さあ、行こうか
カズヤが童貞なのかということが若干気になりながらも、サカイは自分の装備を選び始めた。
ここは初期装備屋ではあるものの、割と良品が揃っている。サカイの口角も自然と上がっているように見えた。
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一方その頃マイマイたちは、相変わらずショッピングを楽しんでいた。
ここは街の中でも一番大きい服屋だ。様々な種類の品物が用意されており、セレブから謎センスのやつから気難しいマダムまで大満足の品揃えなのだ。
四人はすでに一人5種類ほど上下セットで買っていた。フィア、べマーラ、メーナの三人は大満足といった顔をしていた。しかしマイマイだけが不服そうに言った。
「え、ちょ、なんでみんなそんなに満足げなのよ。まだまだこれからだよ」
「マイちゃん、もうやめよう?」
「何でなんでなーんで!!もっと買おうよ!!」
マイマイからは一向に引く気配がしなかった。
そんな姿を見たフィアが演技でとてつもなく冷めた顔をして言った。
「いやマイマイ、私たちもういい」
その横でメーナがうんうんと首を縦に振った。
自分と周りとのあまりの温度差を痛感したのか、マイマイがとても悲しそうな顔をし、小声でうん…と呟いた。
フィアは、メーナの見せた切ない顔を感じ取ってマイマイにサインを出したのだが、当然のことながらマイマイには全くもって知る由もなかった。
そんな時べマーラが気まずそうに並んで歩くアルトとスターを見つけた。あまりにも気まずそうだったので、あの時に止めなかった自分を心の中で責めた。そして、
「ねえマイちゃん、あそこで歩いているのって団長とスターさんじゃない?私たち買い物終わったし声掛けない?」
「そうね。さすがにずっと放置するのはなかなかのデスゲームね」
「いや、デスゲームて…」
フィアがつい苦笑いしながらツッコミを入れる。
その間になんとメーナが二人に声を掛けていた。
「「「えーーーーーーーーー!?」」」
三人が驚嘆して声を荒らげる。メーナの突拍子のない行動にただただ驚いていた。
「「えっ?」」
アルトとスターは困惑という意味で驚いていた。ただただ疑問符が脳裏に浮かぶ。
メーナの表情はそんなこと御構なしといった顔で言った。
「お二人さん、一緒に休憩しましょう。えーーーっと…、」
「サカイ」
「サカイさんたちが戻ってくるまで!!」
メーナが優しく微笑む。それはアルトとスターにとって女神に微笑まれる様な気持ちだった。
「あそこのベンチで休みましょう」
「はい!!」
「喜んで!!」
「二人が隷属させられてるみたいで凄い気持ち悪い」
フィアとマイマイは互いに顔を見合わせ微笑み合う。考えたことは全く同じだった。
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アホの子二人とガールズたちはサカイ、カズヤ、マリトの三人が戻ってくるのを待っていた。さっきじゃんけんをして負けたアルトが買ってきたアイスを頬張りながら。
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一方のサカイはというと、狭い店内を何回も何回もぐるぐる回り、理想の武具を探していた。
「サカイさん、もう気に入るの見つからないですって」
「うるせぇ!見落としがあるかもしれないだろ!」
「なんすかそれ。たまにいるやつか!!」
「ごめん。ツッコミが分かりづらい。マリトくん分かった?」
「いえ、全然」
その時サカイから指導が入った。
「いいかカズヤ。いくらお前に言葉の知識があったって、相手に伝わらなきゃ意味が無いんだぞ。特にツッコミはそうだ。何故ならばツッコミは瞬時に聞いた人に衝撃を与えなきゃいけないんだからな。分かったか?」
「…、はい。ごめんなさい」
「HAHAHA!!何謝ってんの?意味分かんないんだけど」
「この人メンド
「なんて?」
「声に出てたかぁ…」
サカイはカズヤに指摘をしてとても満足した様子だった。気分が良くなったのか、
「よし、さっきはすまなかったな。みんなのところに戻るか」
「急に態度変わりましたね」
「ま、俺は超絶良いやつだからな」
「あ、はい」
カズヤはサカイの態度に若干引きながらも、スルーした。
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「皆さん大変お待たせしました」
しばらく経ってカズヤたちがマイマイたち6人に合流した。
フィアがカズヤの腹に拳を入れながら遅かったと笑う。
全員がある程度落ち着いた印象を受けたアルトが見計らったかの様に言った。
「さて、取り敢えずメーナさんの家がある街まで行くぞ。そこで情報を集めるんだ」
その言葉を聞いた瞬間、全員に稲妻に打たれたかの様な衝撃が走った。漏れ無くみんなが忘れていたのた。メーナも。記憶が緩いことが露呈されてしまった。
だが逆に言えばメーナにとってそれほど楽しかったということだ。
アルトの言葉で目的を思い出した一行は、いつになく目つきが真剣になり、とてつもなく頼りになる集団に見えた。
メーナはアルトの方を見、改めてしっかり頼み込むをするようにお辞儀をした。
それを見たアルトは軽く頷き、その場に居る全員を見渡す。アルトに見られたみんなは目をしっかり合わせて頷いた。
全員を確認したアルトは言った。
「さあ、行こうか」
「「「おう!!」」」
「「「はい!!」」」
カズヤは自分が来てから初めて全体が纏まったと思った。それと同時に、凄くかっこいいと思った。カズヤの中に、単純な憧れが芽吹いた。
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