第11話 収穫そして親となる

「キィャァァァァァァァァアアアアアァァァァァァァァ!!!!!」


音の衝撃が体に叩き付けられ吹っ飛んだ。


「ッッッ!!!」


音!?これが!?めちゃくちゃいてぇ!!あぁぁうるさい!!!頭が割れそうだ!!!



地面に転がり耳を必死で抑えが効果はあまり無い。

あぁぁあ!!頭が痛い痛い痛い!!止めてくれ!!


俺も叫んでる。叫んでるはずなのに少女の叫びにかき消され聞こえない。


この声を何とかしないとこのままでは発狂してしまう……


音波は少しずつ弱まって来ている。よし、流石にこれだけ叫んだら息切れするよな!


歯を食いしばり起き上がる。そして叩き付けられる音波に必死に抵抗しながらジリジリと滲み寄る。


耳から血がでる。ボヤけた思考を根性で縫い止める。



苦しい。早く…早くこの音を止めないと…!

涙と鼻水に血が混じる。


歯を食いしばり叩き付けられる音波の中を徐々に距離を詰める。



そこで少女の目が俺を捉えた


「ぴっ!」


少女が息を呑んだ。


音波が一瞬止まりこのチャンスを逃すか!と残りの力を振り絞り走り出す。


そして後数歩の距離まで近づき少女に手を伸ばした瞬間



「ピャァァァァァァァアアア!!!!変態なのぉぉぉぉぉぉお!!!!」


ゴウッ!と音の衝撃が叩き付けられ吹っ飛ぶ。頭の痛みよりも更に強烈な痛みを感じて徐々に意識が落ちていく。


根性で縫い止めていた意識が解けに暗くなっていく視界で見えたのはヘタリこんだ状態で右腕を振り抜いている少女だった。





頬に水滴が落ちポツポツと落ち、流れて唇の隙間から口内に入る。



「ぁ…ぅぅ」


甘い味がする。けど少し苦い…?


あれ?俺は何をしてたんだっけ?

確か…栽培した植物を抜こうとして…それから


ポツポツと水が滴る。


口に流れ蜜の様な甘さが身体を温かくする。


目をうっすら開けた。


少女が俺を覗き込み涙を流していた。


「パパ…パパ……ごめんなさいなの……起きてぇ…死んじゃヤなのぉ」


ポロポロと涙が俺に落ちてくる。


めちゃくちゃ可愛い……ぱっちりとした目に赤い瞳と長いまつ毛。ちょこんとした鼻に小さいけどぷっくりツルんとした唇。顔というキャンバスに見事な配置がされている。

泣き顔も可愛いが笑顔はどれだけの破壊力があるのだろう。


少しの間惚けていた。


そしてこんな少女を何時までも泣かしていてはいけないと思い目を開け声をかける。


「…ぁ…大丈夫…だから泣かないで」


少女の目が見開く。


「パパ…!パパ!良かったの!起きたの!」


「え?パパって……?いやまぁ大丈夫だよ」


上半身を起こし体の具合を確かめる。

よかった…俺のジョニーは無事みたいだ…

ん?それどころか痛みがない?しかも体の調子がいいような…?


プルプル震えて涙を流す少女の頭を撫でた。

そして少女は俺の胸に飛び込みわんわん泣いた。



暫く少女の頭を撫でよしよしとあやす。


やがて少女が泣き止んだのを確認しそっと胸から離し少女をみる。


大体8才くらいか?顔はさっきも思ったがとても可愛らしい。いや、今は涙と鼻水でブチャブチャだが…

頭にはリボンみたいな紫の葉っぱが2枚。

髪は白く地面につきそうな位長く頭にちょこんと乗った赤い花がチャーミングだ。

耳は少し尖ってるんだな。背丈は俺の腹ほどで色白の肌。そして全裸だ。


少しの間観察してると少女がハッとした顔になり赤面し両手で目を隠す。


「パパ変態なの!裸なのぉ!乙女になんてもの見せるのぉ!」


クネクネ身体を揺らし時折指を少し開きまた赤面しクネクネする。ダンシングフラワーみたいだ。


今の自分の格好を思い出し急いでゼンマイの葉でまわしを作る。


「ごほん…えっと、君の名前はなんだい?なんで埋まってたの?お父さんとお母さんはどこにいるの?あと俺はパパじゃないよ?」


まだクネクネしてる少女に声をかける。


「??名前はまだ無いの。埋まってたのはパパが育ててくれたからなの!ママは知らないけどパパはパパなの!」


「え?ちょ…ちょっとまって!そしたら君はやっぱりあの種から育ったの?え?俺未知との遭遇?」


「しかもこの歳でパパ呼ばわりはちょっと……」


まだ16歳のサクランボ少年よ俺?

それに人が生える種とか…流石異世界…


「……異世界なんだからこれくらいの事はある…そう異世界だもんな」


自分に言い聞かせ無理矢理納得させる。



「パパ名前頂戴なの!」


ピョンと抱きついてくる少女を受け止め頭を撫でる。

ヤベぇ可愛い過ぎる…


名前…名前か。種から生えたんじゃ人種じゃないよな。なんて種族だろう。


そんな事を考えながら撫でていると


名前 なし

年齢 0才

種族 マンドラゴラ種


パッとそんな表示が浮かび上がった。


うぉっ!びっくりした!…あ、もしかしてこれ手袋の効果か?確か情報強制閲覧(接触型)とかあったな。触れて知りたい事を念じればそれが表示されるのか…


「マンドラゴラ種…マン…いやそれだけはダメだ。ドラ子…ゴラ子…可愛く無いな」



少女の顔をみる。二ヘラっと笑いかけてくれた。あぁプリチー!いやいや落ち着け俺!

ええと白い髪、赤い花…紫の葉っぱ…紫…


「……紫苑」


「うん……いいと思う。君の名前はシオンだ。いいかな?」


少女の顔がパァっと満面の笑顔になった。


「シオン…シオンなの!シオンはシオンって名前なの!!パパありがとうなの!」


ギュウッと更に抱きつく力を強め自分の名前を何度も呟く。ヤバイ…いけない世界が開きそう……しかしその扉は開いてはいけない扉だ!鍵をかけろ!鎖で縛れ!


自分の中の危険な扉を開かないよう全力で封印した後に息を整えた。



「よし!じゃぁシオン…まずは君の服を作ろうか?」



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