懺悔:何故私は非常階段でいちゃつくカップルを注意出来なかったのか 巻ノ中

前回のあらすじ

声優専門学校に入ったらなんか色々すごかった!


オタサーの姫。それは最近結構話題になっている「オタクにちやほやされて喜ぶアレな女」であり、基本的にヤリマンなのだ。

しかしその心根はコンプレックスの塊であり、同じくオタクによって作り上げられた、勘違いによって作られた形無き形なのである。げに恐ろしきは言葉の力。草花にありがとうと言うと良い感じになると言うのは案外マジかもしれないのです。オタクの女や男ですら姫や王子に成れるのですから。


砂上の楼閣。


自戒の理。


捲土重来の地獄絵図。

暴君たる王子はどう動くのか?


専門学校に入ってしばらくすると少しの異変を感じる様になりました。全く喋らなかった男が女性陣に「かわいい!」と弄られ始めたのです。メインに弄っている女性は姫の素質がバリバリで大して可愛くも無い女性でしたが、何かにつけて喋らなかった男、仮に無禄君と名づけましょう。無禄を褒め始めたのです。褒められ始めの無禄は顔を真っ赤にして否定したり、はにかんでいるだけでした。私、笹本、ポム巻はそれを微笑ましく見ていました。心の中のざわめきを感じながら。


そしてレッスンが始まったり何だかんだして一気に数人辞めたり、私が色々と成長したりもするのですが、その話はまたの機会に…


やはりクラス全体が仲良く成ってくると男女間の付き合いが生まれたりもします。声優になると言う目的が最初にあるとしても、恋愛は悪い事ではありません。恋愛を通して成長し、より人の心を理解し、そして人としての深みも増して全てが芸の肥やしとなるのです。良い恋愛は強き人を作り、暖かい環境を作るのです。そして皆がその恋愛を祝福し幸せは人伝いに伝播していくのでしょう。こんな素晴らしい事はありませんよ。


そして男女の仲が生まれるのは今も昔も変わりません。お酒や食事の席等の心の中身、素が出る状態でより近づいて行くのだと思います。いや、彼らの場合は蝕まれて行ったのでしょう。恋愛と言う病に。


ゴールデンウィーク前の学校、ちょうど今くらいの時期でした。大型連休が近いとは言え、私は学費の事もあるしアルバイトに精を出そうとしていました。そんな中、普段は見る事が無い、好きな事を書いたり張り出したりしても良いクラスの掲示板を見てみたのです。


「飲み会開催しま~す★連休前最後の日のレッスン終わりに無禄ハウスで開催決定!参加費1500円で~す★参加者は雑魚美までよろしく★」


雑魚美とは無禄に対してやたら可愛いを連呼している女です。弄り始めた女です。

正直この掲示板を見た時


「なんで大して知らない人間の家なのかね?無禄は地方から出てきて一人暮らしとは言えマジで良いのかよ。普通店を予約するんじゃねえの?あ、高校卒業したてで未成年も多いから自宅か。なるほど。こりゃ一本とられましたなあ。」


とナイスフィーリングを感じていました。

そこに笹本が通りかかったので。


「笹本よ、この何だかアレな空気を感じる飲み会、参加しようと思うのだよ」


「マジかよ!後藤行くなら俺も行くわ!でも自宅でって何なんだろうな。そう言えば後藤って高校の時、家で遊んでいてオカマにチンコ握られたってマジ?」


「貴様!なぜその事を!生かしては置けぬね?その血で償おうか?罪を?」


「ごめんごめん。まあ、行ってみようよ。俺たち、周りとは合わないって決め付けて喋ったりしてなかったしさ。やっぱり演劇とかってチームワークとか大切だろうし」


「笹本、それだよ。俺もそれを危惧していたのだ。チームワークを作る為に行こうじゃないか。」


教室に入るといつもと変わらず雑魚美が回りに世捨て勢を率いて無禄の良さを語っている。何なのだこいつは。練習をしろ練習を。血を吐いて血のションベン出すまでやらんかいな。そんな気持ちをひた隠しにしながら参加の旨を伝えました。雑魚美はちょっとびっくりした顔をしましたが、すごくうれしそうに感謝の意を伝えてきました。そして私たちがびっくりしました。


いきなり俺と笹本に全力ハグをしてきたのです。凍り付く世捨て勢。引きつる無禄。私はその時初めて嫉妬による殺意を感じました。そしてそそくさとその場を離れ自主練習などをしました。そして落ち着いた時に笹本、ポム巻と話していました。


「ポム巻さん、前に笹本にも話してたサークル壊す女ってちょっと分かった気がしますよ。」


「見てた見てた、二人ともハグされていたよね。あの後隣の教室ヤバかったよ。取り巻きの奴等が移動してきて後藤君と笹本君の悪口言いまくってたよ。それに泣いてる女が居たよ。」


「マジで超怖え。俺も後藤も普通に参加を伝えただけっすよ。ポム巻さんは行きます?」


「俺は辞めとくよ。でも、二人はそう言う会とか慣れてそうだから敢えて言うけど、あんまり厳しい事言ったりしない方が良いよ?皆、会の経験とか無いんだしさ。面白くなかったりしたらメチャクチャな事言うでしょ?」


