第21話 新たな仲間?

「さて、先程も聞いたがどうしてこの島へ?いや、どうやってこのスライフォードへと来たんだい?」


受付嬢が用意してくれたコルピを飲み、一息ついてから尋ねてくる。


「…何でそんな事を聞くんだ?空を飛べそうもない亜人なら他にもいたろ?」


街中ですれ違った様々な亜人を思い出す。


「そうだね。ここは知っての通り上空にある浮遊島だ。空を駆ける移動手段を持っているか転移門を使わない限りは来れない。そして転移門は許可証がない限りはつかえないのだよ。人種の商人ならまだ分かるが君は商人には見えないし、この街で冒険者になったそうだね?」

「あぁ…なら転移門ってやつを通ってきたんだよ」

「それもまたおかしいのだよ。気を悪くさせるが、ただの人種に転移門の許可証など簡単に発行されるはずが無い。…私達は簡単な書類と質問で発行されるのだがね」


空港みたいなやつか?……人種は荷物みたいな扱いで主人のいない荷物に運搬許可など降りる筈もないってことか。

地下世界からこの島へ飛ばされたと言ったらどうなるのかね…捕まったりするのか?


「はぁ、つまり不法滞在だと?」

「ん?いやそんなものはないさ。まぁ街の検問をどうやって抜けたのかはわからないが」

「あぁ…それなら知り合った奴の奴隷として入って街で解放してくれたんだよ」

「ほう?人種を助ける亜人か…珍しい」


ニヤリと口を緩め何かを考えている。


「…おい、ソイツを探して何かする気なら俺は…」


ジェバルには世話になったんだ。何かする気ならあらゆる手を使い後悔させてやる。


「あぁ、そんな睨まないでくれ。別に君の知り合いをどうこうする気はないよ。私はギルド長なんてしているが元は様々な魔物や種族を調査する研究者でね?興味があるのだよ。その植人…いや魔物の幼女かな?それと…」

「ッ!?…笑えない冗談だな。魔物な訳ねぇだろ?」


シオンを魔物だと見抜いただと?


咄嗟にシオンを背後に隠し警戒する。


「ふふっ。今の反応で確信出来たよ。半信半疑だったんだがね?君の反応は判り易すぎるね」


くそ!カマかけやがったな…


クスクスと笑うギルド長。


「勘違いしないでくれ。別に何もしないさ…それに私は君の方がより興味があるのだよ。だから関係の悪化はさせたくはないのだよ?」


警戒を更に強める俺に手をヒラヒラ振り、敵対の意思がない事を告げる。


「ふむ……そうだね、君には友好の証明としてこれをあげよう」

「……指輪?ソレが信用出来る証拠は?」

「ん?そうだね。では私が付けてみせよう」


謎の指輪を嵌めるギルド長。そして変化が起こる。咄嗟に構えるがその現象に困惑する。


「……あ?」

「さて。どうだね?これで安心出来る事が分かったろう」


ギルド長が絶壁の胸を張り自慢げに言う。


「お前…猫人だったのか?」


ギルド長に猫耳、尻尾、頬には猫ヒゲが生えていた。

ピコピコさせていてとても可愛い……おっとヤバイ、少しシオンの目が厳しくなってる。


えっと…正体を暴く指輪か?え?人種の俺には意味なくね?


「ん?何を言ってるんだい?私はエルフ族だよ?」


エルフ?獣っぽい奴じゃないのか?


「なんだそのエルフってのは」

「え”?…エルフを知らないのかい?森の賢者や深緑の謳手と呼ばれているんだが?」

「知らん」


ショックを受けた顔になるギルド長。猫耳と尻尾もショボンとしている。


「ん?つまりなんだ?その指輪は変装出来るってことか?」

「そう!その通りだよ!コレは私の開発した猫人化の指輪でね?指に着ければ誰でも猫人に変身できるのだ!」


へぇ?人種とバレないのか。ならかなり有難い指輪だな。…ネーミングセンスないけどな


「これなら街中を歩いても人種とバレないだろう?」

「確かにソレは凄く助かる。だが何故人種に協力するんだ?」

「さっきも言ったが君達に興味があるんだよ。鬼人を倒せる人種に魔物の幼女…種は分からないがここまで人に近い魔物は初めて見たよ」


マンドラゴラ種とは分からなかったのか…よかった。


「…じゃぁ何故魔物だと?」

「言っただろう?私は魔物や種族を調べていた研究者だってね。植人は年経た草木に精霊が宿り融合して姿を変える。栽培なんてして産まれるものじゃないのさ。まぁ元は草木だから肌に木目があったり、髪が蔦や葉っぱだったりするからね。頭に葉っぱや花を付けている幼女ちゃんを勘違いする者が多かったんだろう」

