第20話 ギルド長
翌日、早速冒険者ギルドへと向かう。
昨日やらかして気まずくないかって?いやいやンなことより金稼がねぇとジェバルに悪いだろう?
早く宿に泊まれる位には稼がねぇとな。
…てかこの世界に落ちてから心のタガが外れかけてんな……何とかしねぇと。
そんな事を考えながら冒険者ギルドへとやって来た。
「パパ!しばらくはスキンシップはダメなの!」
「分かってるよ。だけどシオンやジェバルを護る時はやるぞ?」
「シオンがやるの!!」
フンス!と鼻息荒く力こぶを作ろうとする。
プニプニだな……あぁ癒される。
「ぴゃ〜!パパくすぐったいの〜!」
キャッキャッとはしゃぎながらシオンは冒険者ギルドへと先に入り。
「ぴゃあー!」
中にいた人にぶつかる。
「はしゃぎ過ぎるからだ…すんません。大丈夫ッス…か?」
「………………」
鬼人が立っていた。
あれ?昨日顔面の骨確実にイッてるはずなんだけどな…何で青タンで済んでんだ?
シオンを起こしながらフードを取る。
シオンの声でウイに気付いた受付嬢や昨日の顛末を知っている冒険者が固まる。
「……へえ?昨日の今日でもう動ける様になったんだな?ハッ流石鬼人様だな。劣種如きとは違うようで」
鼻笑いで皮肉を言う。
…あ…ヤベェ…速攻でやっちまったよ。さっきシオンにやらないって言ったのに……どうしよう?
内心で冷汗を流しながら必死で考える。
そして鬼人の口が開かれ
「お『おぃ!そいつが例の劣種かぁ?ハッ!しかもガキじゃねぇか!…フィドル!どんな卑怯な手を使われたんだぁ?それともてめぇはそんな家畜にやられる程の雑魚だったのかよ!うひゃひゃ!』」
昼から酒でも飲んでいたのか鬼人の言葉を遮った酔っ払いのトカゲ冒険者が鬼人に絡み出し、ウイに唾を吐く。
空気が固まる。
……家畜ね。
「さて………受付嬢さんよ?」
「ひゃ、ひゃい!!?」
「訓練所借りるぞ。おい…昨日の奴等もやるんだろ?」
冒険者が集まっている所に視線を向ける。
目を向けられた奴らが固まる。
「はぁ……ビビリかよ。あんだけ気合い入ってたのにどうしたよ?」
そこで裾を引かれそちらを見ると涙を溜めたシオンがいた。
そして今度は俺が固まる。
「………パパ…嘘つくの…?」
頭が一気に冷やされ、
「ひゃっひゃ!いいぜぇ?俺が1発でのしてやるよぉ〜。あぁその植人のガキでも貰っテォブルァ!!」
そして一瞬で沸点を越える。
シオンの名を出された瞬間トカゲ男の間合いへ入り拳を繰り出そうとしたがそこにトカゲ男はいなかった。
「…………」
代わりに拳を振り抜いた状態の鬼人が居り、トカゲ男はギルドの壁に埋まっている。
「………どういうつもりだクソ鬼?」
「……昨日は…………悪かったな」
そっぽを向いて謝られた。
何故だ?何かウラでもあんのか?油断でも狙って後ろから?いや依頼を受けた後ってのも…
昨日の態度とは180度違う鬼人に疑問が溢れる。事情を知ってる冒険者や受付嬢は勿論知らない冒険者も驚いている。
「オイ皆聞け!俺は昨日ここにいる人種のガキとやりあった!知ってるやつも居ると思うが俺はBランクの鬼人族フィドルだ!鬼人族のパワーを知らねぇ奴はいねぇよな?このガキはそんな俺と素手で1体1で戦い、無傷で勝ちやがった!証人もそこらに沢山いるぞ!」
昨日の決闘の話をする。昨日いた冒険者達も青い顔をしながら頷く。受付嬢もだ。
「今の俺は青痣しかねえがな…昨日の勝負が終わった時は顔面中骨折だらけで瀕死だった。ギルドで手配してくれた治療師に助けられ一命を食い止めた……鬼人の俺がだ!鬼人より頑丈な奴は居るか?」
冒険者達がざわめく。
知らない奴は信じられないのか顔を顰めるが、昨日の惨状を知ってる者達の態度を見て冷汗を流す。
……確かにやらかしたけどそんなに怖かったか?
軽く傷付いたのでシオンを抱っこし頭を撫でる。勿論ご機嫌取りもかねている。だからそのほっぺの空気を抜いて下さいシオンさん…
「……1つ聞くが、アンタはほんとに人種か?」
冒険者の1人が聞いてきたので答える。
「あぁ人種だ。疑ってんならその受付嬢に確認しろ。そいつが洩らしやがったんだからな」
「ひゃい!!ほ、ほんとに人種の方ですぅ!」
急に話を振られた受付嬢が驚き、怯えて泣きそうになりながら答える。
……ナデナデナデナデ。…あぁ癒される。
「では君は何故この島に来たんだい?」
後から女性の声が聞こえ振り向く。
うわ……美人……緑の髪に空色の瞳がマッチし凄い綺麗だ……結構細身だけど重心がやたら安定してるな…冒険者か?………てか胸無いな……スカートっぽいし女だよな?歳は少し上か?………もう成長しないんだろな…
「胸無いな…スカート履いてるから女だよな?とか成長止まってんだろな……とか思ってそうだね?…私は女だよ?」
はぇ!?何でバレたし!!
「何故バレたかって?……視線と表情がわかり易すぎるね君は」
なに!?…道理でシオンにやたらバレる事が多い筈だ。………そして痛いです。シオンさん。
脇腹を地味につねってくる。シオンに視線を向ける。
「パパのバカなの…」
ほっぺの空気がますます増えてリスのようだ。
「ふむ。植人の幼女にパパと呼ばせ撫でまくる……君は特殊な人なのかい?」
「ちょっ!?人聞きの悪い事言わないでくれませんか!?」
「なら何故種族の違う幼女にパパ等と?」
「シオンはパパに育てられて抜かれたからパパなの!」
「…………ほう?」
緑髪の女は形のいい顎に指を持っていき何かを考える。
「てか誰なん?いきなり特殊な人呼ばわりとか…」
「…ウチのギルド長です。ギルド長…仕事溜まってますよ?今まで何処にいたんですかぁ!」
受付嬢が代わりに答えた。
「ギルド長……?…え、こんな若い女が?」
どんな出世したんだよ…
「何故仕事が溜まってるんだい?リーナ君に任せたのだが?」
「リーナさ…副ギルド長じゃ最終判断出来ないヤツばかりたまってるんですよぉ!そのせいで苦情も多くて応急対応にも限界がきてますぅ!今も副ギルド長は走り回ってますよぉ!」
「ふむ。仕方がない…なら君たち2人は部屋にきたまえ。そこで話を聞こうじゃないか」
そう言い残しこちらの返事を聞かないまま奥に歩いていく。
「……ええと」
「ほら、早く来たまえ。あぁフィドル君は待っていてくれたまえ」
「お、おぉ…」
え?コレやっぱり付いて行かないとダメな感じ?それにこの女より明らかに年上の奴に何故に君づけ?
仕方なく案内されるがままに部屋に入る。
「さて、改めて自己紹介しようか。私はこの冒険者ギルドの長、リシアという」
「……人種のウイだ」
「シオンなの!」
小さめのオフィスの様な部屋に山の様な書類が積まれたテーブル。そこにリシアは腰掛け自己紹介を言いあった。
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