第22話 街を出る前に

リシアの後に続き待合所へと戻り、そして受付嬢の元へと向かっていく。


「さて。ミレア君、リーナ君が来たら私の部屋の机を見るよう言ってくれないかな?」

「え?あ、はい分かりました。けど書類はもう片付いたんですか?」

「……そうだね。もう問題はないと思うよ?」


コイツ…そのリーナって人に丸投げする気だな?


ジト目で見る俺の視線を躱しながら外に行く。…鬼人は…まぁ後でいいか…


「おい?何処にいくんだよ。俺は依頼を受けて金を稼ぎたいんだが…」


スタスタ歩くリシアを追いかけながら尋ねる。因みにギルドを出る時に猫人化の指輪を着けてみた。


「ふむ、ちょっと面倒が起きそうなのでね…早めに街を出て旅立ちたいのだよ」

「………おい。十中八九あの手紙だろ?丸投げしたからバレる前に逃げたいんだろ!?」


おい!コッチを見ろ!歩くスピード上げんな!


競歩と化した俺達を街の人達が避けていく。

シオン?勿論背負ってますよ。キャッキャしてます、可愛い。


「おい、勘弁してくれよ…まだジェバルに礼もしてないのにこの街離れるとか…」


リシアがピタッと止まり追突しそうになった。


「あぶっ!?おい急に止まんなよな〜」

「ジェバルと言ったか?鳥人のジェバル?その鳥人が君達を手助けしたのかい?」


あ、やべっ!ポロリと言っちまったよ!?


「おい、ホントにジェバルには何も…」

「よし、ジェバル氏に暫く匿って貰おうじゃないか!」


そしてUターンしまた競歩を始めた。


「ちょ!?お、おい!待てって!」


そして小走りに追いかける。


あ、足はぇぇ!アイツ競歩なのに!?


そしてジェバル邸に着く。


「おーい。ジェバル氏ー、いるかーい?」


ゴンゴンとノックをする。


なんだよこの女……迷惑なガキにしか見えなくなってきた…


「ん?誰だ朝から………」


ガチャっとドアが開き、掃除の最中だったのか、マスクと三角頭巾を装備したジェバルが現れそして…無言でドアがしまった。


あ、鍵閉めたぞ。


「ん?…おや?どうしたんだいジェバル氏?…おーい!私だー。ギルド長(元だけど)リシアだぞー」


ゴンゴンと再びノックをしまくる…そして二階の窓が開き塩が投げ撒かれて降ってくる。


おい…お前ジェバルに何したんだよ…


ジェバルの対応が普通じゃない。


「……仕方がないな。『地の精霊よ、閉ざされた門を開け』」


土が扉の前に集まり鍵穴を塞ぐ。そしてカチッという音と共に扉が開かれた。


「………………」


完全に強盗か空き巣の犯行だろ!?

え?魔法ってヤバクね!?


「お邪魔するよー」

「ちょ!?おま…!」


そして止める隙もなく何事も無かったように侵入するリシア。


「クッ!この魔女め……!次は私をどうしようというのだ!!」

「失敬な。ただジェバル氏に匿って貰おうと思ってね」


ジェバルが臨戦態勢に入っている。その手にハタキを持って…


「……2人は知り合いなのか?」


まぁ友好的な関係じゃないのはひと目でわかる。


「ジェバル氏とは密室で身体を温めあった仲なのさ」

「ぶふっ!?」


ちょ!?マジか!え?修羅場的なやつかコレ!?うわっ関わりたくねぇ!!


「ふ、ふざけるなっ!研究だか何だかで私を縛り付け、鳥人の身体の構造がどうとか羽がどうとか!必死でもがく私に怪しげな薬とか他にも…!!」

「暴れる君を抑えるのは大変だったねー。だけどちゃんとした依頼だったろーに?」

「あぁ…そうだな。内容が調査依頼で受けた私が調査される対象なんて書かれてなかったがな!!」


ひでぇ…詐欺じゃねーかソレ。


「まぁまぁ。昔の事なんだ水に流すよ」

「貴様が流すなぁ!?あれ以来、私が竹串に恐怖する気持ちが分かるか!?」


焼き鳥ですね。分かりま…え?味見したんか!?


