第17話 お年頃……?

シオンを背負いジェバル邸へと着いた。


「お?灯りが付いてるな。もう戻ってるか」


邸宅のドアを開け中に入る。


「ジェバルいるか?今戻ったんだが…」

「おぉ!いるぞ!スマンが手を離せないのでな。リビングで寛いでいてくれ」


声を掛けるとリビングの方から声が帰ってきた。


「んじゃおじゃましますっと」


そういや海外と同じでこの世界も靴のまま家に上がるんだな…


リビングのドアを開けるといい匂いがした


「お?いい匂いだな…まさかジェバルが作っているのか?」

「…んゅ…いい匂いなのぉ……シオンも食べるの〜…」


いい匂いに釣られシオンが目を覚ます。

流石シオンさん…食に対して貪欲になり始めたな。


「おお。スマンな。もうすぐ出来るからそこのテーブルへと座っていて来れ」

「了解〜。ほらシオンもシャキっとしろな」

「んゅ〜シャキっなのー」


目をグシグシ擦るシオンの手を引き椅子に座らせた。


「あり合わせの男料理で悪いが我慢してくれ」

「いやいや。有り難く食わせてもらうよ。…って結構旨そうじゃん!」

「ぴゃ〜!お肉なの!ゴロゴロなの!いい匂いなのー!」


サイコロステーキみたいだな!一口大に切られた肉にデミグラスソース的な物がかかっている。敷かれた鉄板から蒸発したソースと肉の焼ける匂いが絡まりヨダレが出てくる。

付け合せは新鮮なサラダとオニオンスープかな?それにパンか!白米が欲しいがこのパンもモチモチしてそうだ!


「いただきます!!」

「いただきますなのー!」


パン!と手を合わせシオンとがっつき始める。


「ハハハ。旨そうに食ってくれるのは嬉しいがあまりがっつき過ぎるな」

「いや!ムグ、だってこれ、ハグ、めっちゃうめぇよ!すげぇやジェバル!!」


噛み締めると出てくる肉汁に少し酸味の効いたソースが肉の旨みを更に引き立てる。

そしてあっという間に全ての料理が胃に収まった。


「ご馳走様でした!」

「ごちそうさまなの!」

「喜んでくれたようで何よりだ」


俺らは二人して膨れた腹を擦りながらジェバルが食べ終わるのを待つ。


「ふう…二人共今日はどうだった?街に出たのだろう?」

「あぁシオンの服を買いにな」

「そうなの!あとパパがスキンシップしたの!シオンもして勝ったの!」

「あ……」


シオンに口止めするの忘れてた…マズイかな?


「スキンシップ?何をしてたんだ?」

「いや…まぁーハハハ…」


たらりと汗が垂れる。


「パパがシオンをうる?って言ってた犬の人をどーんってやってばきばきしてたの!」

「ほう…それは許せんな」


ジェバルに青筋が浮かんだ。

あーやっぱマズったかな…いや平和的に解決とかさ?慣れてないんスよ…


「あはは…いやすんません」

「何を謝る?お嬢さんが攫われ売られそうになったのだろ?当然の事をしただけではないか。もし何もしないで帰ってきたら私が探し出し始末する所だ」

「え?始末って……殺すってことか?」

「無論だ。そのような奴は放置しておくと悪化し被害が大きくなるからな」


殺すという言葉を簡単に使う。


「………そうか」


喧嘩は慣れてる。脅迫や盗みなんてもっと慣れてるしそれが日常だった。殺人とレイプは駄目だ。

殺人は肉体を殺し、レイプは心を殺す。やり直しなんて効かないし取り戻す事も出来ない。よくわかってる。


「……そうだよな……異世界だもんな…」


徐々に濁りだす心。


「おい?大丈夫かウイ。顔が真っ青だぞ?」


あ、ヤベぇ…。久々に落ちるわコレ。


視界まで濁り頭の中が霞み始めた。

全てが暗く閉ざされていく。


「…パパ?…パパ、パパ!」


その声でハッとなり隣を見る。


「パパ!だいじょーぶ?」


涙ぐみ心配そうな顔で俺の顔を覗き込むシオン。

その顔を見て意識が晴れた。


「…あぁ大丈夫だ。心配させてごめんな?ちょっと疲れが出たみたいだ」

「今日はもう休んだらいい。部屋は二階に上がり正面の部屋を使ってくれ。明日約束したように冒険者ギルドへ案内する」

「あぁ、すまねぇ…そうするわ。明日は頼むよ……あぁそうだシャワーあったら借りてもいいか?流石に部屋を汚すのは悪い」

「あぁ、別に気にするな。だがシャワーでも疲れが多少取れるからな。ここを出て左の突き当たりだ」

「さんきゅ。ほらシオンもシャワー浴びるぞ?」


まだ心配そうな顔をしてるシオンを撫で着替えを持つ。

あぁ、湯船に入りたいが一般的じゃないのか…いや待て…また湯船の底が抜けたりなんかしたら……


「しゃわー?おいしいの?」


その言葉で吹き出しそうになった。ジェバルも笑いを堪えてるのが分かる。


肩がピクピク震えてるぞ?うちの子可愛いだろ?だがあげない!!


