Episode39「成就」

 アジトへ戻ると真っ直ぐエリスの部屋へ向かう。どうすればいいのかまだはっきりとは分からないが、とりあえず会って話をしたかった。セリアの後押しもあってか気持ちが逸るものの、それを悟られるのも癪の為、極力平静を装う。

 大丈夫だ、いつも通りに接してその中で自分の気持ちを見極めよう。

 馬鹿だしアホだし生意気だし、色気が欠片もない貧相な体のガキだが、それでも嫌いにならないのは何かしらの理由があるからか。俺がマルスだったのならエリスとの間に何かあったのは間違いないだろうし、これも自分を知る何かしらの手掛かりになるかもしれない。

 エリスの部屋の前に到着すると一度深呼吸してノックしようとするが、部屋の中から楽しげな声が聞こえ思わず手が止まる。耳を澄ませれば室内にはエリスだけでなくサリエルとヨハネもいるようだった。

 何故あいつの部屋にサリエルがいるのか疑問だが、いつまでもこうして突っ立っていても仕方がない。

 サリエルがいようとなんだ、夜に俺と過ごすとか言い出したのはそもそもエリスであってこちらが遠慮する必要などないはずだ。

 気を取り直しもう一度深呼吸して気を落ち着けると控え目にノックしてみるが、気付いていないのか中から反応はない。今度は少し強めに叩き中にいるエリスに声を掛けると慌てたような声が返ってきた。


「…入るぞ?」


 一応断りを入れてからノブを回そうとするが何故かまったく動かない。


「まままま、待ってください! 今は駄目です!」


 どうやら内側からノブを握り締めているらしく、ビクともしない事から相当な力である。


「約束通り夜はお前の相手してやる」


「よ、夜の相手を…!? そんないきなり…そこまでするんですか…!?」


 あぁ、本当にこいつの脳内はどうなっているんだ。

 いつも通り訳の分からない解釈をしているようで思わず殴りたくなるがここでキレては話が進まない。

 こめかみがひくつきながらも、極力怒りが表に現れないよう努める。


「む、迎えに来てやったんだよ…。俺とデートするんだろ…?」


 しかしそんな気遣いなどこいつには無意味だった。


「デ、デート!? レヒトが迎えに…!? ふっ、騙されませんよ! あなたは誰ですか!?」


 まるで話が通じないクソバカ野郎にとうとう堪忍袋の緒が切れた。

 扉を蹴破るとその向こうにいたエリスが吹き飛ぶ。


「誰かだと? 俺様だコラ」


「ぎえぇぇ! ホントにレヒトでしたぁ!」


 人を見て叫びを上げるとは失礼極まりない奴だ。

 しかし俺を見て驚いた表情で固まっていたエリスは突然何かに気付いたように部屋の中を慌ただしく見渡す。

 その様子にサリエルは微かに笑いながらエリスを諭した。


「大丈夫よ、ベッドの下に隠しておいたわ」


 エリスは言われて安堵するがすぐさまベッドの下を隠すように立ちはだかる。どうやらそこにはよっぽど俺に見られたくない何かがあるようだ。

 その正体が気にはなるが今ここでそれを突っ込んでも面倒な事になるのは目に見えているので構わず話を進める。


「で、どうするんだ。デートするんだろ?」


「レヒトが優しい…絶対おかしいです…」


(…我慢だ我慢)


 思わず眉間に皺が寄るがそれを必死に堪える。


「さて、それじゃ私はこの辺でお暇するわ」


 そんな俺達のやり取りなどまるでお構いなしといった様子でサリエルは立ち上がり部屋から出て行き、そしてヨハネもまたこちらを見て一度元気に吠えるとサリエルの後に続いて部屋から出て行く。最後にサリエルが外れたドアを直すと、ごゆっくりと意味深な言葉を残し静かにドアが閉じられた。

