第18話 冒険者ギルド
鳥の鳴き声で目を覚ます。
あぁ……久しぶりのベッドに布団……いいわぁ。極楽っすわぁ〜。
「んゅ…スピー……」
久しぶりのベッドと布団をしばらく堪能し、シオンを起こさないよう布団を抜け出し顔を洗う。
「……ふぃー。さっぱりしたわー」
洗面所の窓を開け冷たい朝の空気を浴びる。
「あ〜清々しいわ〜」
「んゅ……?パパ………パパァ〜?」
おっと、冷たい空気で起きちまったかな?
「おーここにいるぞー。シオンも顔洗っとけー」
「んゅー…ソッチ行くのー…」
ヨタヨタと目を擦りながらこっちに来たので顔を洗い革タオルで拭ってやる。
「どうだ。サッパリしただろ?んじゃ着替えて下に行くか」
「サッパリなの〜」
シオンを着替えさせ用として拒否られたので先に着替えて待つ。
5分後四苦八苦しながら着替えたシオンの手を引き1階へと降りた。
「おはようジェバル。泊めてくれてさんきゅな」
「おはようなの!」
コーヒーみたいな物を飲み寛いでいるジェバルに挨拶しリビングへと入る。
「おはよう2人共。よく眠れたか?コルピは飲むか?」
「あぁ久々にぐっすり眠れたよ。……コルピ?」
そのコーヒーみたいな奴か?
「む?知らんか。コルピ豆を燻してソレを砕いた物に湯を潜らした飲み物だ。眠気が取れてスッキリするぞ?」
「お!んじゃ貰おうかな」
「シオンもなのー」
「お嬢さんにはまだ早いかな?モルチ乳を入れてあげよう。あぁそのまま朝食にするか」
そう言って席を立ち朝食の準備をしてくれる。
「あぁ俺も手伝うよ。流石に何でも任せちゃ申し訳ねぇ」
「シオンも手伝うの!」
「む?そうか。なら私は飲み物を用意するからウイはそのパンと卵を焼いてくれ。お嬢さんはテーブルを拭いて皿を持っていけるか?」
「「了解」なの!」
そして朝食を取り食休み。
俺とジェバルはコルピを飲み、シオンはモルチ乳をクピクピ飲んでいる。
ってかこれコーヒーじゃん。いや渋みの味とか詳しい豆とかは知らんけど…コーヒーの味だ。
「ギルドへは何時頃行くか?」
「俺らはジェバルの都合が良ければ何時でもいいぜ?」
「そうかなら行くか。今なら依頼の更新も終わり冒険者が減ってきた頃だろう」
「おけー。んじゃ案内頼むわ!」
「たのんまーなの!」
フードを被りシオンと手を繋いでジェバルの後を付いていく。
そして屋敷を出て15分位歩き大通りを歩く…
ん?向こうに見えるのは昨日の服屋か?
「ウイ。着いたぞ?」
ジェバルの声でそちらを向き看板が目に入る。盾に剣が縦に刺さっている。
ジェバルが戸を開き中に入り、俺らも追って入った。
「おーここがギルドかー」
正面に広いカウンターがあり受付と思われる人が4人いる。
「すまない。冒険者登録をしたい者がいるのだが…」
「いらっしゃいませ!登録ですね?後ろの方達でしょうか?あら?植人のお嬢ちゃんなんて珍しいですね♪」
受付嬢に確認され答える。
「あ、はい俺と…コイツもできますか?」
「はい!お嬢ちゃんでしたらF級になってしまいますが可能ですよ?お兄さんは15歳以上でしたらE級からで大丈夫ですよ?」
「え?16だけど…F級?E級?」
いきなり何を言っているのか分からない。
「あぁ、級というのは冒険者のクラスだな。SSS、SS、Sの特級からA、Bの上級。C、D、Eの下級そして見習いのF級まであり、15歳からはE級。それ以下はF級になり安全な近場での採取や街の人の手伝いをするのだ」
「あ……あぁ…私の仕事が…」
「す、すまない…」
受付嬢の仕事を取ってしまったジェバルを涙目で睨む。
……可愛い。ッ!痛い!シオンさん何故!?
「…パパ、エッチな目してたの…」
ジト目で睨んでくるシオン。
「それは気のせいだ…アタ!すんません!可愛いって思ったッス!」
「むー!」
「ほらお前ら…じゃれとらんで早く登録してしまえ」
ジェバルの冷ややかな視線と受付嬢の微笑ましい物を見るような視線に気付き慌てて駆け寄る。
「すまん。待たせた…えっと何すれば?」
「はい。それではこちらに手を入れてください」
ゴドッ!とカウンターに置かれた土偶の様な物体。
……え?コレに?というかナニコレ?手を入れる?何処に?てか禍々しいんですけど…
「…………えっと……」
「ココですよ!ほらお腹に穴があるじゃないですか?」
「すんません…なんかその腹口…牙生えてないスか?」
「大丈夫です。噛みませんから!ほら!ほら!」
受付嬢が腹口に手を突っ込み、抜いてはまた突っ込んで安全性を訴える。
「え、えぇー…」
かなりドン引くわソレ…なんか地球にも似たようなのあったな……何だっけ太陽のオッサン的な。嘘つきは手首喰われる的な…アレ?なんか腹口が笑ってる様な……
「あぁ、そうだ…すまない君。多分驚く情報が出るかも知れないが声を上げないでくれ」
「え?それは勿論ですよ〜腐っても受付嬢ですよ?プライバシーは守ります!」
「ならばほら早くしろウイ。お嬢さんが見てるぞ?」
はっ!そうだシオンが見てるんだ……ヘタレてる場合じゃねぇぞ俺!例え覚悟を決めて手を構えた瞬間に土偶の目が見開かれてもやらねばならねぇのですよ!!あぁ!めっさ怖い!!
