ウツロウ嘘と想う夜 7
彼に託す事を決めたはずなのに、どうしても取り残されたような気持ちが残ってしまう。
「ねぇ、やっぱりついて行っちゃだめ?」
往生際が悪いと思いながらも、出て行こうとする瑞樹を引き止める。
「だめですって言ってるでしょう?何度目ですこれ」
「ご、ごめん・・・・・」
彼の服の裾を掴んだまま、かれこれ三十分以上問答していたが、とうとう瑞樹が呆れたように言う。
「僕って、そんなに信用ありません?」
「ないわよ信用なんて」
「・・・・・うっ。僕がなにをしたって言うんですか」
目頭を抑える瑞樹を横目に、だって自業自得じゃないかと思う。
「人の意見なんてあってないような行動を普段から取る瑞樹が悪い。私の断りなく庭に柚子の木を植えたり、夏は勝手にビニールプール出して1人で涼んでたり、そういう前科がありすぎるのよ」
「全部愛故ですって」
「そーいう風にからかってくる所も信用ならない!」
そうだ、そもそもこの人の日頃の行いさえよければこんなに不安になることもないのだ。
キッと瑞穂を睨めば瑞樹は両手を上にあげた。
「降参。ちょっとは反省しますから袖を離してください」
そう言いながら掴んでいた袖をゆっくり外され、彼は微笑んだ。
「そろそろ出る時間です。お留守番を頼みましたよ?」
「小っちゃい子供じゃないんだから1人で留守番くらいできるわよ!」
「あとくれぐれも、僕に付いて来ないこと」
「・・・・・・」
「付いてきたら襲いますよ?」
にっこりと口角を上げる瑞樹から力いっぱい離れると、彼は満足そうに微笑む。
私はそんな瑞樹を恨みがましく見る事しかできなかった。
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