第7話 親のココロ、子のココロ
メッセージを何通か読むたび俺の体は感情のままに動く。
俺の周りに散らばる残骸…そして一定範囲から姿を消したゼンマイ達……
そこら中に散らばった破片の断面からは汁が流れ大地へと吸い込まれていた。
俺の全身も汁にまみれ肩まで伸びてる髪を伝い1滴また1滴と地面を湿らす。両膝に手をつき肩を揺らして息をしていた。
「ハァ…ハ…ゼハァ…………83件開いて幸子と母親の日常会話?的なものと俺の煽りのみって………」
ちなみに俺を散々バカにしてくれた奴は幸子と言うらしい。
名前が発覚したのはこのメッセージだ。
メッセージ3
【幸子へ。かつ丼了解。帰り道に豚肉と卵買つてきてちよだい。あと明日のぱんと冷凍食ひんね。お金は後で渡します。(っ´ω`c)キャ】
お母さんからの間違いメッセージ……不慣れな文字入力と顔文字がちょっと微笑ましい。
このメッセージが俺にきたという事は幸子にはきっと届いて無い筈だ。
返事の催促がお母さんからたくさん来てる。
幸子からも間違いメッセージが沢山ある。
せめて幸子の晩飯は豚と卵抜きのカツ丼になってくれるのを切に願う。
「あと3件か……もういいや流し読みして寝よう……」
メッセージを開く。
【この世界はゼプニス。貴方の住んでいた地球とは別の時間、時空にある隔離された世界です。
今回貴方にこの世界の発展と驚異の排除に貢献して頂きたいと思いこの世界へと招待した次第です。
この世界の理と貴方がいた世界とは理が多少違います。
貴方の世界では人類は頂点に近いものでしたがこの世界での位置はほぼ底辺です。
この世界は魔素というエネルギーが溢れ、魔法という超常があり様々な亜人類、魔人類、魔物が居ます。これらは魔法を使い特殊な能力を持ち、身体能力がとても高くとても強靭です。
只の人類は魔法が使えず、身体能力も普通な為、劣等類と呼ばれ使役され、蔑まれ、消費され只の動物と同レベルかその上位にしか判断されません。
人類の国はありますがそれも少なく小さいものが殆どです。
人類は知能が高く、文明レベルを上げてくれる唯一の存在ですが、このままでは淘汰され滅びてしまうでしょう。
人類が滅びた後の世界では発展、驚異の排除が出来ず、世界のレベルの衰退、そして他の神々から私がバカにされてしまいます。
ただ人間類以外の存在を滅ぼしてしまうと調子に乗って世界を破滅に導く存在なのでやりすぎてはいけません。
まぁ簡単に言うと人類をフォローして、調子乗ったらシバいて世界の驚異を防いで世界の文明レベルをガッと上げること。そうしたらあの嫌味たらしいハゲ神とか牛乳神とかを見返して泡とか色んなものを吹かせてやることができるの!よろ〜】
………
………………人類がやべぇ
いや別に幸子がバカにされようが泡とか色んなものを吹かせられるのは別にかまわねぇけど…
人類の滅亡とか何のアルマゲドンだよ。弱肉強食が基本の考えなのか?それに魔素?魔法?何かのアニメかなんかかよ…。
まるこめはー!とか皆の現金をオラに分けてくれー!とかそんなん?後半違うか……
だけどコレってあれだろ?無賃労働だろ?俺のメリットは?てかいきなり拉致るとか誘拐だよな。元の世界に返せよ。なんで俺だよ。嫌だよそんな人類救えとか……
俺16よ?中卒だから学何てねーよ?無理無理…はよ帰せ幸子。頭ん中幸子にも程があんぞ?馬鹿だろ?あぁメッセージの中身とかバカっぽかったもんな。きっと額ら辺から声出すようなかん高くてキャルーン☆とか言ってんだろうな。うわ、関わりたくねぇ…飴ちゃんあげるから向こうで遊んでトラックに轢かれて下さい。
テテーン♪
【新着メッセージが4件あります】
……メッセージ
【呪うよ?】
〔付属品があります〕
キャルーン♪
Ex【幸子の憤怒】を手に入れました
…着信音が強制変更されました。
…全ステータスが1で固定されました。
…称号 【変態葉っぱ】を取得
…体色が変更されました
っべぇ聞かれてた………!!てかもう呪ってんじゃねーか!!しかもキャルーン♪って言ってるじゃん!!!!え?嘘…1で固定ってちょっと………
称号はてめえのせいだろが!!!服よこせ!!!
