炎の漁師

 炎を操る魔法は強力である反面、扱いが難しく制限が多いのは、みなさんもご存知の通り。


 さてさて、この家には村でも有名な炎使いが住んでいて、なんでも彼は自分の手から大きな炎を出すことが出来るという。それも自身は全く熱さを感じないのだとか。

 さっそく噂を聞きつけた旅の女、メイアは彼のもとを訪ねた。

「もしもし、私は世界中の魔法を調べて回ってるんですけど、あなた、なんでもすごい炎使いなんですって?」

「あぁそうさ、俺は巷じゃ焔魔様って名で通ってるんだ。」

「うっわぁ、二つ名があるなんてかっこいいですね。それではさぞお強いのでしょう?」

 すると男は首を傾げて聞き返した。

「強い?まさか、俺は戦ったりなんかしないぜ。村を守るのは別の魔法使いの仕事さ。」

「だったらなんで、焔魔様なんて名前がついているんです?」

「あぁそのことか。嬢ちゃんちょっとついてきな。」


 すると男はメイアを海まで連れていった。

「この村の男はいつも漁でその日の飯を用意するのさ、奥さんと子どもが畑を耕してる間にな。そんでもって俺は、とった魚をその場で調理して漁師仲間に振る舞ってるんだ。」

 話をしながらあっという間に魚を捕まえた男は、ポケットからナイフを取り出し、さっと三枚におろした。さらに男は手から大きな炎を出して魚の身を炙り、メイアに差し出した。

「ほら、これが焔魔様の由来だよ。」

 メイアは頭に?を浮かべた。

「ほらって…確かに賢い魔法の使い方ですが、だからなんで焔魔様なんです?」

 やれやれと言って男は答えた。


「だからな、魚を閻魔様ってこった。」

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