カッコイイ見た目になりたい!
メーナの話を聞き、依頼を受けることとなった一行は、どうするものかと考えてはいたものの、特にヒントも無く、ただ悶えていた。
とはいえ、このままでいても
「そういえばカズヤ達は、あんまり強い装備持ってないな。この間のを見て思ったが、基礎能力やセンスはあると思うんだ。だからそれらをもっと活用出来るように装備を整えに行こう」
「なるほど、良いですね」
「いや、今すぐ出立するぞ。奴らをぶっ飛ばす」
「お前本当にうるせぇ!これ以上無能を晒すな!」
サカイは、実はかなりのアホの子だという事実が判明したアルトに対し、割と真面目なツッコミを入れた。
「よし、一時間後に出発しよう。それまでに準備を」
「えっ、僕らは何も準備ありませんけど…」
「あ゛ぁ!?スターてめぇ!!そんなことは分かりきってるんだよ!!てめぇもアホの子なのか!?キャラ被りだよ!!」
サカイは、うちで面倒をみる事になった一団の団長が、アルトと同じ部類だと分かり、これからのことを想像してため息をついた。
「はぁ…、まさか労力が二倍になるんじゃなかろうな…」
「僕もサポートします」
「ああ、助かるぜカズヤ。お前はこれからつまらん個性出すなよ」
「それ無個性だってディスられてます?」
「いや、そんなつもりはないぞ」
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ここはズダンド。アルト一団の拠点がある草原から⒈5キロほど離れたところにある街。依頼の受付や冒険者のサポートなどを行うギルドも、この街にある。この街には冒険者には嬉しい店がたくさん出店されている。
サカイ達は、まずは殆ど丸腰に近いカズヤの装備を整えるために、装備屋へと向かった。
武器屋に着き、扉の前に立ったのだが、ここは初期装備屋で、さほど広くなく、9人で入ると窮屈なので、サカイ、カズヤ、マリトの三人で入る事にした。アホの子二人はフィアやマイマイに任せた。責任を女性陣に擦りつけた。最低である。
三人が装備屋に入って行くのを確認したマイマイは、フィアに対して微笑みかける。それを見てフィアも不思議がりながら微笑む。
「さて、ここからは女の子だけで買い物を楽しみましょ」
「え、でも私お金持ってない…」
「大丈夫!私が出すわ。さ、べマーラとメーナも」
「うん」
「はい…」
マイマイは、みんなの返事を確認すると、残ったアルトとスターを方を見た。
アルトとスターはそれを見て首を傾げる。
「じゃ、二人はなんか適当にぶらぶらしてて良いよ」
「「!?」」
それを聞いた二人は、全く同じ反応をした。だが、それが意図するものは、全く違っていた。アルトは置いてけぼりにされる驚き。スターはアルトと二人で一体何をすれば良いんだと言う嘆き。
とはいえ、アルトがアホの子だと知る前だったらもっと緊張していただろうが。それは幾らか良かったといえよう。(本人後日談)
「じゃ、そういうことだから私達ガールズはショッピングに行ってくるわ。バイバーイ」
「あ、ああ。また後でな」
結構強引に流れが動いたので、男達は口を開けて呆然とするしかなかった。あら、アホの子っぽい。
「えーーっと、僕たち置いてかれちゃいましたけどどうします?」
「うむぅ…、はてさてどうするべきか」
アルトは、腕を組んで顔をしかめていた。
うーんうーんとしばらく唸った後、一言、
「パフェ食べる?」
「いや食べねーよ!!」
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「これから結構長旅になると思うから、必要なものはしっかり買っておかないといけないと思うの」
「マイちゃん、必要なものって?」
「愚問ねべマーラ。服よ!そう、服!!」
どこを指しているのかは分からないが、マイマイは天に向かって指差しポーズをして言った。
それに対して三人は、「えっ、服なの?」みたいな視線をマイマイに向ける。
「いやいやいやいやいやいやいやいや、三人ともちょっと待って。服大事よ。旅先で夜這いとかする時に汚い格好をしていたら大好きなあいつも幻滅よ」
「夜這っ…!」
べマーラはマイマイの言った夜這いという単語に頬を赤らめた。それとは対照的にフィアはリア充死ねといった表情をしていた。
「ところで、夜這いって何ですか?」
「っっ!!」
不意にメーナから放たれた“夜這い”にまたもべマーラは頬を赤らめる。
そんなことは気にもせず、マイマイは喋る。
「あのねメーナ、夜這いっていうのはね…」
「説明せんでいいっ」
そう言ってフィアはマイマイの頭を軽くはたく。はたかれたマイマイはてへっと無邪気な顔で舌を出す。フィアは呆れて両掌を顔の横あたりで上に向け、軽くため息をついた。
「ま、とにかく服は大事よ。買いに行きましょ」
「分かった分かった」
「やったー!」
そしてマイマイはにこやかに軽やかに歩き出した。
べマーラとメーナも互いに顔を見合わせ仕方ないねと言うように微笑み合うと、マイマイ達の後に続いて歩き出した。
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その頃サカイ達は、カズヤの装備選びに真剣に悩んでいた。
「おいカズヤ、お前本当に丸腰だな。専門は一体なんなんだ?」
「専門?」
「えーーーっと、得意な武器、的な?」
「分かんないです。この間来たばっかなんで」
「どゆこと?あ、あれか。前まで一般人で、この間から冒険を始めたってことか」
「ちょっと違うけどそれで良いです」
「??」
サカイはカズヤの言っていることがあまり理解できず、不思議がった。
「まあ良いや。お前ちょっとこれ持ってみろ」
そう言ってサカイが差し出したのは、
「いや、ぜひこれを」
マリトの方は、長さ二十センチほどの短剣。カズヤは右手に剣、左手に短剣を持った状態になった。
そしてそれらを見つめ数秒沈黙した後、
「僕、両方使います」
と、言った。
「マジで?」
「マジです。TPOで使い分けます」
「てぃーぴ?」
「時と場所と…、何だっけ…によって使い分けます」
「お、おう。そうか。頑張れよ」
かくして、カズヤの装備品(武器)が決まった。
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