第四話 ソロとソリスト

(最ッ悪……!!)

現在、私は学校の校門が見える一歩手前の交差点で楽器を持ってうずくまっている。時間は早朝。校門及び校舎の鍵が開く時間帯だ。学校へ早く来た理由は言うまでもない。昨日、満足に練習できなかった穴埋めをするためである。そもそも昨日楽器を持って帰った理由の一つは、早朝の教室で基礎練習を済ませ、部活の始まって音楽室が開いてからすぐに曲の練習をしたいからである。もしも楽器を持って帰っていなければ、顧問が出勤し、楽器庫が開くまでの時間が無駄になってしまう。さらに、先輩たちよりも先に登校し、練習に没頭していれば声を掛けられることもなければ勝手に『昨日の一件を反省している』ように見える。

それを見越して準備して来たのに、校門に倉田先輩がいたのだ。

これでは校内には入れない。絶対に。学校の門と書いて校門。校内に入るにはその敷居を跨がなければならない。裏口も開いてはいるだろうが、常駐している警備員さんに理由を述べるにはあまりにも情けない。そもそも裏門は生徒の利用は禁止されている。学校を囲む塀を登るという手はあるが、自転車をこんなところに放置しようものなら厳しすぎる教務主任に回収されてしまう。その暁には長ったらしい反省文を提出の上、部活内で「どうしてそのようなバカな行動をしたのか」「学校のルールを守れないやつが同じ部活で活動しているということは嘆かわしい」「二度とこのようなことをしないと誓い、部内の仲間に謝れ」などなどの理由で曝し者扱いされるに決まっている。

完全な八方ふさがりだった。

(なんでこんな時間に倉田先輩がいるの!?誰にも文句言われないようにこんな朝早く来たのに!これ捕まったら絶対長いやつだよ!絶対ヤダ!今あの人と話す暇もこともないのに!)

こそこそと隠れながらどうにかならないものかと思考を巡らせるが、良い案が浮かぶはずもなく、こうしている間にも練習する時間は減っていく。そして短気な私がそれに耐えられるはずもなく…。

(こうなったら正面突破!もしかしたら倉田先輩も私を待っているわけじゃないかもしれないし。捕まったとしてもさっさと話を切り上げて逃げよう。そうしよう!)

という結論に達した。

極力物音を立てないようにして自転車に跨り、勢いをつけてペダルをこぎ出す。

無駄なあがきだとは分かっていても、トップスピードで先輩の前を通り過ぎる。先輩がこちらを向いたような気がしたが、素知らぬふりで一気に駐輪場まで駆け抜けた。

第一関門突破という感じだ。

(気づかれなかったよね…?もし声かけられたら止まるしかないか…。)

昨日の呼び出しでは、かなり本音を暴露してしまった自覚はある。今回もそうしてやり過ごせばいいという意見はごもっとも。しかし、そういうわけにはいかないのがこの学校という組織だ。学校の門が開いたということはこれから先生やら生徒やらがぞくぞくと登校してくるということである。場所を移動して教室で話したとしても、それらの全く関係のない大勢の人たちに先輩との衝突の場面を見られてしまう。もしもそれを先生たちにチクられでもしたら…それこそ顧問に呼び出しどころか学校の問題にされかねない。だからこそ穏便に済ませようとこんな時間に登校したというのに、あの先輩は私の努力を無駄にしたのだ。

「どうしよう…。」

「藤野ちゃん。おはよう。」

独り言ちた私の後ろで声がした。ぎくりとしながら振り向くと、先ほどまで校門でたたずんでいたはずの倉田先輩がいた。今日も黒髪をなびかせて、他の生徒より少し長いスカートを行儀よく履いている。昨日あれだけ言ったにもかかわらず、いつもと同じように接してくる姿は本当にリーダーらしいというか、年上相応の風格がある。