「すげぇな研究者」

「因みになんという種なんだい?」

「……知らねぇ」


そんなこと教えたら解剖させろとか言いそうだし……幻の魔物っぽいしな……


「まぁすぐには教えられないか……まぁそれに………ふむ」


こちらが隠してるのを確信しているのか顎に指をあて何か考え始めた。

そして暫くして何か思いついたのか、机に乗せられている書類の山を退けて紙になにかを書き始める。


「よし…こんなものか」


紙を持って内容を確認してから机に戻してハンコを押す。


「よし。では行こうじゃないか」

「はぃ?」


何を言ってるのか分からない。

グイッと急に手を掴まれドキッとするが逆の手に走る痛みにビクッとした。


「ちょ…ちょいまて!?なんだ?話が飛びすぎてわからねぇんだが!?」


慌てる俺を見てギルド長がニヤリと笑う。


「私が君達の旅に付いて行こうじゃないか」

「……は?」


何を言ってるのか理解出来ない。


「え?何でそんな話になった?お前が?ギルド長だろ?ここはどうすんだよ。てか俺はそんな事を許可した覚えすらないんだが?」

「む?私の好奇心を満たす為でギルド長は辞める。後任は手紙に書いたしそもそも私のガラじゃなかったんだ。君の許可か無くても付いていくが……そうだな許可するメリットは私の知識と経験。足らないと言うならこんな貧相な体で良ければ好きに扱ってくれ。あぁ出来れば縛ったりとか叩いたりしながらとかはまだ止めてくれると…」


少し顔を赤らめ爆弾を落とす。


「だぁぁぁあ!!ストーップ!!シャラップ!!子供のいる前でなんて事言い出すんだお前は!!」

「スキンシップなの?」


ギルド長の口を手で塞ぐ。


だぁ!?掌を舐めるな!ガキか!…シオンは知る必要なんてないぞ?スキンシップには違いないがソレは特殊過ぎるんだよ…


「…ふむ…私の知らない言葉だね?」


あ、ヤベェ…迂闊なこと喋れねぇぞコレ……

なんだよコイツ…行動が読めなさ過ぎる…なにか洩らすと色々バレそうだし……


「おい…ギルド長さんよ」

「む?私はもうソレは辞めたのだ。リシアと呼んで欲しい。私もウイ君とシオン君と呼ぼう」


付いてくる気満々だよ……逃げるか?いやなんか追い付かれそうだな。いや影から何かされるよりはいっそ手元に居た方がいいか?だがバレたらシオンがどうなるか……


「ウイ君の心配はシオン君の事だろ?彼女に何かされないか不安だと言うなら……そうだな。私に奴隷紋でも刻むがいい」

「……奴隷紋?」


そういやこの街に入る時ジェバルもそんな言葉使ってたな…


「人種でありながら奴隷紋も知らない…か」


どんどん追い詰められてる気がする……


「奴隷紋とは奴隷に施される行動抑制魔術だよ。例えば主人に歯向かえば激痛が走ったり、逃げようとしたら死ぬとかね」

「それをおま「リシアだよ」……リシアに刻めと?」

「そうだね。そうすれば罰則はウイの好きに決められるし罰も好きなことに設定出来る。一晩中快楽に悶えながらも絶ちょ…」

「だから黙れってぇぇえ!」


え?何!?エルフって下品なの?ぬぁ!だから掌を舐めるなぁ!


「ぷは…で?どうだね?」

「最後に聞かせろ。リシアは俺らの事を調べてどうするつもりだ?何を得る?」

「純粋に興味だよ。好奇心、知識欲。君達を調べてどうこうするつもりなどないさ。100年程この街に居ると退屈でね。ギルド長なんてモノになってからは更に窮屈になってしまったんだよ…そして君達が来た。これはもう付いて行かないと後悔すると思うんだよ。だからお願いだ。私を連れて行ってくれ」


頭を下げられそして上目遣いで見られる。


うぐ……その目は卑怯だろ…


「…シオンはどうしたい?」


シオンにも意見を求める。


「シオンはどっちでもいいの…だけどパパはシオンのパパなの!あげないの!」

「ふふふ。分かったよシオン君のウイ君は取らないさ。端っこをちょっと貰うかもだけどね」

「むー…はしっこならいいの…」

「ふふ、ありがとう」


ちょっと!?端っこって何処っこよ!!

やだ怖いんですけど…!


「シオン君は可愛いな。後で美味しい物をあげよう」

「おいしいものなの!?食べるの!リシアありがとうなの!」


ヤバイ…シオンがオトされた…あぁ付いてくるの確定か…


そして不安な気持ちを抱えてギルド内の待合所へと戻って行った。


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