第24話 リシア先生の魔法講座(実践編)
「さて、乙女を辱めようとした鳥で魔法の例を見せたよ。次はウイ君に実際にやって貰おうか」
「あ、あぁ。頼んます先生…」
吹っ飛んだジェバルを横目で見ていたら近くで遊んでいたシオンが寄っていく。そして枝でつついて遊びだした。…可愛い。
軽く癒されたので真面目にやる。
「さて今の呪文だが土魔法だね。名前はアースバレット。地に干渉し内部に球体を作り、ジェバル氏に向かって打ち出したんだ。いいかい?呪文を発動させるにはイメージ力が全てなんだ。箱の穴の形に近ければ近い程発動しやすくなる」
ほうほう…イメージか。
「因みに呪文には単純なモノが多い。コレはそのイメージが簡単に出来るからだね。例えば『火の精霊よ。燃やせ』」
リシアが唱えると近くの葉っぱが燃えだした。
「おぉっ!すげぇ!」
なんかの漫画にあったパイロキネシスって超能力みたいだ!
「今のは本当に初級だよ。葉っぱに火がつくイメージなんて簡単だろう?だけど『火の精霊よ。掌へ灯れ』」
次はリシアの掌の上に火がついた。
「かっけぇ!!…え?熱くないのそれ?」
「そう!これはね?熱くない火なんだよ。……ほら」
そう言って俺にその火をペタッと着けた。
「うおおぉぉお!!?あっつ…くない?……あ、マジだ!すげぇ!」
いきなりでかなりビビったがホントに熱くなかった。
「これは中級だね。熱くない火のイメージをしっかり持つ。そして掌の上で燃やしたね?これもイメージがしづらいんだよ。『炎の精霊よ。纏いて我を守れ』」
瞬間リシアが燃え、炎に包まれた。
「うぉっ!?ちょっ…おい!リシア!」
とてつもなく熱い…喉が焼け付きそうだ!
そしてすぐ炎が収まりリシアを確認出来た。
「ふぅ…火系はあまり得意じゃないからこんなものかな?」
火傷などはないようだが…リシアが纏っているのはなんだ…?
「リシア……それは?って熱!?」
リシアの纏っているものを指さし火傷した。
「あっ、なにしてるんだい!これは炎を纏っているんだよ。自分を害さずに相手や武器等を燃やすんだ。最初に注意すればよかったね…大丈夫かい?どれ………んちゅ」
指を取られてくわえられた。
「…………………!!?」
指に舌が絡みつく感触があった。
指をくわえる口の艶やかさに意識が集中する。
声が出ない…頭の中が真っ白になった。
「ちゅ………ん。大丈夫そうだね?……ってどうしたんだい?」
「………(゜ロ゜)………」
「ウイ君?……おいウイ君!ど、どうしたんだい!?」
ガクガクと揺すられハッとした。
「やべぇっす。リシア先生…それはやべぇっすよ……」
もうナニもかもがヤバい。理性が飛びかけたわ。
「ん?何がだい?」
「あまり少年の心を弄ぶなエロフめ。まったく。軽々しくそんな事してたらその内ウイに襲われるぞ?」
復活したジェバルにそう言い放つ。
「んなっ!?なな、ななに!?う、ウイ君がわ、私みたいな貧相な者など相手にする訳ないだろう!?」
めっちゃキョドる。え?なにこの人?可愛いんだけど…ビッチなのに。あ、ビッチぶってるだけか。
「ふぅ……脱線がハンパねぇな…。よしそろそろ本気で教えてくれよ」
「ななな!!な、なにを!ナニを教えるって言うんだい!わわ、私はまだそんなコトなど…!!」
「落ち着けこのヘタレビッチ!?呪文だよ!じゅ・も・ん!」
だんだんとリシアが変な方向に暴走してきた。自分が言うのは良くて、言われるのは弱いとかどんだけだよ…
「あ、あぁ…じゅ、呪文だね!わわかった!スゥー…フゥ……ゴホン!あー、あー。よし…」
深呼吸をして心を落ち着ける。
「じゃあ頼むわ。後、シオン?そろそろ俺は練習しなくちゃいけないからさ………そろそろさ……太ももを抓るのは止めてくれないでしょうか?」
「………むぅぅぅ」
頭を撫でてホッぺをプニプニしてから離れてもらった。
「ではやってみようか。まずは火からやってみようか。……お、あそこの葉っぱに火を着けてみてくれ」
「おっしゃ。えーと…イメージイメージ」
焚火をイメージする。
……なかなか着かない。
なら…酸素を取り込むイメージを追加して魔素を薪替わりに燃やすイメージを………おっ!
