ロリコン、世界を救う

@Q-i

第1話 うさぎを拾う

くそ、どうなってるんだ日本は。

苛立ちまぎれに持っていたペットボトルを潰してしまった。

バイトで働かせて貰っていた保育園は、俺にとって天職だった。

わがまま放題好き放題のフェアリーちゃんしかいないからだ。

いや勿論俺だって成人して半ばを過ぎて後半戦で、保育士さんたちもいるのだがしかし幼女と幼男の可愛いことと言ったらない。幼男ってなんだって話だが適切な言葉が浮かばなかったんだ。許せ。

あいつらは猛獣で本能的だ。だがそこがいい。せんせいとけっこんするーという幼女のおませさんな発言にはそれ以外の意味はない。俺はせんせいじゃないんだよーと返しながらばいばいしてる横から「月岡さん、今度の日曜日……来ませんか?」としなだれかかってくる保護者は悪意に満ち満ちていた。

止めろあんた子供の前だぞそれに旦那いたよな?ああ?

気持ち悪くて聞かないことにしたが、そろそろ限界を感じていた。

園内でも俺に色目を使ってくる女が多すぎる。

何やら争いの気配までこちらに伝わってくるぐらいだから水面下ではえらいこっちゃになってるに違いない。

最初から、自己紹介の時から宣言しているというのに。

俺が好きなのは子供だと。

俺を口説いていいのは幼女だけだと!!

なのにどうしてこんなことになるのか……むしろ通報されたかった。

いい場所だったんだけどな、と思いながら退職願を潜ませたバッグをそっと見る。

ああ、職を失うというか小さいのと触れ合える機会がなくなるのは大変遺憾ではあるので、なかなか切り出せないがもしも今すぐ俺に幼女を与えてくれたら無職になるのも厭わないのだが……。


そんな益体もないことを考えていたら、ふと明るさが翳った。


もうとっくに陽は沈んで街灯が変わりを勤めている時間帯だったが、街灯が消えたほどではなく、少しだけ暗くなった気がした。

妙な違和感に上を見上げる。

そして……俺は見た。

ふわふわと宙に浮かびながらゆっくり落ちてくる真っ白い物体。

間違いない。

俺の全てが叫んでいる。

あれは幼女だ!!と。

俺は慌てて自転車を放って幼女の落下地点に走った。

ふわふわと降りてくるから怪我の心配などないかも知れないが、万が一!万が一でも幼女が目の前で傷ついたら。

遊びとかなら仕方ないが、そうでない場合は自責の念のあまり死にたくなるだろう。

俺が腕を伸ばせば幼女が吸い寄せられるように、違う俺が幼女に吸い寄せられて抱きとめた。

真っ白いふわふわのワンピースに真っ白い髪、白い肌。

そして白いうさぎの耳。

俺はうさ耳幼女を抱えたまま、膝から崩れ落ちた。

もう何これ。

完璧じゃね?

最高じゃね?

愛くるしくて死にたくなるわ!!

さっきまで荒れに荒れていた感情が浄化されるようだ。実際されまくっていた。

少し疲れた顔で目を閉じる幼女。

やばい可愛いやばい俺がやばい。

興奮のあまり鼻血を出しそうだ。

俺は心の決めた。

この子を守るためなら神にでも抗おうと。

俺の命など投げ打ってやると。

だから。


「あらぁ、カッコいいお兄さん。

その子を渡してくれないかしら?

渡してくれたら良いことしてあげるわよ?」


でっかい鎌を携えた露出狂の美女が現れても、俺は何も怖くなかった。



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