第9話 2度ある事は……

「よしっと。これで全部確認は終わったよな?」


情報を全部確認して表示を消そうとする。


「…どうやれば消せるんだ?」



……消えろ


念じてみるとスゥー…っと消えた。


「さて、進むか」


だんだんと増えてきたゼンマイの1つを毟って食べながら起き上がる。






1時間程歩いただろうか。


地下に落ちて見た結晶の泉とは周囲の様子がガラッと変わっていた。


光苔は少なくなっているがある。


ゼンマイは数を増やし俺より大きなものから足首位なものまで沢山生えてる。


結晶はあまり見なくなり、あっても膝位の小さいものしかなかった。


そしてこの自然?の風景に違和感のあるものが…



「柱……だよな?」


加工しないと丸い柱なんて作れないだろう。

そんな物がポツポツと立ち、折れた柱が転がっている。


「向こうに続いてる…」


柱は規則性を持って配置されているのか案内するように続いている。


柱に沿って歩く。



「建物?」


歩き続けた先にうっすらと建物の様なシルエットがあった。


自然と小走りになる。心臓が高鳴り、新たな発見に期待を膨らます。


「神殿……ぽいよな?」


壁に貼り付いた様な神殿が立っていた。

神殿は相当古いのか所々が風化しヒビ割れていたが倒壊する心配が無くなるほど立派な作りをしていた。


自然と足が動き壊れた扉をくぐって行った。


「うわ、中もボロボロだな」


入って通路を進んでいるとに大きなドーム状のホールみたいな所に出た。真ん中に直径が10m位の穴が空いており地面に複雑な模様が壁から穴に向かって囲む様に掘られている。


「この模様どうやって掘ったんだ?」


模様の溝に指を入れると微かに水が流れていた。


暫くエントランスホールを見てまわる。




「あの穴に近づきたくないな」


そしてまだ確認していない穴を見てそう呟く。


「よし!あそこは覗かない」



そう決めホールから出ようとした時視界の端で何かが動いた。



そちらをみる。



人形がいた。片腕が無く、体にヒビが入り、顔の目の部分に濃い青石が1つ埋め込まれ光っていた。体には鎧だっただろう残骸が多少残っている。


動きが遅くカクッカクッと動きながらこちらに向かってくる。



「……逃げた方がいいよな」



徐々に近づいてくる。身長は俺と同じかちょっと高いくらいだ。


入口に戻ろうと駆けそうした時



カクッ…カクッカクカクカクカクカカカカカカカカ!!



人形が走りしてきた。頭もカクカクさせながら


「キモい!!」


走り出すが遅過ぎたらしく人形に先回りされた。



ズザザァっと結構な速度で走ってきたのか片腕まで地面に付けブレーキをかけ止まる。



「ッ!」


自然と構える。人形の腕や足の挙動に集中しながら後ずさる。


そして人形がゆっくりと立ち上がり俺を見る。


「…ハ…ハハイィ…ジョ…シシシ…ママス」


ヒュッ!


「ぐぶっ!」



風切り音が聞こえた瞬間、腹に蹴りを受けた。


予備動作が無かった!?…いやそうか生き物じゃないんだ…筋肉の動きなんてあるはずが無い!



「っ!ゥゲホッ!ゲホ!オェ…いてぇ」


蹴りで飛ばされ床を転がる。




痛みを堪え胆汁を吐いてから立ち上がる。



「いってぇなオイ……予備動作がないんならそれ用の喧嘩の仕方があんだよ」



構える。そして見るのは全体。焦点を少しズラして人形にピントは合わせない。息を整え、思考は空白に。



ヒュッ


「フッ!」


チッ!

腕が首をかする


ボヤけた人形の腕に違和感を感じた瞬間体を横にズラす、首があった場所を人形の腕が空を切る。


「もらったぁ!!」



スピードの乗ったままの腕を掴み人形の体を腰に乗せ一本背負い。



ドガッという音と共に人形が地面に打ち付けられる。癖でそのまま腕を捻り関節を外そうとした。


が掴んだままの人形の腕が俺の葉っぱのまわしを掴む。


その腕に引っ張られ俺は体制を崩した。



「クソ!往生際が悪ぃぞ!」


人形は己の体制など関係ないとばかり凄い力で引っ張ってきた。



ブチッ!!!



「え……」




人形の手に握られた葉っぱのまわしが視界に入った。


そしてまわしが千切れたことで引っ張られた力でふっ飛んでいる俺と近づいてくる大穴…



「…あ…あぁ」




またか




「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!!」




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