 突然訪れてしまった二人きりの状況にお互い言葉を無くし、とりあえず椅子に腰掛けるもエリスは依然何かを隠すようにベッドの下から動かない。

 このまま黙っていても仕方ないと思いこちらから声をかけようとするが…


「なぁ」


「あのぅ…」


 二人同時に口を開き思わず言葉に詰まった。


「…何だよ?」


「え、ええと…レヒトから…」


「お前から言え」


 エリスは言われて気まずそうな顔で俊巡するが、無言で続きを待っていると観念したように話し始めた。


「えっと…セリアさんとのデート楽しかったですか…?」


「…何だそりゃ」


 そんな事を聞いてどうするのか。とりあえず隠していても後々面倒な事になりそうだ。そう考え正直な感想を述べる。


「まぁ楽しかったぞ、あいつがあんなに可愛いとは思わなかった」


 するとそれを聞いたエリスは目に見えて落ち込むが一体俺はどうすればいいのだろうか。


「セリアさん可愛いですよね…」


「あぁ、可愛いな」


「おっぱいも私よりあるし…」


「そうだな」


 恨めしそうな、怒りの込められた目で睨まれるがどう答えれば正解だったのかまるで分からない。

 全部本当の事なのだから仕方ないし、恨むならペチャパイに産んだ神を恨むべきだろう。


「やっぱりレヒトは私よりセリアさんの事が…」


「だったら今此処に俺はいない」


 しかしこれには深く考えず発言した事を後悔した。


「え、それってつまり…セリアさんじゃなくて私を…!?」


 案の定見事に勘違いされてしまったが、残念ながら今の俺にはそれを否定出来る程はっきりとした事が分かっておらず暴走を開始したエリスを止める言葉が見付からない。


「えへ…えへへへぇ…」


 勝手に盛り上がり始めたエリスは頬をだらしなく緩ませていた。

 思わず顔面に思い切り拳をめり込ませたくなるがそれを理性で必死に抑え込む。

 あぁ何だ、気持ちを知るうんぬん以前にストレスが凄まじい。

 確かにこいつは異常だ、俺にとって特別だ。二千年間で俺をこれ程イラつかせた奴はエリス以外に存在しない。

 怒りを必死に静める俺にまったく気付かないエリスは立ち上がり、突然目の前に詰め寄ってきた。


「あのあの、実はレヒトにプレゼントがあるんです」


 そう言って少し不安そうな、しかし期待に満ちた視線を向けてくる。


「…何だよ?」


「えへへー…これです!」


 エリスはそれまで必死に隠していたベッドの下に潜り込むと何かを引きずり出すが、何かと思えばそれは俺の愛剣だった。


「…そういやお前に預けてたな、それがどうした」


「ふっふっふ、これを…見てください!」


 自信満々に鞘から剣を引き抜くと、折られたはずの愛剣はいつの間にか元の形に戻っていた。


「…どういう事だ?」


「直してみたんですけどー…どうでしょー…?」


 おずおずと差し出された剣を握ってみると今までと何かが違う。軽く振ってみるとよく知る馴染んだ重さだが、どうも無機物であるはずの剣から妙な魔力が感じ取れる。


「お前が直したのか?」


「はい! どうですか!?」


「…悪くない」


 しかし解せない。エリスに鍛冶の心得などあるはずがないし、そもそもこの剣に使われている材料はそうそう簡単に手に入るものではないはずだ。

 これはかつての友が俺の為だけに打ってくれた唯一無二の一振りだ。しかしこれは一体どういう事だろうか。


「お前、どうやって…」


「サリエルさんに教えてもらったんです! えっと、私の魔力は無から有を生み出すから…折れた剣も元に戻せるかなーって…それで力の使い方のレクチャーなどなど!」


 成る程、剣から感じる魔力はどうやらエリスの物らしい。よくよく見れば元々の剣の材質とエリスの魔力が融合したせいか、微かに刀身の色合いが異なっている。

 サリエルに釘を刺されたばかりだが試しにあちら側と接続し力を引き出すとそれに呼応するように剣は淡く紫色に光り出した。どうやら俺の力とエリスの魔力が交じり合っているようで、相乗効果のように剣に宿る魔力が一層強くなったのが分かる。

 これがエリスの魔力によって練り上げられているという事は、この世に存在しない材質で出来た剣という事だ。握っただけで以前よりも遥かに強度が増している事が分かる。

 きっとこいつならあちら側と接続せずとも容易く悪魔を斬り捨てられるだろう。言うなればこいつはエリスによって打ち直された魔剣といったところか。

 まさか魔力でこんな真似が出来るとは思いもしなかったが、それは女神という別格の存在であるエリスだからこそ出来る芸当なのかもしれない。


「…魔法ってのは便利なものだな」


「私もこんな使い方があるなんて思いもしなかったです!」


「しかしそもそも何でこいつを直そうと思ったんだ?」


「え、だってレヒトにとって大切な物だし…このままじゃ剣さんも可哀想だなぁって…」


 剣が可哀想だって?

