第23話 リシア先生の魔法講座(概要編)

街を出て少し先にある『タビアの森』

魔物は入るが浅い所ではそこまで強く無いという。そしてリシア、ジェバル、シオンと俺達は森の中程の拓けた場所にいる。


「おいリシア…真面目に教えてくれよ?」

「私に任せなよ!君は人種なのに魔力操作ができ、魔法が使える。だけど今は呪文を持たないから使えない。初心者でも簡単に使えるヤツを教えよう!!ハッハッハ!」


森にリシアの笑い声がこだまする。






俺は冒険者登録すると発行される身分証というものを知らなかった。

そこに何が表示されるのかも勿論知らない。


受付嬢の反応や言葉から名前、年齢、そして種族までは分かるのは理解したが他にも表示される。


冒険者証。別名『ステータスプレート』。

……そう”ステータス”プレートだ。


その名の通りステータスが表示される。個人で表示項目を隠せるが名前、年齢、種族は隠せない。称号は隠しステータスにあるがスキルは表示されない。冒険者にとって死活問題だかららしい。

最初はデフォルトでそれ以外は表示されない設定だったから人種という騒ぎだけですんだ。


因みに俺とシオンの冒険者証を受け取るのを忘れていたのでまた冒険者ギルドに行った。俺1人で。そして待ちぼうけを食らっていた鬼人のフィドルに捕まった。


「お前は俺と決闘して勝った。何かあったら俺を頼ってくれ。可能な限り手助けする」


そして鬼人はそう言った。なんでも鬼人は決闘で勝った方が上位として君臨する種族だという。

だから俺に勝ったお前は俺を顎で使ってもいい…と。

俺は人種だし詫びたフィドルを顎で使う気にはなれなかったので気が向いたらなと言って別れた。


そして受付嬢の所に行き俺とシオンの冒険者証を貰った。

いや…なんか凄い剣幕でリシアの居場所を知らないかと言われ、奥のギルド長室からは発狂したような叫び声がしていた……

喋れば俺も大変な事になりそうだと思い咄嗟に「申し訳ないのですが、存じません」と言ってしまった程だ。


まぁそんな感じで無事帰ってきたらリシアから冒険者証の非表示の解除法を教えてもらい見せて欲しいと言われたので渡した。


そして俺のステータスを見たリシアとジェバルの表情だが……有り得ないモノを見る様な目で俺を見てきた。

ジェバルなんか小さく化け物か……って言ってたし…


そしてリシアは…


「素晴らしい!!何だいこのステータスは!?大体亜人のB級で各属性が75から100が平均なんだよ!?特化属性でも150位だ!それがウイ君のはどうだ!?得意属性を除けば大体B級成り立て!特化に至ってはA級からS級だぞ!!更に魔法を使うための魔に希少な闇と光!!!!とても人種のステータスとは思えないよ!ハッハッハ!!ハッハッハッハ!!」


興奮しまくりである。俺を見る目がモルモットである。マジこえぇ…


「あぁ…こんな希少な素材と出会えるなんて私は幸せだよ。…ウイ君、私の物になりたまえ!」

「断るわボケェ!それは実験動物になれってことだろが!!」


間髪入れずに断る。ふざけんな!普通の告白ならまだ……ひぃ!ごめんなさい!シオンさん!……あれ?寝てる筈だよ…な?寒気がしたんだが…


「ふぅ……さてウイ君。君は魔属性を持っているね?ならスキルで魔素適合とか似たようなのはあるかい?」


少し落ち着いてきたリシアがそう聞いてきた。


「あ、あぁ…。ちょい待ち…『ブレインデバイス』」


表示が現れる。そこからスキルの欄を見て


「ん?ウイ君。今『ブレインデバイス』と言ったね?魔法かい?」

「え?いやこれは……スキルになんのかね?魔素保有量ってのは変わってないし。自分のステータスを目の前で確認出来たりするヤツなんだが…」

「ほう。…自分の脳か若しくは視界に働きかけるのかな?冒険者証の様なスキルなんだね。いちいちプレートを見ないで済むのは便利そうだ」


ブレインデバイスはそこまで興味を惹かれなかったようだ。……まぁヘルプ機能を言ったらまた酷いことになりそうだが…だから言わない!絶対にだ!


「え〜と…あったあった。魔素適合あるわ」

「ほう!なら君は人種でありながら魔法を使用出来るということだ!!ハッハッハ!素晴らしいぞ!!」


ヤバイ。またテンション上がってきてる…

後ろを向き両手を広げて天を仰ぐ…何か降臨しそうだ…


「あ、あぁ一応何種類か魔法は使えるらしいが呪文が無い」

「取得出来る呪文はどれだい!?」

「ひぃ!」


グリンッと首を回してこちらを見てきた!こえぇ!!こえぇよ!!