「んー暖かくて気持ちいいとこだな?」

「シオンも行くの!」


そしてやっとシャワー室へとはいった。


「よいしょっと……ほらシオンも早く服脱ぎな?………シオン?」

「ぴゃ…ぴゃー!ぴゃー!!パパ変態なの!!なんで服ぬぐのー!」


あ、そういやなんか初めてあった時も騒いでたな……てかシオンさん?指ちょっと開いてるの知ってますよ?


「服脱がないと入れないぞ」

「ならシオンはいいの!1人で入るのー!」

「ハイハイ…使い方とか分かんないだろ?ほーらはよ脱ぐ脱ぐ」

「ぴゃー!!ぴゃー!!パパえっちなの!!りょーじょくなの!!シオンのていそーのききなの!!」

「だからシオンさん?そんな言葉どっから仕入れてくんのよ…」


気にせずポイポイとシオンを剥いていきシャワー室へと入る。


「グズッ…けがされたの…お嫁にいけないの…パパのせきにんもんだいがとわれるの…」

「ごめんって。責任でも何でも取ってやるからはよ洗って寝るぞー」


そう言いシャワーヘッドを持ちお湯を出して温度を調整する。


「ほらシオン。グズってないでそこに座りな」

「グズッ。パパにはオトメの気持ちが分からないのー!って…ぴゃーー!!なんなの!!熱い水なのー!」

「おっとごめん!熱かったか?」


急いで温度を調整して温めにする。


「これでどうだ?熱くないか?」

「……大丈夫なの」


よし。この位か…結構温いな…植物系だから熱いのはダメなのか?気を付けないとな…


シャンプー……はやっぱりないか。この石鹸かな?


「シオン。ちょっと目を瞑ってな?目を開けたら染みるぞ」

「んー!」


石鹸を泡立てワシャワシャシオンの髪を洗う。


「ぴゃー!頭がモシャモシャするのー。だけど気持ちいいの。もっとなのー!」

「ハイハイ。お客さん痒い所はございませんかー?」

「ないのー。あ、おデコカユイの!」


おデコを軽く掻いてやってからシオンの長い髪を洗い流してやる。


「はい。次は体なー」


背中を泡だらけにして傷つかないよう優しく洗う。


「パ、パパ。くすぐったいのー!」

「ほいほい。んじゃこの位の力か?」

「そのくらいなのー。はーゴクラクなのー」

「おっさんか!ホントどこでそんな言葉を……んじゃ前なー」


背中を洗い振り向かせようとする。


「ぴゃー!!ぴゃー!!ぴゃー!!」

「ちょ!シオン!?暴れんなって!」


いきなり暴れだし困惑する。


「ダメなのー!まだはやいのー!シオンはまだあとちょっと純粋に生きたいのー!」

「人聞き悪ぃわ!ってそうか…分かった。ゴメンよ?前も俺が背中にやった感じで洗うんだぞ?俺もその間洗っちゃうから」

「わかったのー!」


そしてシャワーを浴びながら頭と体を洗い始めた。


あー生き返るわー…疲れが癒えるわー。だけどその内、絶対湯船に使ってやる!ちょっと怖いけど…


「パパ!パパ〜!」


久々のシャワーに感動して新たな目標を決めた時シオンの慌てた声が聞こえた。


「ん?どした〜ってブハハハ!!」


泡でモコモコになった達磨シオンがいた。


ヤベぇ!これはちょっと可愛い過ぎる!写メりてぇ!!


「ブハハハ!!ちょ!息…苦し…!待ってシオン……そんなん…ブフッ!ズルイわー!」

「パパのバカーー!!」


ズゴッ!とシオンの肘がミゾに入る。


「グブッ!!…おぉ…なかなかの衝撃……捻りが効いてる……な」


蹲りピクピクとしか動けない。


そんな騒動がありつつもなんとか洗い終わり服を着せて部屋に入る。


「おぉ…広いな…ってシオンさん?あのホントすんませんした。だからそろそろ期限直して貰えると……」

「いかりしんとーなの!シオンが困ってるのにずっと笑ってたの!パパはえっちな変態なのにさらにヒジョーでれいてつなの!」


必死であやし、頭を撫で、抱っこするがなかなか機嫌が治らない。


「明日はおいしい物やって上げるからさ?機嫌直してくれよー」

「…おいしいものなの?1つなの?」


釣れたー!単純すぎだろ!?この先心配過ぎるわ!!


「…3本かな?」

「3本なの!?ゆるすの!パパ大好きなのー!」

「……あぁ。ありがとな?俺もだよ。お休みシオン」

「おやすみなさいなの!」


600円位で釣れてしまうシオンに不安が大きくなったが取り敢えず今日は休もう……


ギュッと抱きつくシオンを撫でながら意識を落とす。

明日は冒険者ギルドだ……

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