序章【三次元世界にて】

第一話・・・これが本当の童貞キモ豚オタク。

俺は舞い上がっていた。とにかく舞い上がっていた。空へ羽ばたけるんじゃないかってくらい舞い上がっていた。


  「なんてったって・・・。」


  そう。そうなのだ。なんてったってなのだ。

  俺は同い年の女子からオフ会(異世界で!)のお誘いをもらったのだ。しかも、マンツーマンでだ。これはもはやデートといっても過言ではない。

  年齢=彼女いない歴。ましてや17年間生きてきた中で女子とまともに喋ったのは両手に収まるくらいだ。

  そんな中こんな俺に・・・ありがたき幸せ。


  「あっ。でも、物凄いブサイクだったらどうしよ」


  と、一瞬思ったのもつかの間。

  俺はそんなことを考えているよりも、喜びが勝ってしまった。

  チャットの履歴を見返しながらにやけているのが惜しみもなくわかってしまう。



  俺は、スマホの上のほうに小さく表示されている電子文字の時計を見て


  「まだ、二時か」


  約束の5時まではまだ、時間があった。



  ここでは関係ないことだとは思うが、俺は顔立ちは悪くないと思うが、どうやら性格に難があるようでこのかた親友と呼べる友達はいたことがない。


  一度洗面所へ行き1年前に買った以来、一度も開封していないスプレー型のワックスを頭に吹きかけ、前髪を少しいじり、髪をたたせて、少しばかり口元にある産毛

  をそり、第一印象の要といっても間違いない顔はおおむね清潔を保つことに成功した。

  そこへ、


  「康太。あんたどーしたのよ・・・。」


  そこには息子をまるで、G(ゴキちゃん)を見たかのような驚きな目で見る母親の姿があった。


  「か、か、母さん!いつの間に・・。いや。その。学校は・・・今日は早く終わったんだよ!そそ、そうなんだよね~」

  「そんな事どうでもいいじゃない!そんなことよりあんた。お母さん、うれしくてうれしくて」

  「は?なんでだよ」

  「だって、康太。そんな男前にセットして~。彼女なのよね?ね?今度お母さんにも紹介してちょーだいよ!」

  「うるさいな。そんなんじゃないって」


  俺は母親のよくあるアゲアゲテンション攻撃をしりのけて、自室へとたどり着いた。

  母さんは冗談めかしに言っているが気持ちの面はホントにうれしいのだろう。まあ、確かに母さんが喜んでくれるのもわからなくはない。

  

  「今日、コーちゃん頑張ってくるね。応援しててね、『ミーちゃん』」


  

  そういうと俺はデスクトップ横のショーケースに飾ってある、1/8スケール「受注生産限定!愛しのミーちゃんフィギュア:定価18000円」を取り出しほっぺにこすりつけた。

単刀直入に言おう―――――――――――――――。俺は超変質系オタクだ。(ドヤ


しかし俺は俗にいうニートや引きこもりとは違う。



  しっかり学校へも行ってるし、なんなら皆勤賞だし。成績だってそこそこだ。

  彼女いない歴=年齢と言ったが、俺は人生生きてきてこのかた、女子から告白されたことが5回ほどある。

  まあ、顔だけはそこそこいいんではないかと妥協はできる。


  しかしだ・・・。ある日を境に俺は目覚めてしまったんだ。『二次元』というなのドリームワールドに!!!


  先ほど、告白されたといったがそのすべてが懐かしき小学生の時代である。

  ある日を境にとは中学の夏休み中に起きたある一本のアニメとの出会いであった。


  主人公の男の子が異世界の女神『アルミ』という美少女に選ばれし勇者として異世界へ転生され、ともに日々を過ごしその世界で無双していく、というどこにでもありそうな

 異世界転生もののアニメだ。人気こそあまりでなかったものの、一部のファン層にはかなり愛されている、どちらかと言えばマニアックなアニメだ。


  そのアニメとの出会いを境に俺は変わった。

  そう、現実世界の女の子がすべてミーちゃん(アルミ)風に見えてしまう様に・・・。

  ここからは言うまでもない。

  女子に話しかけられるだけでオドオド・・・。挙句の果てに女性の先生に授業中に指名されただけで「僕はあなたに選ばれた勇者なのですね!」なんてどこぞの中二病だと

 いわんばかりの恥ずかしい小言を授業中に叫んでしまうはめ。


  そこからというもの、症状に改善は見られず・・・というより悪化していくばかり。

  だんだんクラスからも浮いた状態になり。ただの変質オタクとして見られ、だれも話しかけてはくれなかった。


  と、みるみるうちに時だけが過ぎてゆき、今では高校二年生だ。

  何もかもが嫌になりかけた矢先の出来事だ。

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