第3話 異世界に生まれた日

俺は真っ白な世界にいた。

なぜこんなところにいるのか。

自分でも分からないが。


きっと夢だろう。夢をみているんだ。

不思議と居心地は悪くない。

ずっと誰かに護られて、包まれているような。


暖かい、ずっとここにいたい。




どれくらい時間がたっただろうか。

誰かが呼ぶ声がする。


行かなくちゃ。

何故だかは分からない。

でも行かなくちゃいけない。

そんな気がする。


真っ白な世界に一際輝く光が見えた。


行こう。


光に向かって俺は歩き出した。


やがて光は大きくなり、俺を覆った。

痛い、苦しい。

苦しくて俺は泣いた。

大きな声で泣いた。

俺を護ってくれていたぬくもりが無くなり、

不安で不安で泣いた。




誰かの顔が見える。笑っている。

その顔を見ていると、

ぬくもりが帰ってきたような気がして、

俺は泣いた。


この日世界に俺は生まれた。

名前はエミル。

新しい俺の名前だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る