「…おはようございます。」

「おはよう。」

ぎこちなく返した挨拶に律儀にもう一度挨拶を繰り返してから、先輩は視線を楽器ケースへ注いだ。

さも、何か言いたげな瞳だ。

「先輩、今日は早いですね。まだ音楽室の楽器庫も開くには時間がありますよね。あ…もしかして受験勉強とか…?」

(いつもは遅いくせに…)

少しの嫌味を込めて小首をかしげて見せる。

「あなたを待ってたのよ。藤野ちゃん。」

わずかな希望を込めて言った可能性は、先輩の一言によって瓦解した。

私が黙ると、先輩はカバンをしょい直してからまた口を開く。

「あなたも分かってるでしょう?昨日、合奏であれだけのことをしておいて、私の話もちゃんと聞かず、まだ先生から演奏するお許しをもらってないのに練習しようとしてたでしょう?それじゃあ先生の機嫌をまた損ねるだけじゃない。なんでそう自分勝手なの。」

先輩はどうやら昨日よりも怒っているようだ。

(なんで演奏するのに先生の許可がいるの?そんなのおかしいじゃない。)

そう思いながらも口に出したらまた面倒なことになるので押し黙る。

昨日の先輩への発言についてはやりすぎた気もするが、それは先輩の自業自得だと思っているので謝る気はない。

「いつまでもそんな風だと、仲間にも見捨てられるよ。」

「先輩は、私を見捨てる気なんですね。」

「…今はその話じゃないでしょう?」

「宣戦布告するくらいなら、先輩もソロオーディションまた受ける気になったんですよね。」

「それとこれとは話が違うでしょう?」

私にとっては違う話じゃない。それなのに、先輩は私の意見をはねのけていく。

またイライラがつのってきた。

私は早く練習がしたいだけなのに、なんでこんな受けても意味のない説教を受けているのか。

あまりこの話を広げたくはないが、先輩はちゃんと話をしないと解放してくれそうにない。

私はいくつか先輩が納得しそうな言い訳を考えながら、口を開いた。

「それじゃあ私がどうすれば先輩は納得するんですか。」

「私一人の問題じゃないの。あなたが反抗的な態度をとるのは勝手だけど、あなたの行動ひとつがみんなの行動を妨げているの。独りよがりな演奏はわざわざアンサンブルでしなくたっていいでしょ?」

あぁ…。

イライラする。

この人は何のためにこの吹奏楽部にいて、何のためにサックスパートのパートリーダーをやっているのだろう。

もしかして私に説教したいためじゃないだろうか。

先輩ぶっていい子ちゃんしたいがために、こうしてここに存在しているのではないだろうか。

イライライライライライライライライラ!

堂々巡りの先輩の主張に、とうとう堪忍袋の緒が切れた。

「先輩だって答えが分かってないのに、何で私がそのことで怒られないといけないんですか!結局、先輩は私が気に食わないだけでしょう!!」

「おいっ‼」

そう言い放った時私の肩がぐいっと後ろに引かれた。思いのほか強い力に振り向かされると、そこには昨日指揮を振っていた吹奏楽部顧問の姿があった。

「お前ら昨日の今日で何してる。」

先生の冷静な声にやられて、私と倉田先輩は一瞬固まってしまった。

「倉田。」

先生がもう一声声を掛けると、先輩は水を得た魚のように話し始めた。

「昨日のことがあったので、もう一度藤野と話しておきたいことがありまして…。」

「昨日ってのは合奏のことか。」

「合奏の後も二人で話をしたんです。その時にも口論になってしまったので、もう一回冷静に話をしようと思って。」

「どう見ても冷静さには欠けているように見えるが…?」

「…はい。」

さっきまで強い口調で私を責めていた先輩が、泣きそうな顔で黙ってしまう。

そのくらい、先生の言葉が的を射ているのだ。

「それで…?」

顧問が私のことを見た。

次は私の番だ。

「お前は何をそんなに怒っている。昨日の合奏はお前が倉田に怒るような内容じゃなかったろ。」

「………。」

素直に「先輩が気に食わない」旨の理由を言えば、今度は顧問を怒らせかねない。いや、確実に怒られる。あの時の私がどうかしていたことは自分でも分かっていたし、今さらながらにメールでもなんでも先輩に謝罪しておけばよかったとも思っている。ただし、そうしていたとしても、本心から謝るということもできそうにはなかったが、先輩に待ち伏せされたりこんな状況に陥ることだけはなかっただろう。

