第16話 初めての買い物
ジェバル邸を出てシオンと街中を歩く。
「凄いな…皆何かしらの亜人ばっかだ」
「ひとがいっぱいなの〜」
羽が生えてるのはジェバルと同じ鳥人なのだろうが人の顔や鳥の顔、鷹や鳩っぽい羽等様々だ。他には獣人。こちらも猿や犬、猫等様々で顔も人に獣耳が付いた奴か獣の顔をしている。
「はー獣耳とかアキバかよ…獣顔や鳥顔とかリアルで見るとこえぇな…虎とかもう…ね」
「あきばー?ケモノの人いっぱいいるの?」
「いやまぁ…変装してる人達がいっぱいいるな」
そんな話をしながら露店等を見て回る。
「お、シオンこれ旨そうだぞ?えぇと…ロックフロッグの串焼きだな。…蛙か。確かササミみたいな味だっけ?」
「カエルさんのお肉なの〜?」
「おう旨いって聞いたことあるぞ?…すんませ〜ん。おっちゃんこれ2つ頂戴」
「あいよ!二つで銅貨2枚だぜ」
「……すまん!今ちょい銅貨切らしててさ。銀貨でもいいか?」
「おう構わねぇよ?…ほれ釣りだ。」
銀貨を1枚渡して釣りが48枚か…銀貨を1万円としたら串焼き1つ200円か…差が大きいな…千円の硬貨はないのか?
幸子から貰った硬貨は銀貨3枚と銅貨27枚だった。ジェバルからは銀貨5枚と銅貨15枚……おい幸子……てめぇの株は俺の中で暴落しまくりだ。まぁ元からマイナスだが…
「パパ!これおいしーの!!あつあつでじゅーしーなの!」
「ん?どれどれ……おぉ…ジューシー…」
パリッと焼けた皮に齧った瞬間溢れる肉汁!しかしクドくなく後味がさっぱりとしていて何本でもいけそうだ!
「もう1本位食いたいが他のも見たいからな…我慢するぞ」
「がまんなの…ほかのもたべたいの!」
手を繋ぎながら歩く。シオンは楽しいのか手をブンブン振り回して歩いてる。
「そういやシオンは肉を食えるんだな?」
「んゅ?たべられるの!おいしかったの!!」
魔物だからか?いや…だけど草の魔物だよな…?まぁ肉食植物系と思うか
「ほらシオン。そんな手を振り回したら他の人に…」
「痛って!」
言い終わる前に犬の獣人にぶつかった。
「ってーなオイ」
「あ、スンマセン。ほらシオンも謝れ」
「ごめんなさいなの」
ペコリと頭を下げる。かわえぇ…
「あ?植人?珍しいの連れてんなぁ兄ちゃん」
「…えぇまぁ」
「おいソイツ渡せや」
いきなりシオンを渡せと言ってきた。
「…………は?」
「あ?よこせってんだよ」
「いやいや渡すわけねーっしょ?え?何?そーいう人?特殊な趣味の…」
え?何?確かにウチのシオンは可愛いけどさ?
「ンなわけねーだろボケ!珍しいから良い値で売れそうじゃねーか」
「……あ”?オイコラ…シオンを売るだと?舐めた事言ってくれんなぁ?」
一瞬で沸点を突破してしまった。
「お?やる気か糞ガキ。いいぜ?なんの獣人か知らねぇが身の程を教えてやるよ」
「吠えんな犬が。適当に歩いて棒にでも当たって死んどけ」
「パパ?スキンシップなの?」
「あぁそうだ。…シオンは少し下がってな?」
「パパがんばってなの〜」
周囲の人が周りを囲みだし観戦モードに入った。
「はっ!C級の俺に喧嘩売るたぁ運が無かったなオイ!……おらぁ!!」
踏み込みが素早い…
スウェーで避ける…が避けた先に拳が向かって来た。拳の引きと放ちもなかなかの速度だ。
「はっ。んなもん喰らうわけねーだろ?」
連打の拳を手の甲で触れた瞬間に回しいなす。
「チッ!舐めんなクソがぁ!」
ケンカキックを放ってきたので体をズラし躱す。そして相手に踏み込み首に向かって
「ッオラァ!!」
ラリアットが決まった。
綺麗に半回転し顔から地面に着地する犬人。
「さーてと…」
うつ伏せに落ちた犬人を仰向けにし跨る。
「ここからが本番だ。…覚悟決めてんだよな?」
「…ックソ」
仰向けのまま拳を放ってきたので頭突きで受ける。
「いでぇ!」
「はっ!んな力の乗ってねぇ拳なんかいたかねぇーよ」
犬人の鼻先を殴る。
「ガッ!」
「確か犬は鼻先が弱ぇんだよな?」
鼻先を集中的に殴る。
「ウチのシオン売るとかふざけた事抜かしてくれたんだ…二度とんな事言えねぇように躾てやるよ!!」
