第27話 心の欠損とカケラ
血飛沫を笑みを浮かべながら浴びる鬼。
ダレだい………『レッドオーガ 』と聞こえたが…いや、そんな筈はない……『
『
それにあの魔物の体は赤く、角は黒鋼骨が伸びているモノだ…あの鬼とは全然違う。
目の前の存在がナニか分からない。
。人種ではない。鬼人に似ているが…彼らの角は骨の一種の筈だ。
けして
なら、あの鬼はいったいなんだ?
新種か?あの角はなんだ?
震えながらも癖で観察をしてしまう。
そして、その顔を見る。
っ!?あの顔は………あの…顔つきは…微かに…
…カレに似ていないか?
ガタガタ…と身体の震えを抑えられない。
今のカレの気を引けばどうなるか分からない
……殺されるかもしれない。
私ではけして敵わない、止める事などできない…そう悟る。
音を立てるな、空気となれ…呪文を唱えて姿を隠せ!
(『風の…せ、精、霊よ…わ、我の姿を…』)
「お……い、おん…な」
心の中で姿を隠す呪文を唱え、後少しのところで気付かれた。
跳ね上がる心臓、恐怖で涙が零れて地に落ちる。
「お、まえ…だい…じょ…ぶか?」
何を聞かれたか分からない。
思わずカレを見てしまう。
カレはコッチを向いていた。
そして分かってしまう。
あぁ…あぁ…あの目は…カレは彼だ……
狂気に染まっているが瞳にはシオンに向けるような優しい、心配するような色があった。
「ウイ…君……なんだね?」
「なぜ…その字名…を?」
字名?本名ではなかったのか?
しかも彼はなんと言った?
何故その字名を知っていると…自己紹介をした時、彼はそう名乗ったのに。
それを、なぜ知っている?…と
「う、ウイ君?私が…私が分かるかい?」
嫌な予感がし、彼にそう問いかけた。
彼が血濡れの顔を傾げ、私をまじまじと見る。
冷汗が背中を流れる…
「ダレ…だ?おま…え」
眩暈がした。
まさか…記憶が…何故!?
「私だ!リシアだよ!ウイ君の仲間になったリシアだ!魔法の使い方を教えたろう!?」
思わずそう叫ぶ。
「りし…ア?……知らね…ぇな。なか…ま?仲間…グッ!?」
急に頭を抑え膝を付く。
「ウイ君!?」
駆け寄り彼を支える。
「…い…てぇ。頭…が割れそうだ…なん…でこんなに…痛む…んだ?」
「いい!いいから!…無理に思いだそうとしなくていいんだ!ごめん…ごめんよウイ君…」
そう言いながら彼に肩を貸して立たせた。
「今は…休もう?シオン君達も呼んでくるよ…」
「し…おん?そ…れは?グゥゥッ!?」
「あぁごめん!ごめんよ!……ほらこっちだよ?寝室があったんだ…そこで寝ててくれ」
ふらつく彼を支えながら、何とか寝室のベッドまで案内して寝かせ、私は床にへたり込む。
肘まである石のガントレットと膝まであるグリーヴを装備しているのだ。小柄なリシアでは相当な重労働だった。
ベッドで横になっている彼は直ぐに寝息を立てた。
そして改めて彼の姿を確認する。
石で造られたガントレットにグリーヴ。
筋肉が少し盛り上がったように思えるがそこまで体型には変化はない。
…そして一番変化があったのは彼の額だ…
額から長く伸びる角…のようなモノ。
恐る恐る触れると、やはり見た目通り木の枝に近い感触だった。
細い枝が額の根本から3本ずつ生えて絡み合い、螺旋を描きながら角を形作っている。
それが額の左右に一組ずつ生えていた。
「彼はホントに何者なのだろうね……」
血で塗れた全身を拭ってやり、眠る彼の頬を一撫でしてから洞窟の外へと向かう。
「確か…ここら辺だったね『風の精霊よ、水の精霊よ。封を解け』」
そしてジェバルとシオンの姿が現れる。
「む?もう終わったのか?意外と早かったな。ウイはどうした?」