「よ、よよよよし!やるぞ!?ほ、ほんとにやるぞ!?いいんだな!やめるなら……」
「パパ遅いのー!」
ドン!とシオンに押されて土偶に手を突っ込んだ。
そしてガブリと腹口が閉じ
「ぬぁぁぁぁぁぁああああ!?!?」
土偶の目が強烈に発光した。
「目がぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁあ!!」
「パ、パパーー!?」
そしてスポーン!と腹口から手が抜け出て横回転しながら床に受身を取る。
そして静まり返るギルド内に
「は…はい!ブ…ブフ…無事に、終了…ッしましたね!ッ!………横回転…ブフゥ!!」
「………………………」
おい受付ェ!!!てめぇ謀ったな!!
それにジェバル!!てめぇもだ!肩が震えてんの分かってんだよ!!
ちくしょう!なんだコレ!ギルド内に残ってる冒険者達もプルプルしてるだろ!!?あ、てめぇ!声上げて笑うんじゃねぇ!!
「パパ!だいじょうぶなの!?手あるのー!?」
「……あぁシオン俺は無事だよ。……心は濁りきっているけどな…」
唯一心配してくれるシオンに心を癒されながら起き上がる。
こいつら…どうしてくれようか?
「パ、パパ?シオンもアレやるの…?」
プルプルしながら俺の裏に隠れてしまった。そりゃそうなるわな…
「お嬢ちゃんはこっちね♪」
そういいながら取り出したのはデフォルメした可愛らしい馬のような置物。
「オイィ!?俺のと随分ちがうじゃねぇか!?」
「当たり前じゃないですか?あんなの小さい子供にやらせる訳にはいかないですよ〜」
「いや!?なら俺もそっちでいいじゃねぇか!?」
「さぁお嬢ちゃん♪これから大丈夫でしょう?」
シカトかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!
「んゅ?コレどこに手をいれるのー?」
「それはここねー」
くるりと馬の像を回し尻を向ける。
「……おい待て……まさか」
受付嬢が尻尾を上げて肛門を指さす。
「やっぱりかぁ!?なんだよ!?まともなモンねぇのかここは!!?シオン駄目だぞ!いくら何でも像とはいえ…」
「えいなのー!」
ズボー!!そんな音と共に馬の悲鳴が上がる。
「シオンさーーーーん!!!??ちょ!!えぇ!?躊躇い0ッスか!?」
「まだなのー?」
そのままグリグリするシオン。馬が痙攣してる気がする…
「ハァ…ハァ…もう少し…いえ、もう大丈夫よ。お嬢ちゃん♪」
ヌポンッと音を立てシオンが腕を抜く。そして俺はシオンの手を念入りに洗ってやる。
このギルドと受付嬢の性癖がヤバイのだけは分かった。そして周りの奴らも微笑ましい顔すんな!おかしいだろ!?この状況!!
「何なんだよこのふざけた場所……」
冒険者と言う名前にときめいた俺の心を返せよ。
「はい。出ました!…えっとウイさんで16歳の………え?」
受付嬢の目が俺を捉える。そして
「………人種?」
「おい!!」
ジェバルの怒鳴り声で我に帰る受付嬢。
「も、申し訳ありません!!」
「…あぁ、まぁいいっスよ。もう手遅れみたいだし。それにわざわざコレを被る必要が無くなったしな」
バサッとフードを降ろし顔を晒す。
そして周りの空気が明らかに変わった。他の冒険者の視線が歪み。顔を顰め、侮蔑、見下し、嘲笑するような……
受付嬢ですら何か堪えてる様な感じがある。
「なるほどね。これが今の人種の立ち位置か…」
「……すまないな」
「ジェバルが気にすんな。いつかバレるのは分かってたよ…で?なんか文句でもあんのかテメェら?」
そう言いこちらも見下した目で冒険者達を見る。瞬間ギルド内に殺気が至る所から発せられる。
「オイ?劣種如きが何いい気になってんだ?
角の生えたデカイオッサンが迫ってきた。
「なぁ受付嬢さん。ここって闘える場所とかあんの?」
「…え?…それは、訓練所があります…けど」
「人種如きにゃ使わせねぇってか?」
「………いえ」
すげぇな。あの明るい受付嬢が嫌悪感を必死に抑えてる。人種どんだけだよ。
「おいクソ…なんて種族だ?分かんねぇからクソ鬼でいいか…おいクソ鬼。ここじゃ満足に戦えねぇだろ?訓練所で力の差でも見せてやるよ」
「おい…ウイ!相手は鬼人種だぞ!?」
「関係ねぇし興味もねぇ。ナメられるのは我慢なんねぇし、シオンやジェバルにも似たような視線を叩きつけやがった。コイツら…躾てやるよ」
「おい…劣種の糞ガキ…冒険者にはな?決闘時に相手を殺しても責任に問われねえんだ?覚悟出来てんだろうなぁぁぁあ!!!!」
「いちいちうるせぇな…心配すんな。手加減してやるから殺しはしねぇよ」
「こ!!…こ、こ!コロ…!!殺…ス!!」
怒りで顔真っ赤な。大丈夫か?あぁ…鬼だからこんなもんか?
「いいから早く行こうぜ?」
そして受付嬢に案内され冒険者達と訓練所へと入っていく。
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