マウントで殴る。殴る。殴る。
「ッヒ…や…やめ…ガッ!やべで…グゥ…!」
無視して殴り続ける。
「……ふう。これくらいか…」
顔の原型が怪しくなってきた所で止めた。
「…ご…ごべん…だざい…ゆずじで…」
「許すか許さないかは今後のお前次第だな。またシオンに手を出そうとしたら次は手足を文字通り潰す。分かったか?」
「ば…ばい…」
さて……やっちまったよ。なんか周りが軽く引いてる気がする…
どうするか悩む俺に向かってシオンが走り出して来たので抱っこしようとしゃがみ腕を拡げそのまま
「ぐぉぅ!」
腹に頭突きが入って倒れる。
「次はシオンとスキンシップなの〜」
そんな言葉と共に俺に跨りポカポカ胸を叩いてきた。
「ちょ!シオンさん!?」
「たーなの!とーなの!」
ヤバイ…シオンがだんだんとアグレッシブになってきた…
ひょいとポカポカされながら抱き上げる。
「俺の負けだよ。シオンは強いなー」
「シオンの勝ちなの!満足なの!」
お?少し周りの空気が和んだか?シオンの空気の読めなさに助けられたな。
そのまま抱え、そそくさと立ち去る。
「シオン?そのスキンシップは俺としかしちゃダメだぞ?」
「そうなの?」
「あぁ俺とシオンの特別だ」
「とくべつなの!?わかったの!」
またあんな事にならないよう次は背負うか。
「いや…そうだな。シオン肩車してやる」
「かたぐるまなの!やったの!」
ぴょんと飛びつきそのまま肩車をする。
「高いのー!」
嬉しそうにはしゃぐシオンに口元を緩めながら再度街中を散策する。
「お、服屋発見」
店頭に服が畳まれていたのでシオンを降ろして中に入る。
「おぉ、色々あるなー」
「ふくがいっぱいなの!ヒラヒラしてるのー!」
2人で物色していると
「何か気になる物はありますかー?」
店員がニコニコしながら聞いてきた。
「あ、丁度良かった。この子の服を何着か見繕って貰っていいスか?」
「植人のお嬢ちゃんなんて珍しいですねー。えぇいいですよ?お嬢ちゃんこっちにおいで?」
「…パパ?」
「あぁ行ってこい。シオンの為に服を選んでくれるんだ」
「そーなの?おねがいするの!」
俺の裏に隠れ顔を出してたシオンだがすぐに笑い店員の元に駆けていった。
「腕がなるわね〜。その葉っぱの服もお嬢ちゃんに似合ってるわね〜」
「パパが作ってくれたの!シオンのお気に入りなの!」
「へぇ?なかなかセンスがいいわね…」
お気に入りか…ヤバイめっちゃ嬉しい…シオン用の葉っぱの服増やそうかな…
そしてシオンと店員が試着室に入っていく。時折中で店員の奇声が上がるが気にしない。
そして1時間程たち
「お待たせしました〜!」
「…………ハッ!」
トリップしかけてた……
「あ、あぁ終わったのか…」
「はい!シオンちゃん素材が凄くいいのでテンション上がっちゃいました♪ではシオンちゃん!どうぞ〜!」
カーテンがバッと開かれ中にいたシオンは
「…スピー…スピー…」
寝ていた。
「……アレ?」
「……寝てるな」
まぁ外に出てからずっとはしゃいでたしな…
「うん。可愛いな」
寝てるシオンの格好はスカートからパンツルックになっていた。黄色のキャミソールのインナーに胸から下にフリルがあしらってある。茶色のパンツは膝丈位でカーゴとカボチャパンツを合わせたような形をしていた。
「活発なシオンによく似合ってるな」
他のも見てみたいがシオンが起きてからにするか。楽しみだ。
「取り敢えず他のもまとめて買うよ」
「ありがとうございますー!えーとインナー10着と下着10着、ズボンとスカートが5着で銀貨4枚ですね!」
「おぉう…また大量に選んでくれたな…まぁ全部いただきます」
「是非またシオンちゃんを連れて来てくださいね♪」
一気に財産の半分近く持ってかれたが悔いはない!可愛いシオンの為だ!
そうして夕陽で赤く染まった道をシオンを背負いながらジェバル邸へと歩き出した…
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