「おぉ!着いた!着いたぞ!!」
ジュボッ!と燃え上がり葉っぱを焼き尽くして消えた。地面が軽く焦げている
「ほぉ!…凄いな!これは初心者とは思えない威力だよ!」
「…確かに。私の時はだんだんと焦げ出してから燃えたんだが」
おぉ!なんか2人の評価が高い…うわ嬉しいわ。
「じゃあ次だね……そうだね。ウイ君は地と木属性が特化していたからそれを見たいな。……ウイ君。そこの地面をどうにか出来るかい?盛り上げたりとかへこましたりとか」
「おっけ。やってみる」
地面を盛り上げる…か。確かプレートがあってそれがぶつかると盛り上がって山が出来るんだっけ?…後は噴火とかその灰が積もって山になったりするんだよな…。
噴火とか怖いから土を動かして盛り上げるか。
…土が地中で動き衝突するイメージ……
……イメージ…衝突した際の突き上げられる土のイメージ……
ゴ…ゴゴ………ゴゴ、ゴゴゴゴゴゴ
地響きがしてきたな。…これは後少しかな?
イメージ……山の雄大さ…
…イメージ………山頂からの景色……
……イメージ………山に住む生命の息吹……
………大地母神の偉大さ………
ッ!!
いきなり体に力が入らなくなり吐き気がした。
同時に…
ゴゴゴゴゴゴオォォオォォォ!!!!!
地震が起こり、そのまま倒れた。
森の木々からは大量の鳥が飛び立ち、森からは魔物や動物の声が響き渡る。
「うぉぉお!!?な、なんだ!?皆大丈夫かぁ!?」
咄嗟に皆を探すとリシアやジェバル、シオンも地に伏せ揺れに耐えている。
「お、おぉい!リシアァ!な、なんだよ!?この地震は!!」
リシアに問うが
「わ、私が分かるわけ無いだろう!?この島は浮遊島だよ!…地震なんて起こる筈がない!」
「まさか地上からの攻撃か!?魔族が攻めて来たとでも……」
マジかよ!?魔族と戦争でも始まんのか!!?
「くぅ…シオン…!」
「パ……パパァ〜…」
なんとか皆の位置まで這いずり泣きそうなシオンを抱きしめる。
やがて地震が落ち着き、完全に揺れが治まり立ち上がる。
「ウイ。一旦魔法の練習は置いといて、急いで街に戻るぞ…」
「あぁ…そうだね。なんか情報が入っているかもしれない」
「あぁ。俺もそれでいい」
そして俺達は森を出ようとして…
「なぁ、リシアよ……この森は斜面なんてあったか…?」
そうジェバルがリシアに尋ねる。
「いや、此処は…平地にある森だよ?……多少の段差ぐらいしかない………筈なのだけど」
森を歩き5分程、目の前の口径に疑問を抱く。
「なんで……下に向かって木が生えんだ??」
森が下方に向かって広がっていた。
「……とりあえずは、まず森を出ようか」
リシアがそう言い、皆して斜面を降っていった。
40分程で森を抜け、後ろを振り返る。
「………リシアよ。私達は山に入っていったか?」
小さめの山があった。丁度森の入口から盛り上がり、自分達がいた場所を山頂とするような。
「……………ウイ君?…君はどんなイメージを持って呪文を唱えたんだい?」
「いや、口に出してはいなかったと思うが………山の…イメージを…………だな」
………おい?まさか?
「因みに吐き気がしたりとか頭痛、眩暈等あるかい?」
「あ、あぁ。地震が丁度起きた時、吐き気と眩暈、あと身体に力が入らなかった…」
「……………ジェバル氏、どう思う?」
「………………あぁ…間違い無いと思うぞ」
2人して俺を見る。
視線が怖いんだけど……
「やっぱり………俺か?」
「おそらくな。今の魔素保有量はどれくらいある?」
えっと……
魔素保有量:80/600
はぁ!?めっちゃ減ってるじゃねえか!!
確か2080あったよな!?
「なんか80/600しかない…」
「あぁ……確定だね。それは魔素の急激な減少による症状だよ」
リシアがそう呟く。
「ウイよ。……お前は本当に人種なのか?いや亜人種でもここまで出来るものは一握りもいないぞ」
「これは……そうだね。都市殲滅魔法を独りで唱えて放つ、それと同じ位に無茶苦茶な事なんだよ?」
あのリシアがドン引きしてる。
え?…ナニ?やめて!そんな目で見ないで!?
「これは…ちょっと。……どうしようかね?」
「私に聞くな。ウイの先生なのだろう?」
「教え子がバケモノだったんだよ?…それに私じゃこの山を元に戻す事なんて無理なんだよ!」
リシアまでバケモノって言い出した……泣きたい。……あ、シオン慰めてくれるんだな。ありがとな……。
背負ったシオンに頭を撫でられながらこの山をどうするか考える。
「仕方が無い。………放置だね」
「あぁ、私達は何も見てない、してない、聴いていない。いいな?」
皆で頷き山を後にした。
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