告音が鳴り響いた。


「どうしたのかしら…この警報音は結構マズイ事態の時に鳴るように設定したのよね…」


ガバッと起き上がり、PCのような機械の前に座り直す。


「えっと……ログは……あったあった」


なになに?え〜っと……うわぁ……なによ、このエラー履歴……


なになに?…過去のフラッシュバックに限界を超えたストレスと怒りによる暴走…内包魔素の枯渇と生命力を削っての呪文行使……

あと………え!?彼に埋めた種が……発芽しちゃってる!?嘘……魔属性を付与するだけで発芽なんてする筈が…!

しかも発芽による肉体の変異のせいで精神に異常な負荷がかかってる!……心が壊れて完全に砕け散る寸前じゃない!?


画面を直ぐに切り替え、そこに写し出された球体の様なモノ。

全体にヒビ割れ、何箇所も砕け、今にも崩壊してしまいそうな状態だった。


「あぁ、マズイわっ…結構砕けてる……もう!こんな序盤で廃人にする訳にはいかないのに!」


1年と経たず使い物にならなくなるのは勿体ないし、仮にもこの世界に強制的に送った手前、少しは責任を感じる…


「あーもう!何よコレ!?どんだけボロボロに壊れたのよ!?」


カタカタカタカタとキーボードを叩きマウスをグリグリ動かす。


「くぅ…パズルは得意じゃないのに〜!!」


カチカチ、カタカタカタカタ、カチカチッ!


「よし!どうよ自己ベストぉっ!?…って…あれ?…ピースが結構足りてない?どこ行ったのかしら……?」


何とか心の形は整えられた…が虫食い状態になっていた。


「マズイわね……何のピースがないのかしら……感情系は……喜と恐が少し欠けてる。他は…六感は大丈夫…えっと…後は…記憶…ゲ…マジ?」


汗が流れる。感情が多少欠けているだけなら、まだゆっくりお菓子でも食べながら徐々に復元出来たのに…よりによって記憶……


記憶は心の固定材の様な役割をしている。だからそれがないと壊れた心は接着出来ず、徐々にまた崩壊していく。


「あぁ………そんな……何徹しなきゃいけないのよ……」


一度壊れた記憶の復元……あらゆる情報の波を手探りで探さなければいけない…検索機能をフルで活用する為。モニターを6個設置する。

頭にオープンエアータイプのヘッドホンを装着。お気に入りのヘビメタを大音量で流す……前に。席を立って一階に降りる。


「…おかーさーん?いるー?」

「あら、どうしたの幸子?お小遣いはまだダメよ。こないだあげたので我慢なさい?あ、そうそう昨日ね?お隣の素戔嗚スサノオさんと天照アマテラスさんがまた喧嘩しちゃってね〜、天照さんが実家に帰っちゃったらしいのよ〜。また天岩戸のお祭り行きましょうね?あ、あとね!閻魔さん家のケルベロスちゃんに子供が15匹も…」


ペラペラペラペラマシンガントークを浴びせる大地母神に仰け反りながら幸子は母を止める。


「お、お母さん!ストップストップ!分かったから…あのね。ちょっと何徹かしないといけなくなったから、ちょっと部屋に引きこもるね?」

「……あら?………あの男の子に何かあったのね?………あの世界ではなく、あなた側の原因なの?」


鋭い感に表情が固まってしまった。


いつもの穏やかな顔を引き締め目を薄く開く。

普段とのギャップに我が母とはいえ幸子も緊張する。

……怒るととっっっっても!!!怖いのだ。それこそ大地が裂けてマグマが吹き出し、空からは隕石の大軍が落ちてくる程に…


浮気がバレたお父さん……ガチ泣きで謝ってたしね…


「そ、そうなの。だから流石に悠長にしてられなくて…」

「なら急ぎなさい。食事は用意して部屋の前に置いておきます。それと………絶対に手抜きは許しません。貴女が彼を選び、送ったのです。責任を果たしなさい。いいですね?」


母の迫力に呑まれ冷や汗が止まらない。


「い、イエス、マム!!」


ビシッと敬礼をして引きこもる準備を始める。


「幸子?ちゃんと助けてあげなさいね?」


その言葉でいつもの穏やかな母に戻り、息を吐く。


「……えぇ。分かってるわよ…」


大量の飲み物やカップメン、お菓子を風呂敷に包ながらそう答える。


「あ。あまり間食しすぎちゃ駄目よ?お風呂もちゃんと入って、歯磨きとトイレもしっかり行きなさい?それとあんまり大きい音で音楽を聴いちゃ駄目よ?それと…」

「わ、分かってるわよ!おかーさんしつこいよー」

「あら、まったくこの子は…」


その声を背中越しに聞き、膨れ上がった風呂敷を持って部屋に入る。



ヘッドホンを着け、今度こそ大好きなヘビメタバンド『七つの大罪セブン・ディアドリィ・シンス 』の曲を大音量で流す。脳髄を刺激するシャウトに頭が冴えてくる。


ブルーライトカットの眼鏡も着用し、キーボードをタタっと叩きスリープモードから復帰させる。


「よしっ!やったるわよーっ!!」


そうして幸子は情報の海に潜って行った……



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