「つ、土魔法、木魔法あと植物魔法だな」

「ほう…ステータスで予想はしていたが…やはり地系の魔法に特化しているんだね……そうだね。そのノランって貴族をどうにかする前にウイ君の魔法を使えるようにしよう。そうすれば作戦の幅が広がるしね」

「お、それはすげぇ助かる!魔法持っていても使えないってのは生殺しの気分だったんだよなぁ……。ジェバルはそれでも大丈夫か?」


リシアがそう提案してきた。俺としては大変有難いので大歓迎だが、その分貴族の対応が遅れてしまう。


「いや私としては協力してくれるだけで凄く有難い。それに更に成功率を上げられるのだから拒否する理由など無いぞ」

「よし!なら決定だね?……そうだね、タビアの森の中程に拓けた場所があったからそこはどうだろうか?」


リシアが練習する為の場所をジェバルに相談する。


「ふむ、確かにあそこ程度の魔物ならばウイのステータスなら楽勝か…私はいいと思うぞ?」

「まぁ俺は習う側だから無茶苦茶なやつ以外は任せるわ」


ジェバルも賛成のようだしそこに決定した。


残ったコルピを飲み干した後、シオンを背負いジェバルとリシアに連れられて街の外にむかった。




こうして今に至る。


「さて魔法だが簡単に説明しよう。積み木を知っているかい?魔法とは積み木をしまう箱と思って欲しい。あぁ、積み木は呪文だよ。箱には各属性の穴がそれぞれ空いている。例えるなら火の箱には三角の穴が空いていて、三角の積み木には火の呪文が彫られているんだ

。……分かるかい?」


「お、おう」


「そして同じ形の箱に積み木が入れられる事で魔法が発動する。そして水の箱なら丸い穴。勿論火の箱に水の積み木を入れることが出来ない。形が違うからね。だから箱のない呪文は覚える事ができないんだよ」


ん…向こうだと銃器か?銃器本体が魔法、バズーカとかピストルとかの銃器種が属性…?

バズーカの弾を拳銃では撃てないからな。逆もそうだし。

んで弾が呪文で……火薬が魔素的な感じかね?


いつの間にメガネをかけたリシア先生がそう説明してくれる。


「なるほど…因みに灰とか液体とかはなんだ?」

「それは類似属性だね。灰なら火属性に分類されるけど操るのは火ではなく燃えカスの灰や炭。そして火薬だね…まぁ使い方次第ではあるけど補助や日常生活で主に使われる。因みに適合値が低くても日常では充分役立つモノが多いよ。そして主属性となる火とか水。これは戦闘に特化してると言える。適合値が低ければ満足に使用もできないよ」


生活に使える魔法とかいいな…


「あぁ因みに積み木の例えで説明するけど灰の積み木は少し小さい三角なんだ。だから火の箱にしまえる。そして灰の箱の穴もやっぱり少し小さい。灰の積み木を入れる事は出来るけど火の積み木は入らないんだよ」

「なるほど…威力が高くなる分積み木も大きいってことか?それに類似魔法の箱を持っていなくても主属性があればその類似魔法は別に無くてもいいと?」

「うむ。そう思ってくれていいよ」


なんとか理解した…かな。


「おっけ。んじゃ呪文の方を頼んます先輩!」

「先輩……先生の方が良かったのだか…」


いや先生って年でも見た目でも……


「あれ?そういやリシアっていくつだ?」

「わたしかい?えーっと今年で……190歳だね」

「……はい?」


190歳?え?特殊な歳の数え方すんのか?


「…ジェバルは?」

「む?私は30になるな」


ジェバルは歳相応な見た目だな…種族か?


「えっとエルフって特殊な年齢の数え方でもすんのか?」

「いや、他と一緒だが?」

「……え?190歳?190年生きてるってことか?」


何それ。超長寿じゃん…銅さん鉄さんなんかより遥かに年上じゃん!?


「ふむ。エルフを知らないウイ君なら仕方ないか。私達エルフ族は長命なんだよ。大体1000年は生きるね」

「は!?1000年……あー単純に考えると人の100歳を基準にするとリシアは19歳位か?」

「それで違いはないかな?経験の差は190年分あるけどね」


はー…すげぇな異世界……


「よし。そしたら改めて呪文頼んますよ先生」

「あぁ…先生…いい響きだね。後で特別な指導をして上げてもいいんだよ?」

「黙れ。ビッチ先公」


ふふふふ…と艶やかに笑い、流し目を送るリシアに軽くドキドキしたが悟られる訳にはいかない。……くそっ!鎮まれオレ…


「ほらほら…いい加減始めるぞ。それにそのエロフは耳年増なだけでまだ処じ「『地の精霊よ穿て』」ョアブシッ!!?」


ジェバルが地面から発射された石に顎をかち上げられ吹っ飛ぶ。


「……さて、今のが呪文だね。それとウイ君は何も聞いてない。…いいね?」

「う……うぃっス……」


リシアが顔を赤らめながらいきなり実践をジェバルに行った。


ジェバル……リシアにこんな顔させるとは流石だぜ…

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