第3話 地下、幻想世界


自分の叫び声で目を覚ました。


「ァァ!!!ァァアア!!クソ!クソクソ!!分かってたよ!!リアルだろ!!!ここが!!!」


涙と鼻水でグチャグチャな顔を掌で拭う。


「あぁ!ちくしょう!死なねぇぞ!!生きてやる!泥水啜ろうがウジ食おうが!!生き抜いて帰ってやるよ!!!」


怒りのままに地面を何度も殴る皮が剥け血が吹き出し、背中の激痛がぶり返す。


「ってぇ……クソ背中どうなってんだよ…見えねぇし痛ぇし…え?大丈夫だよなコレ?化膿して熱出ないよな…?」


虎とは別の死の危険がまた出てきたので何か手当できそうなものとこの世界に来てから何も飲み食いしてなかったので食料を探す為に地下を散策することにした。


「…暗ぇ」


地下を歩く……通路に生えてる苔みたいなのがうっすら光っていたので多少は見えるがアチラの非常用電灯等以下の光源だった。


通路は1本道で多少曲がりくねっていたが170cm程の俺が余裕で立って歩けてるくらいの広さはあった。





ズキズキとした痛みを耐え20分程歩く。

ふと前方に明かりが見えた。


「おお!外か?」


体にムチをうち早足になり光の元へ歩きだす。






「…………すげぇ……」


大木にも負けず劣らずな風景が広がっていた。


広さはどれくらいだろう…高さは東京タワーとか建ってもまだ余裕がありそう。

横幅は分からん。ずっと続いている。

そして天井から地面に掛けて光る苔が覆い、苔の間から伸びる大中小の結晶、結晶、結晶の海。

その間を水が流れており水下にある苔が水面の波に合わせ揺れ、その光を水晶が屈折させ光の帯が漂っている…そんな幻想的な風景が広がっていた。


どれくらいそこに突っ立っていただろう。10分のような1時間のような気もする。


「写メりてぇ…………いや、これは撮った写真じゃここまでの感動はないか……あぁなるほど……写真家が命をかけてまで秘境や山に登るのはこのせいか……」


胸に残る熱さとこみ上げてくるものが写真ではこの半分以下だろうなと思いながらこの景色に足を踏み入れる。


自重で折れただろう結晶の断面に足をかけながらゆっくり乗った。



「俺が乗った位じゃ崩れないか……よかった……。あぁやっと水が飲める!!」



安全を確認し、幻想的な風景で一時忘れてたとはいえ体は水分を欲していた。


両手で掬い口もとまで持ってきたがそこで手が止まった。


「待て……この水は大丈夫なのか?こんな謎な結晶がポンポン生えて、謎の発光をしてる苔が水中にあんだよな……」


俺は生き抜きたい!向こうに帰る為には何よりこの世界を生き抜く事が大前提だ。だけどこのままでは背中の傷より早く水も飲めずに死ぬ…何か……せめて多少でも安心出来る材料があれば……

そう考え、すくった水を1度捨てる。

思わず手で救ってしまったが手には痛みやヌメリ等が無いので強酸や強アルカリ性では無さそうだ。後は溶け込んでいるモノ……ジッと水面を覗く


ん?何か動いた…


「あれは…魚か?」


確かにいた。魚っぽいがよく見えない。

ただ生き物が住んでいた。これだけでも多少は安全だろうと意を決し水を掬い一気に飲む………前に下でちょっと舐めた。


いや!だって!怖いじゃん?…やっぱり


「ん?…んん…大丈夫……そうかな?」


そして今度こそ一気に飲む……飲む!!飲む!!!


「ぶはっ!!うめぇ!水!うめぇぇ!!」


手で救うという手間が惜しくて水面に顔を突っ込んで飲んだ。



「あぁ生き返った……」


たらふく水を飲み、多少空腹を紛らわせる事にした。


「やっぱり魚っぽいの見ちゃったからな……食いたいよな……」


流石に今この状態で水に潜って漁とかは無理だ。



「背中の傷がかなり気になる……ジクジクした痛みが収まらない……」


取り敢えず傷口をキレイにする為、浅めの場所を探し背中の傷を洗う。


「っ!っ!!……っっ!!」


目の中で火花が散る位痛かった。

歯を思い切り食いしばり我慢する。


「顎が痛い……」


息も絶え絶えで水から上がり砕けた結晶に倒れ込む。


ここで疲れのピークが来たのか体に力が入らず視界がブラックアウトしてきた。



「あ…あぁヤバイ……せめて…もうちょっと安全……な…場所……を……」



安全な場所を探さないと危険だと思いながらも指1本動かせずに意識が途切れた…

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