第14話 出会い
暗くなった森…明かりは3つの月と煌めく無数の星
風がそよそよと吹き虫が奏でる涼やかな音
そんな森の中に微かな異物を感じ目を開けた。
「……シオン…起きろシオン…」
小声で呼び掛け小さな体を揺する。
「んゅ…ゃぁ…んゃむ………パパァ…」
うっすら目を開け寝ぼけ眼で俺にしがみつく
「シオン……起きろ。何かいる…」
「むゅ…なにかなのぉ?」
「あぁ何かは分からないが確実にいる」
だんだんと確信を持つ。この感覚だけは信じられる。
「ほら背中に乗れ」
「はーいなのぉ…」
シオンの重さを背中に感じ、シオンを支えてから移動する。
「危険な感じは今の所はない…人か?人なら様子を見て……っ!?」
咄嗟に木の陰に身体を滑り込ます。
「……いた。人…か?」
暗いのでハッキリと見えはしないが確かに人の形だ……ただその背中に違和感を覚える。
「羽根みたいなシルエットだな…」
確かに羽根っぽいが片羽根が折れ垂れ下がっている。
こちらに向かって来ているのか徐々にハッキリ見えるようになってきた。
「怪我をしているのか?」
左腕を抑え、足も少し引き摺り気味だ。
「……無視する訳には行かないよな…」
ザッ…ザッ…と足音が聞こえるようになり、シオンを木陰に降ろしてからゆっくり気の影から出る。
「っ!!ダレだっ!!」
声からして男か…
「怪しいものじゃない。落ち着いてくれ」
男は興奮しているのか殺気立っている。
「巫山戯るな!どこの誰とも知らん奴の言葉等信じられ……葉で作った腰布だと!?怪しさしかないだろうがっ!!」
すっかり忘れてた……
「チィッ!まさかフェルべの貴族共の…クソ!念には念をってことか…!」
まずいな…向こうで勝手に納得し始めた。
「聞いてくれって。俺はたまたまこの森で休んでただけでアンタの足音に気付いて……」
「黙れ!!老害の刺客如きに私を殺せると思うな!!」
腰から3分の1程折れた剣を抜きザッと距離を詰めてきた。
ヒュッと風を切り裂く音が聞こえた。
右腹から左肩にかけて斜めの剣筋が走ったが距離を詰めてきた時に全力でバックステップを踏んだお陰で空を斬る。
「うぉっ!あぶねぇ!!オイ問答無用かトリ野郎!」
「チィ!!ム…貴様…人種か!捨て駒にしても劣種を仕向けられるとはどこまで舐めれば気が済むのだぁ!!」
うぅわ…鳥野郎の怒りが限界突破してるんだけど……
「しゃぁねぇな…エモノ相手は慣れてねぇんだが…いいぜ?ボコって上下関係ハッキリさせてやるよ…」
「ほざくな劣種のガキがぁ!!」
先程より更に加速した踏み込み、そして剣が喉に向かってくる。
「頭に血が上りすぎだトリ野郎!!」
血が上りすぎて攻撃モーションが見え見えだ!
斜め外に踏み込んだ右足を軸に身体を半回転させ避ける。
同時に右腕で相手の左手を取り相手のスピードを利用し体制を崩すように引っ張りながら内側に自分の身体を潜り込ました。
「ッ!」
トリ野郎が息を呑み俺は口角を上げた。
左手を相手の股下に入れ右手を首に持ち替え後はそのまま持ち上げ…
「オーガ直伝の…パワースラムだコノヤロゥ!!!」
背中から地面に叩きつける!!
「ッッッガァ!!!」
ズドンッ!と重い音を立てトリ野郎が仰向けに叩きつけられる。
そのまま取った手を回し相手の身体をうつ伏せにして腕をキメて腰に座る。
「コラ…トリ野郎…テメェいきなり人見下したこと言ってくれたな?今の状態はどうよ?どっちが見下されてんだ?あ?」
「……ッ!……殺せ……」
「は?いやいや俺の質問に答えろ。なぁどっちが見下されてんだオイ?」
「……パパ……コワいの…」
ハッとしてシオンの方を向く。
プルプルして涙ぐんでいた。
ヤベェ!すっかり忘れてた……!!
今の俺って怪我人ボコって脅してるチンピラじゃん!!?