何か相当するようないい言い訳がないかと黙っていると、また顧問が「藤野」と私の名前を呼んだ。

観念して口を開く。

「私がソロを吹けないことを怒るくせに、先輩は私からソロを奪おうともしないから…先輩こそ卑怯だと思って……それでカッとなってしまいました。すみません。」

軽く頭を下げると、背負っていた楽器ケースの金具がカチャンと音を立てた。

それ以上楽器が傾かないようすぐに姿勢を正し、先生を見据える。

「その“すみません”は何に向けての謝罪だ?」

「……大きな声を出してしまったことと、ソロオーディションについて先生に何度もご教授いただいたのに、まだ引きずっていることです。」

先生は私の言葉を聞いて、大きなため息をついた。

「コトの重大さが分かってないな。面倒くさいことになっちまって…。」

先生の目がよどみつつ、ナイフのような鋭さの嫌な光り方をした。

少なくとも私にはそう見えたし、その先、先生が何かしら私に都合の悪いことを言うことも想像できた。

「藤野。お前はこれから3日間部活に来なくてもいい。放課後だけじゃない。朝練もだ。自分のするべきことをちゃんと考え直してこい。何のために昨日部活を切り上げたと思ってる。お前の考え方や姿勢が変わらないならいくら楽器を演奏したって同じだ。ソロなんて話にならない。それが分からないうちはともかく駄目だ。」

思わず「はぁ?」と声が出てしまいそうだった。

先生は何を言っている?

「3日後の朝に音楽準備室に来なさい。もしもそれまでに部活に出席したり楽器を吹いたらお前には退部してもらう。ルールを守れないヤツ、部内の輪を乱すヤツ、自分勝手なヤツはうちの部には必要ない。」

「先生!それはあんまりじゃないですか?藤野はそこまでのことはしていないと思います!ただでさえ、発表会まで時間がないのに…。」

「倉田は口出しをするな。これは部活全体に関わる問題だ。本人が変わらない限り、俺はコイツが部活動として参加することを認めるわけにはいかない。それは発表会の失敗に繋がるんだからな。ソロとソリストは違うんだ。一人で勝手に演奏されちゃあ合奏している意味がないんだ。」