「ポム巻さん大人ですね。正解です。でもまあ僕は何か言うかもしれないけど、笹本も居るんで平和に過ごしますよ。」


頼れる男、ポム巻、仮にポム巻だなんて名付けてしまったのが申し訳なくなってきました。


そして数日後、ついに会の日がやってまいりました。レッスン中は大体みんなジャージとかなのですが、レッスンが終わり着替えが始まった時に何かがおかしい事に気がつきました。普段髪型とかに気を使わない人間が気を使っていたり、何故か黒スーツで学校に来ている人間が居るのです。


あ、分かった。これは皆ワンチャン狙っているのだな。私と笹本はお互いに目を合わせ「ワンチャンは大切だ。見守ろう。後藤、わざわざ空気を壊すこと言うなよ?それはちょっとオーバーキル過ぎる。」と言われていた様に思いました。後になって笹本に聞いたら「まじキメエ」と思っていたらしいです。コミュニケーションブレイクダウン。人は分かり合えない。


そして無禄ハウスに向かう時間となりました。ここで参加者を書いていきます。


後藤:後藤is俺


笹本:私の友達、高校時代リア充グループ。真性包茎


豚骨:チンシンザン激似。自分の得意な話しに持って行く。髪型をキメてた男


無禄:場所の提供をしてくれた男。服装が当時ソロでがんばり始めたGAKUTOみたいになって来た。上記スーツは彼。自宅に行くのにスーツってなんだよマジで。


雑魚美:会の主催者。無禄を褒めまくり、世捨て勢にチヤホヤされている。


雛子:よく考えてみたら入学して一ヶ月なのに声をきちんと聞いた事が無い無口な女性。可愛らしくはある。


他数人居たけど特に話しに絡まないので省略します。

そんなメンバーで無禄ハウスに向かいました。ハウスは学校から数駅先の各駅停車しか止まらない駅の近くにありました。だからこそ家賃が安く、大人数を集められたのです。ちなみに家賃も学費も全て親持ちと聞いて居る所には居るんだなあと思いました。


無禄ハウスに向かっている時、私と笹本は気がつきました。


「なぜ雑魚美が先頭に立って案内している?」


答えはひとつ


あいつ行った事あるな?


です。


男女ですしそれは良いでしょう。アリです。でもナシな事がありました。雑魚美がやたら私に話しかけて来るのです。


「後藤きゅーん(マジでこう言いました)。後藤きゅんはいつも気持ち悪いTシャツ着てるけどなんなのそれー!?」


「てめえ、デッドケネディーズ知らんのかね?これはケネディ暗殺の写真をジャケットにしたCDのTシャツだよ?気持ち悪いとか言うんじゃないね?お里が知れるね?」


「こことか凄いこわーい」


そう言ってケネディが脳漿をぶちまけている辺り、私の乳首近くを服の上からツンツンしてくるじゃないですか。あれ?この雑魚美って無禄とアレしてたりするんじゃないの?アレ?と私が戸惑っていると視線を感じました。

無禄が私をガン見していたのです。やめてくれよ無禄、俺はどちらかと言えば被害者じゃねえの?マジでなんだよ。敵意を隠せ。今から会が始まるじゃないか。そんな敵意を参加者全員が感じる風に放出するなよ。マジで。


「後藤きゅーん!手~つなご~!」


「良いよ。」


と私は手を出しました。そして繋いで来た手をクイっとキメてみました。


「イタアアアアアアアアアアアアアイ!」


そりゃ痛いでしょう。痛くしたんだから。次の瞬間私は背中に結構な衝撃を感じました。無禄が体当たりしてきていたのです。


「後藤!お前!………雑魚美をいじめるな!!」


びっくりする位に大きな声で、レッスンの時には聞いた事が無い様な大きな声で私に対してガンギレしてきたのです。正直ちょっと小便が漏れそうになりました。純度の高い殺意や攻撃の気持ちを感じると相手がどんな人間であっても動けなくなる事を知ったのです。


笹本も驚いていました。回りのクラスメイトもびっくりしていました。豚骨は気にした様子も無くエヴァンゲリオンの良さを語っていました。


正直空気は最悪です。私だって人の子ですから帰ろうかと思いました。でも、私の中のガンフロンティアスピリッツ(名作STGガンフロンティアを愛する心)に火がついたのです。雑魚美に執着する無禄。この会…何かが起こるぞ。この会を見ずに帰れるか…そう思ったのです。


「着いたよ。」


そこそこのマンションが無禄の家でした。しかし私はその時、このマンションが監獄の様に思えたのです。


覚悟を決めて行こう。向かうは地獄か極楽か。大丈夫。両方にゴクが入っている。似たような物だ。そう決めた時、声をかけられました。


「大丈夫?無禄君ひどいよね。」


「全くだ。癒してよ。」


雛子でした。急に話し掛けられたので私も適当にギャグ混じりに返事をしてしまいました。雛子はそれを聞いてニコニコしていました。

そして無禄家のドアが開かれました。


「さあ!みんな上がって!!」


雑魚美。お前が言うのか。

ついに始まるファースト飲み会!一体非常階段はいつ出てくるのだ!?思い出して付け足しながら書いているので収拾がつかなくなって来た!酒を飲み壊れて行く世界。二間の家に男女が数人。何が起こったとしてもロクな事には成らないだろう。だが、私は全てを見たかった。何故なのか?甘えるんじゃない!それは…俺が男だからだ!!


我々は若かった。ここから全てが崩れだしたんだ。


風雲急を告げる声優専門学校黙示録!この世界は闇なのか?光なのか?

ガタガタうるせえオマンコ野郎!お前の思った通りだぜ!


巻ノ下に続く!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る