「いやまぁ、アレはちょっとした興味と言うか…」

「私の身体にタレを塗りたくることにか!?ウイ!何故ソイツを連れてきたのだ!」

「……すまんジェバル。まさかこんな関係と思ってもみなかったんだ。…とりあえずジェバル……落ち着いてくれ」


このままだと埒があかないので2人の間に立つ。


「まぁ2人の関係は大体の関係は分かったよ……とりあえずは落ち着いて話そうぜ?」


あの後苦労しながらもなんとかジェバルを鎮めることが出来た。


「……ハァ、仕方がない…コルピでも煎れるから座って待っていてくれ」

「私は濃い目で頼むよ?」


溜息をつきながらコルピを準備しに行った。


いつの間にか眠っていたシオンをソファに寝かせ、容れたてのコルピを飲み一息つく。


「……で、何故ギルド長がここに居る。それと何故ウイが猫人の姿に?」

「あ〜…なんつぅか…」

「ふむ、私がウイ君達の旅仲間になったからだね。そしてウイ君が人種とバレると面倒だから変装用の指輪を上げたんだよ」


質問されなんと答えようか悩んでいるとリシアが横から答えた。


「…………正気かウイ?」

「いや……なんか勢いで無理矢理押し切られた感がある」

「何を言う。シオン君も賛同してくれただろう?」


アレは餌付けだ!


「まぁまぁ。しかし2人が知り合いだったとはね?流石に驚いたよ」

「私の方が驚きだ…ウイ、コイツはやめといた方がいいぞ?この女は見目は悪くないが……その中身は酷いぞ?実験、研究、興味が暴走し、全てを巻き込んで混沌へと誘うんだ……迷惑の塊だぞ」

「何を言う。冒険者が冒険をしないで何をするって言うんだい?」

「お前の言う冒険は違う意味の冒険だからな?無謀な実験や意味不明な研究、明らかに良くない事が起こりそうな所に好んで突っ込んで行くとかしないからな?」

「……ジェバルも苦労したんだな。つうかもしかして昔の仲間?」


気安いやり取りを交わす2人を見てそう判断してみる。


「そうだね。一時期冒険者としてパーティを組んでた事もあったね。…あの頃は楽しかったなぁ」

「お前だけな……巻き込まれる私達の身になってくれ」


ジェバルの顔が老けたように見えた。


え、マジで?俺達もこんなふうになるの?


「おいリシア…シオンだけには手を出させねぇぞ?…いや、俺も遠慮して欲しいが…」

「ふむ、心配しなくていいさ。シオン君にそんな事はしないよ。ウイ君には少し(身体に)質問したりする位だよ」


なんだ?…質問の前になんか入った様な気がする…


謎の寒気を感じるがとりあえずは無視をして続ける。


「まぁなら…いいが。断っても付いてきそうだし…」

「それよりも本題だね。ジェバル氏、私も匿って欲しいのだが」


やっと本題を切り出したリシアにジェバルが変な顔をする。


「……リシアよ。ウイ達の仲間になったと言ったがギルドはどうするのだ?その匿う事と関係してそうなんだか…」

「流石ジェバル氏。まさしくその通りだよ。ギルド長の交代の指示を紙に書き、机に置いて来たからね。リーナ君に見られる前にこの島を出たいのだよ。そして転移門の許可を取りに行こうとしたが君達が知り合いと聞いてね?ならばと思い此処に来た次第だ」

「……許可証発行の代行か。それなら多分厳しいぞ?貴族共に目の敵にされているからな。嫌がらせが確実にあるだろう」


そういえば初めてジェバルとあった時も貴族がなんたらとか言っていたな…


「ふむ……そういえばそうだったね。確かノラン子爵の一派だったか」

「……あぁそうだ。没落したがまだこの屋敷に居る事が気に食わないらしい。…先日も依頼中に襲われた。恐らく深い傷を負わせて働けない様にしたいのだろう。稼ぎが無くなれば屋敷を手放すしかないからな…」


うわ…性格わりぃなソイツ。この屋敷が欲しいのか?それとも未だに居るジェバルが気に食わないのか?


「そのノランって野郎をどうにか出来ないのか?」


それが出来ればジェバルに多少の恩は返せるんだがな…


「ふむ、そうだね。ノラン子爵の目的がハッキリ分からないからね…ただ嫌がらせがしたいってだけならまだやりようがあるんだがね。……ジェバル氏が私も匿ってくれるのなら協力しよう」

「…………それは助かるが…ウイまで危うくなるかもしれないんだぞ?」

「何を言ってんだ?俺は人種だぞ?危ういのはこの街に来てから嫌というほど知ったし、そこに後1つ加わるだけだろ?大した事じゃねぇよ」

「ジェバル氏?私が含まれてなかったのだが?」

「んじゃ早速そのノランって野郎を教えてくれよ」


そしてリシアを無視しながら相談を始めたのだった。













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