先生は全ての元凶が私にあるかのような言い方をした。

私の何がいけないのか。

それはよく分からなかった。

「ソロが吹けないことがそんなにいけないことですか?」

私がそういうと、先生は大きなため息をついた。

「そんなことを聞いてくるうちはダメだ。まるで俺の話が分かっていない証拠だぞ。」

「分からないものは分からないです。先生が何をおっしゃりたいのか…。」

「だからその答えを自分で探してこいと言っている。何でもほいほい他人が正解を教えてくれると思うな。」

先生は私の質問には答えようとしない。

先生のいうことが全て正しくて、私の主張は何もかも間違っているみたいに思えてきた。

ただ、思っただけで、自分でそれを認めることはできなかった。

黙る私を見下ろしながら、先生が時間を確認する。

そして先生は倉田先輩にこう言った。

「今日の朝練は楽器を出すな。話をする。藤野は参加するなよ。」

言い終わるかいなか、先生はとっとと職員室へ向かって消えてしまった。

そこには呆然とする私と、小さく返事をする倉田先輩が取り残されたのだった。


  ○  ○  ○


「おっはよー!ふじのーん!」

朝から最悪の気分で机に突っ伏していると、頭上から鬱陶しい声と共に重さがやってきた。

ちなみに「ふじのん」というのは私のあだ名だ。しかし、このあだ名で私を呼ぶ人物は1人しかいない。

はな…。重いから…。」

「どうしたのー?この時間から教室にいるの珍しくない?朝練は?ってかなんで楽器がここにあるの?どうしてどうして?」

「うるさいぃ…。もたれかかるなぁ…。私から離れろぉ…。」

「教えてくれたらいいよーん!」

こうして私の体にもたれかかりながら質問攻めにしてくるのはクラスメイトの佐々木華だ。彼女は新聞部の商魂が詰まったような人間で、気になることは明らかにしないと気が済まない。そのせいで普通よりも詮索されることは多いが、そんな恥ずかしい過去を持っているわけでも、やましいことがあるわけでもないので無視している。むしろテスト範囲などその情報にあやかることの方が多いため、友達としては重宝している。

「顧問怒らせたから部活動禁止令出たの…。朝から倉田先輩に絡まれるし、顧問に見つかって練習できなかったし…。まじでむかつく…。」

「ほうほう。相変わらず吹奏楽部は荒れてますなぁ。」

ようやく重さから解放され、顔をあげると腕組みをした華が私を見下ろしている。その顔にかけられている眼鏡は今日も汚れひとつなく光を反射していた。

「荒れてるっていうか…面倒くさいんだよ。何でもかんでも連帯責任にするしさぁ。」

「あははー。ふじのんは団体行動に向いていない性格ですからな!」

「それは分かってるけどさ。どうしても曲げられない己の信念っていうものがあるでしょう?」

「それは分かるけど、それをどうにかして納得させて社会にもまれるのが大人ってものだよ。」

「そんなのが大人なら、私大人になりたくない…。」

「そうは言いなさんな。私達が大人になるんじゃなくて、周りが勝手に大人認定するんだからさ。心はいつまでも子どもでいてもいいの!」

「あぁ…なんで私こんなお子様新聞部員と友達なんだろう…。」

「あぁ!ひどいこと言われているのに友達と言われていることが嬉しいなんて…!私はどうすればいいの!?」

ひとりで悶え始めた頭のおかしいクラスメイトの脇腹をつつきながら、私はどうしたらまた合奏に加えてもらえるか、何か打開策はないか、先生の言っている「変わらなければいけないこと」とは何かをぐるぐると考える。しかし、サックスを吹くということ以外への興味のない私のちんけな脳みそでは、何も思いつかなかった。

結局出てくるのはあの先輩と、顧問への愚痴ばかりである。

「本当に無理…。特に先輩に気を使わないといけないのが本当に無理。私のプライド的に、ちゃんと認めた人の言うことしか聞きたくない。」

「ふじのんはわがままだなぁ。そんなの覚悟の上で吹部入ったんじゃないのー?誰もが通る道ってやつ。」

私は楽器を吹く覚悟はあっても、やる気があるのかないのかいまいち分からない空回っている先輩の下につく覚悟はなかったのだ。

「一番安く、それでいて合理的な方法で合奏しつつ技術を高めるにはそうするしかないんだから、しょうがないの。」

「それでも無理なんでしょ?ふりだしに戻ってない?」

「ジレンマってやつよ。部外者はほおっておいて。」

「えぇー!せっかく心配してあげてるのにー!」

「アンタの場合気になってるだけでしょうが。このゴシップ好きめ…。」

「バレたか―!」

「たはー!」とばかりに天を仰ぐ華を見ていると、朝練を終えた同じクラスの吹奏楽部仲間たちが教室に戻ってきた。私を見つけると同時にパッと目を逸らすのが何とも気に食わない。あの様子だと、あの顧問は私への強制部活停止状態のことを部員たちに懇切丁寧に説明したと見える。そうでなければ、何人かのお節介な部員たちが私を訪ねてくるに違いないからだ。

前回顧問へ直談判しに行った時がそうだった。翌日に朝練を始めようとしている私に、何人もの部員が「心配している」という大義名分の下に根掘り葉掘り事情を聞いてきた。自分が関係することでもないくせに何でも知りたがるのはただの野次馬と何も変わらないことに彼らは気づいていないのだ。みっともないとさえ感じる私が適当な説明をしていたら、次の日には目を合わせてもらえなかった。数日すれば元に戻ったが、つくづく人間関係…もとい無遠慮な仲間という存在は面倒くさいと感じたものだ。

