第2話 イタズラに悩んだ日

意味が分からん。

ボーっとし過ぎていて

何時そのサイトを開いたのか記憶にない。

真っ白な背景のサイトには、ただひとこと。


『人生をやり直しませんか?』


赤い文字でそれだけが書かれていた。

いつもならここで迷わず

画面端に表示された×を押していただろう。


だが、俺はこの文字がとても気になった。

惹かれたと言っても良いだろう。

何故か閉じようと思わなかった。


暇だったからだろうか。

文字に埋め込まれているリンクに

自然とカーソルが動いていた。


続いて表示された画面には

『やり直しますか? はい/YES』


「選択肢ねぇじゃん…。」

横暴な質問だった。


…イタズラか。だろうな。

そんな簡単に人生をやり直せたら、

世の中にニートなんていない。

最初から分かってはいたが、

それでも微かな脱力感は襲ってきた。

やめた。閉じよう。


「…………。」


…サイトを閉じることができない。

ウィルスでも入れられたか。


めんどくせ。

飯でも食おう。

PCを放置してコンビニに行くことにした。

コンビニで買ったサンドイッチを帰り道、

頬張りながら考えた。

もし本当に、人生をやり直せたら。

俺に何ができるのだろうか。

今より頭が良くなるのだろうか、

今よりスポーツが上手くなるのだろうか。

今より何か才能に恵まれるのだろうか。

何か変われるのだろうか。


自宅に着いても頭から考えが離れなかった。

思えば、いつも平凡な日々だった。

何かに挑んでは、中途半端で諦めて、

次こそは、頑張ろう。

その繰り返し。

つまらない人生だ。

ドラマになんか絶対にならない。

もしなったとしても、

視聴率なんてお察しだろう。

例えやり直したとしても

それが変わるとは思えない。



でも、ここと違う世界だったら。

ファンタジーな世界だったら、

平凡な生活なんて待ってないかもしれない。





こことは違う場所で、

俺の人生を、やり直すことができるなら。

今度こそ平凡とは無縁の日々を。


「……異世界希望で。」


俺はPCに回答を打ち込んだ。

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