第3話 豊穣の神様
山を下る途中に今の住まいがあるという稲荷のきつねについていく。その途中でもヴィランは次々と湧いてくる。それでも情報収集を欠かさないようにしておきたい。
「ところでウカノミタマさまって」
「豊穣の神様、僕が仕えてる主さまだよ。僕はウカノミタマさまの眷属神、稲荷のきつね」
理解が追いつかなかった。
「え?神様?」
「僕らの物語は、神様が信じられなくなり始めた人々にもう一度神を思い出させる話」
だから見つかったのは驚きだ、と軽々しく笑う稲荷のきつねのノリでもう一度聞き直すことになった。
「神様?」
「そうさ、かれこれ千年ぐらいウカノミタマさまに付き添ってる」
見た目は子どもでも、かなりな年上だったらしい。
「ねぇ。これはなにかしら?」
「ガラスじゃないかな?」
「風鈴だよ、暑いときにこれを使って涼むんだよ。まあ、音だけなんだけどね」
道端の路肩いっぱいに飾られた色とりどりの花のように見える紙の飾りが風に吹かれてカラカラと回っている。
今度はこちらを指さして何かと問うと、嫌な顔一つせず、むしろ嬉しそうにこたえてくれた。
「風車だよ、ウカノミタマさまは豊穣の神様。風は穀物にとって必要な自然の恵み。それを象徴する風車は昔からここで大事にされていたんだ」
「へぇ」
「神とは人の子が感謝を忘れぬよう感謝を具現化したもの。そこにあることを忘れぬための指標のことだよ」
社に向けて、深々と頭を下げて礼をした稲荷のきつねはエクスたちのことを手伝ってくれる人だと簡単に説明してくれた。
豊穣の神であるウカノミタマと見た目が子供の眷属神の稲荷のきつねは主従というよりも、永くともにいすぎて親子のようなものだと稲荷のきつねは言った。ウカノミタマさまは見えなくても人々を見守る豊穣の神様として、立派だとはにかむように笑った。
「仲良い親子のようですね」
「タオ・ファミリーほどじゃあないけどな!なっ、お嬢」
「いつもそれに私を含めないでって、言ってるでしょ!」
定番の言い争いを始めたレイナたちのもとに甘い香りが漂ってきた。
「お餅、醤油ときな粉で味付けしてある」
「お、うまそうだな」
「この物語のために頑張ってくださる貴女方も、みんなからの感謝を食べるに相応しいと思うからね」
旨いと繰り返し食べる四人を見て稲荷のきつねは改めて決意を語った。
「僕はあの伯爵を祟らなきゃいけない。繰り返し祟りを起こす眷属がいることで、人は神を、感謝を思い出すのだから」
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