第6話 逢魔が時

夕暮れの数間先すら見えないこの時間帯を何て言うか知ってる?逢魔が時って言って、人間と妖怪が出会う時間とも言われている。

僕が時々見られるってことは、神様も妖の一種なのかもしれないね。畏れを忘れないための神様が、妖ってとこ。



「今日も良い夕方だ」



物語を聞く限り、この想区のカオステラーはこの目の前の少年か、あの屋敷の伯爵だろうと踏んでまずは屋敷に向かうことになった。色んな話を振ってみているが、今のところ彼にはその予兆はない。


ヴィランにされてしまったからか、街の中心部にも関わらず人気のない平屋の家々を抜けて、目的の屋敷にある大きな門の前に立った。



「人の子が少なすぎる、いくら僕らの守護が薄れたと言ってもこれは」


「カオステラーによってヴィランにされたからよ」


「なら早く終わらせないとね」



稲荷のきつねの動作に合わせて思わず、閉ざされた門の前から屋敷を見上げた。赤っぽく照らされたレンガの家は白壁も赤く輝かせ、ぼんやりと曖昧な姿を堂々と見せている。


これから念願の伯爵を祟ることができるのに、稲荷のきつねはどこか悲しそうに微笑んでいる。



「うん。そうなる気はしてた」


「え?」



彼が当然のように手をかざすと大振りの錠前が落ちて門は開け放たれた。さすが神様とはやしたてる間もなく、使用人も警備も出てこない代わりにヴィランが待っていましたと言わんばかりに飛びかかってきた。



「いらっしゃいませ」



昼と夜が混ざり会う時刻、逢魔が時にみた稲荷のきつねの微笑みは美しくもどこか震えるような残酷さがあった。

目が細められ、そっと続きの宣誓が述べられた。



「この屋敷の主人を祟りに来たよ」






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