「リシアなの!おかえりなのー!…パパは?パパどこなのー?」
シオンの口に付いているソースを拭いてやり、どう伝えたものかと考える。
「ウイ君はね…少し、いや大分呪文を使いすぎてね…疲れて寝てしまったんだよ。盗賊は全滅したから、中に入って今日はもう休もうか」
「む、そうか。初めての呪文を使った戦闘なのだから無理もないか」
「パパねちゃったの?シオンもパパの所でねるのー!」
シオンの頭を撫でてやり、二人を連れて案内する。
「全員殺したのか?」
「そこの草むらの中に二人だけ縛って置いている。……中にいた盗賊は全員死んだよ」
門まで連れていき、草むらにツタで縛られた男二人をジェバルに回収してもらう。
「根城に牢屋があったからそこに入れておくといいよ」
「あぁ、そうしておこう」
中へ入り、まずは盗賊の二人を牢屋へと入れ、鍵を閉める。
「君たちの仲間は全滅したよ。下手な気を起こすと君たちも同じ事になるから覚悟した方がいいね」
そう言って脅し、牢屋を離れた。
「次は……ウイ君の寝てる部屋…だね。コッチだよ」
ウイの寝てる部屋に近づくにつれ足が重くなる。
「ジェバル氏、シオン君……今のウイ君の姿を見ても驚くな、とは言わない…けどどうか…恐れないでやってくれ…」
立ち止まったリシアが二人にそうお願いした。
「っ!?何か…あったんだな?ウイの身に…」
「パパに?……パパはぶじなの!?」
「無事……だよ。……
そして部屋の前に立つ。
「二人共……開けるよ?」
扉を開ける。
そして奥のベッドに寝ている彼を見つける。
「……………な……なん……だと?」
「…………………パパ?」
二人が唖然とする。
当たり前の反応だ。ここまでは仕方が無い…
ただこれから先。恐れないでいてくれるか…だ。
二人が彼に近づく。
「リシアよ……。ウイは鬼人…だったのか?」
「いや……違うよ。彼は人種だった。ステータスプレートには登録時に嘘等つけない。ジェバル氏も知っているだろう?」
「あぁ……知っている……だが…それではコレは…」
微かに震える指で角を指す。
「判らない……ただ、鬼人の様な骨が発達した角では無いのは確かだよ。木に近いのかもね」
「そうか……この手足の防具は?」
「ソレは…多分、ウイ君が土魔法で造ったのだろう。私では外せないから下の腕がどうなっているかは分からない…すまない」
「そう…か」
二人でウイの容態を確認しているとシオンがベッドに登ろうと四苦八苦していた。
「ん?シオン君…何しているんだい?」
「リシアー!シオンをベッドにのせてなのー!」
シオンがベッドをポフポフ叩いて催促する。
「あぁ、はいっ…と」
軽いシオンならリシアでも持ち上げられたのでそのままベッドに乗せる。
そしてウイの身体をぺたぺた触り、匂いをかいで……
そのまま寄り添い、丸くなって寝だした。
「「………………」」
二人ともシオンの行動が分からない。
「し、シオン君?もう一度聞くが…何をしているんだい?」
「もちろんパパと寝るの!あ、リシアだめなの!パパのココはシオンのなのー!」
そう言ってギューッとウイの胸元を抱きしめる。
「怖く…ないのかい?変とは思わないのかい?」
「んゅ?なんでなの?なんかオデコからにゅっとでて手と足がごつごつしてるけどパパなの!パパのにおいで、パパのあたたかさなの〜」
にへ〜っと笑うシオンを見て二人は固まる。
「子供と言うのは……フフ…凄いね」
「あぁ、そうだな……大人になるとそんな事も忘れ、余計な事を考えてしまう…嫌なものだな…」
感心する二人を他所にシオンはウイに抱きつきながら眠りについた…
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