「あ……いや、あの…そ、そうこれには男同士にしか分からないスキンシップなんだ!……そう!シオンの頭撫でたりとか抱っこしたりとかそういうアレだ!シオンは女の子だからコワく感じちゃったんダナー」
トリ野郎から飛び降り必死で弁解する。
「むー!シオンも分かりたいの!パパ!シオンにもスキンシップするの!」
抱っこして頭を撫でた。
「ちがうのー!シオンもオトコドーシのスキンシップするのー!!…あ、だけどパパ…痛くしちゃヤなの…」
封印した扉の鎖が何本か弾けた。
はぁぁぁぁぁ!!!!駄目だ!!!封印しろぉ!!!補強材をもってこい!!足らねーぞぉぉお!!
「シ……シオンは女の子だから出来ないんだ。……いや…どうしてもって言うなら後10年後にでも……って違う!落ち着け俺!馬鹿!俺!」
見た目は8才位だけど実際はまだ0才…10年後経ったらそれは10才だけど身体は18歳……
「だから落ち着けよ俺ぇぇ!!」
シオンを降ろしに地面に頭をガンガン打ち付ける。
「パパ。それトリヤローさんなのービクビクしてるのーまだスキンシップなの?」
我に帰り俺が頭突きを食らわしてたトリ野郎がビクビクしながら白目を剥いていた。
「ヤッベェ!すまんトリ野郎!!シオン!ちょっとこっち来てこの葉っぱに鼻チーンしなさい!」
「んゅ?わかったのー!…ッ~~ン!」
鼻水葉っぱを受け取りトリ野郎の後頭部に塗り他にも手、足、羽根に添え木を付け塗りたくる。流石に足らないしシオンの鼻水はそんな出ない。
だがこんな事もあろうかと、昨日シオンを泣かしてしまった時に涙と鼻水まみれになった俺の体とシオンの顔を拭った葉っぱを取っておいた。
「とりあえずはこれで大丈夫か」
「パパ?なんでシオンのはな葉っぱをトリヤローさんにぬったのー?」
「ん?あ、あぁおまじないなんだ…怪我が早く治りますよーにってな?」
「そーなの?なんかばっちーのぉ…」
「それとシオン?トリ野郎をトリ野郎さんって言っちゃ駄目なんだ。シオンはトリさんって言いなさい」
「そうなの?わかったのー!」
そんなやり取りをしながらトリ野郎が起きるのを待つ。
陽が白んできた。
シオンは俺の胸に頭を預けて寝ている。
「ぅ…ぁ」
「よう…起きたか?身体の調子はどうよ?」
トリ野郎の意識が戻り声をかける。
「ッ!キサ……」
「おっとストップ。大声出すな。シオンが起きちまう…」
「くっ………………………何故助けた…」
「は?いや最初から助けるつもりで声掛けたんだが」
「それが何故かと聞いてっ…!……すまん」
大声を出しかけたトリ野郎を睨み溜息を吐く。
「…ハァ。あのな?俺はアンタの言ってるフェルなんたらの貴族も知らんしアンタの事ももちろん知らない」
「ならば何故劣種のキサマが私を助けた」
「あ?そんなのアンタが傷ついて………オイその劣種って呼び方は止めろトリ野郎…また叩きつけられたいか?」
「……悪かった訂正する」
「まぁ何しろ……ずっと地下にいて最近いきなりココに飛ばされてさ…この森を散策して休んでたらアンタが来て。この子以外の人なんて初めて見たから色々話を聞きたかったんだよ」
「地下からこのスライフォードに飛ばされただと?いや待て…その娘以外と初めてあった?他にも色々突っ込み所が多すぎるぞ…」
まぁそうだよな。俺も既に相当な回数突っ込んでるもん。
「ともかくだ。あー……」
「………ウイだ」
「そうか。ウイ殿、助けて頂き感謝する。私はジェバルという。話が聞きたいと言っていたな。なら私の住む屋敷で詳しく聞こう…今回の詫びと礼もしたいのでな」
「それは助かる。あ、ウイでいいっスよジェバルさん。堅苦しいのは苦手なんスよ」
「そうか。ならば私もジェバルと呼んでくれ。それとその舎弟のような喋り方もしなくていいぞ」
「あ、マジで?ならこれで話させて貰うわ。よろしく。ジェバル」
「あぁよろしく。ウイ」
一先ずは互いの信用を得られたのでよしとする。
眠りこけるシオンを背負い直しジェバルの後をついて行った。
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