うおぉ!!皮膚が!!紫と緑のマーブル模様とか!!?キメェ!!!
「マジすんませんっした!!女神ッス!!マジもうアイドルとか馬の糞みたいに思えるくらい美しい幸子様!!!喜んで使命受けさせて頂きますんで!!勘弁して下さい!!」
キャルーン♪
【言ったな?】
「ウィっす!!誓います!!心に刻んだんで!バリやるッス!」
【よろしくね♪】
〔付属品があります〕
キャルルーン♪
Ex【幸子の加護】を手に入れました
…Ex【幸子の憤怒】が解除されました
…ステータス固定が解除されました
…体色が変更されました
…ステータス小上昇効果
…スキル:魔素適合を手に入れました
…スキル:言語適合を手に入れました
…ブレインデバイスが追加されます
キャルルーン♪
称号【葉っぱ横綱】を手に入れました
…植物魔法上昇効果
…体術スキル上昇効果
…ステータス+5
キャルーン♪からキャルルーン♪になったよ…地味に腹立つわ…
おお皮膚の色が戻ってきた!……戻る様子もキモイ…
なんか色々手に入ったっぽいけど残りのメッセージを先に読んじゃうか……
【新着メッセージが3件あります】
1件目…
【ほいよ】
〔付属品があります〕
投げやりだなおい……
キャルルーン♪
【ブレインデバイスにヘルプが追加されました】
お?さっきの手に入った中にそんなのあったな。
まぁ後で……
2件目…
【これはオマケね】
〔付属品があります〕
キャルルーン♪
【葉っぱの袋を手に入れました】
ん?目の前に袋が落ちてきた。
……葉っぱの袋……幸子は俺に葉っぱ系しか装備させたくないのか…………?
はぁ、最後の開くか
3件目…
【うちの娘がご迷わくをかけてごめんなさいね?せめて貴方がこの世界で幸せになれるよう祈らせて頂きます。】
〔付属品があります〕
キャルルーン♪
Ex【偉大なる母の加護】を手に入れました
…ステータス特大上昇効果
…スキル:成長促進を手に入れました
…スキル:菜植賢美を手に入れました
…スキル:土魔法を手に入れました
…スキル:木魔法を手に入れました
キャルルーン♪
称号【大地母神に祈られし者】
…土と植物に関する魔法の効果特大上昇
…ステータス+50
…休息時回復効果倍加
「おかぁさーーーーーん!!!!!!」
……あ……あざぁぁっっす!!!!!
お母さんの加護が凄すぎて幸子がマッハで霞んだ………お母さん大地母神だったんだ……俺泣かない!
あれ?葉っぱ袋が増えてる?しかも質が凄い良さそう………
幸子の袋を足でどかし質のいい袋を開ける……
「!!!!これ……は…………」
頬を一筋涙が伝った
そう…中に入っていたのは
「………カツ………………丼」
ホッカホカである。今まさに作ってくれた様な湯気が立ち、出汁の匂いと炒めて茶色く透き通った玉ねぎ…そして主役である黄金の衣がピン!と立ちその周りを同じく黄金の様な卵でとじられているカツ!!これが本当の母親というものの料理なのだろうか……
この世界に来て緩くなった涙腺から溢れる涙を止めることを諦め、俺は箸を取り正座で手を合わせる。
「いただき…………ます!!」
幸子よりも母親である大地母神に強い忠誠を誓いカツ丼へと箸を進めた
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