今はそんなことはいい。

ともかく状況を整理しよう。

私は目の前に広げていた楽譜に視線を落とした。

今回の発表会で演奏する曲は3曲。内2曲がPOP-Sで、1曲はクラシック系の『アンコール』だ。POP-Sは比較的譜読みも技術的にも簡単で特に問題はない。ついでに言うと今回こんなにも問題視されてしまっている『アンコール』でさえ、そんなに難しい曲というわけではない。ソロは少し連符が面倒くさいところはあれど、練習ではあまり失敗したことはないのだ。ところが合奏となると一気にミスが増える。上手くいくときもあるのだが、いまいちすっきりと吹くことが出来ない。わざわざマンツーマンで見てくれた倉田先輩たちの言うところによるとただの練習不足とのことだったが、朝一番に練習に来て、放課後は最後まで残り、家に帰っても練習している私が練習不足だとは思えない。演奏のニュアンスやフレーズの追求ならまだしも、通しさえできなくなってしまうなんてことは今までなかった。だからこそ私も混乱しているし、苦戦しているのだ。練習して答えを見つけるしかないのは分かっているが、こうして楽器を吹くことを止められた今、それは難しくなってしまった。しかし、楽器を持って帰っていることが幸いした。もしも楽器庫に楽器を置いていたのならば、楽器をとりに行くこともできず、学校以外で練習することは叶わなかっただろう。部活を禁止されたとはいえ、基礎練習もできないんじゃあ技術は後退するばかりだ。

次に、先生は私にソロを吹かせることを悪いとは思っていない。もしそうならとっくにソリストから降ろされている。合奏でだけとはいえソロが吹けないのは悪いことだが、まだ発表会までは時間があるし、ぶっちゃけるとコンクールではないから、そこまでクオリティーは求められてはいない。吹けさえすればいいのだ。それでもこういった措置をとった。ある意味異常だ。しかし、先生がやることには大抵意味がある。先生は私が合奏でソロを吹くことで部活として何かしらを得ようとしているのだ。私はてっきり後輩にソロをとられた先輩たちの尻たたきだと思っていたのだが、今日の発言からしてそれだけとも思えない。というか、何日も楽器を吹かせない方がおかしい。プロではない私達は非常に不安定だ。楽器を一日吹かなかっただけでいとも簡単に基礎は崩れ、吹き方も変わってしまう。しかも今は発表会の直前だ。そんなことをして何かメリットがあるのか。答えはノーだ。むしろデメリットしかない。

しかし先生には何か考えがあって…。

(面倒くさい…。何かやってほしいなら直接言えばいいのに。分かんないから素直に言ったらそれを考えろって…結局何の解決にもなってないこと分かってないのかな。)

そんなことを考えている時間があったら練習すればいいのに。

私にはそんな考えしか浮かばない。

しかし、先生の言いつけを破って学校で練習した日には本当に強制退部させられかねない。

かと言ってこれから3日間また母から金を借りてカラオケボックスに通うのはいささか気が引ける。放課後の4時間程とはいえ、何日も続くとさすがに申し訳ない。それに、1日カラオケで練習するのと、ひと箱のリード代は同じくらい。そう考えるとそのお金はリードを買うために残しておきたい。かといって家で練習するにも大きな音は出せないし、河川敷で練習しようにも確実に学校へ苦情の連絡がいってしまいそうな気がする。

お金を掛けずに長時間練習できて、しかも誰にも迷惑が掛からない。できれば音響も良いところなんてあるだろうか。

そうして考え付いたのは…。

(しょうがない…。放課後は病院に行くか。)

ちらりと我が相棒のサックスを見ながら決心する。

ついでに昨日倒れてしまったタクトさんが気がかりだ。

そうして朝のHRの号令がかかる時には、今日の予定を確定した。

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