 相変わらずよく分からない思考をしているが、そんないつもと変わらないエリスに思わず笑ってしまった。


「はは、お前らしいな」


「むぅ…バカにしてます?」


 頬を膨らませるエリスの頭に手を乗せるとワシワシと撫でてやる。


「…ありがとよ、大切にする」


 素直な気持ちを伝えるとエリスは突然顔を赤くして慌て出した。


「え、いやあのえっと…か、勝手に直しちゃって怒ってないんですか?」


「どうせ誰にも直せない代物だったからな、まさかまた一緒に戦えるとは思いもしなかった」


「えへへ…じゃあもっと撫でてください」


 図々しく要求してくるが感謝しているのは事実だ。お礼だと思って言われた通り撫で続けてやる。

 そんな穏やかな雰囲気のせいか調子に乗ったエリスは俺の手を取ると自らの頬に当てた。


「…おっきい手です」


「そりゃ女と比べればな」


 だがそれまでうっとりとしていたエリスは俺の手をじっと見詰めると、不意に悲しげな表情を浮かべた。


「レヒトはこの手で…たくさんの人を殺してきたんですか?」


 そういえばこいつは殺しが大嫌いだったか。不和と争いの女神なのに殺しが嫌いだなんて笑える話だ。


「あぁ、たくさん殺してきた」


「…これからも?」


「それは…」


 その問いに俺は答えられない。

 ルシファー達との戦いが終わった後なんて深く考えていなかったし、自分の存在を知ったとしても、その後俺がどうするかなどまるで想像がつかない。

 ただ一つ言えるのはこいつを悲しませるような事はしたくない。それはつまり…殺し屋家業は廃業という事になる。しかしそれを決断するにはまだ早過ぎた。


「どうなるか分からないが、お前はどうするんだ?」


「私ですか?」


 エリスにはもっと色んな世界を見せてやりたい、そして何のしがらみもなく自由に空を飛んで欲しい。…などと恥ずかしい台詞は口が裂けても言えない。

 しかし戦いが終わった後、エリスは一体どうするつもりなのかは気になるところだった。


 ふとエリスの過去について気になる点があった事を思い出した。

 エリスを拾ったマスターの話だと確かこいつは全裸で店の裏に倒れていた。しかし翼の生えた全裸の女が果たして誰の目にも留まらずにそこまで辿り着けるものだろうか。

 空から落ちてきたと思えば説明がつかないこともないが、そうなると何故突然こいつは落ちてきたのだ?

 俺は二千年前に目覚めた訳だが、果たしてこいつはいつからこの世界にいたのだろうか。翼の生えた人間の話なんて二千年間世界中を渡り歩いていた俺ですら一度たりとも耳にした事がない。

 こいつが俺より長い時を生きていると仮定した場合に考えられるのは二つ。

 一つはずっと空を飛んでいたから見つかる事がなく、何らかの理由で地上に落ちた時に衝撃で記憶を失った。だがこの仮説はエリスがゲートを一つ飛び越えるだけで筋肉痛になっていた事からどうにも違和感がある。

 そしてもう一つはそもそも地上に存在していなかったという可能性。例えばシオンがメタトロンだった頃のように、地上でも天上でもない第三の空間にいたとしたらどうだろうか。エデンを追放されたからと言って地上に行くとは限らないのではないか?

 もしこいつが永い眠りに就いていたとして…神が何らかの理由でこいつの記憶を消して地上に解き放っていたとしたら――


「ぐっ…!?」


 その時、突然頭にヒビでも入ったような激痛が走る。脳内が締め上げられているようにギリギリと音を立て、いつかシオンが発した呪言のような不快な音が耳をつんざく。


「レヒト!?」


 堪らずに膝を突くと頭を掻き毟るが何の感覚もない。それどころか平衡感覚も失われ俺はとうとうその場に倒れてしまった。


「しっかりしてください! レヒト!」


「…大丈夫…だ」


 額から滝のような汗が床に滴るが、極力それをエリスに気取られないよう強がる。そんな俺をエリスは突然抱き締めた。


「本当に…大丈夫ですか…?」


「あ、あぁ…」


 …何故だろうか、不思議な事に頭痛が嘘のように引いていく。抱き締められる事に今まで感じた事のない安心感を覚えた。思えばエリスに抱き締められたのなんて初めてだ。

 しかしこの日々もいつかは崩れ去る…そんな根拠のない不安が胸に広がり出した。


「なぁエリス」


「何です…んっ…!?」


 そんな不安を払拭するように俺はエリスの唇を強引に奪った。突然のキスに目を見開き手をバタバタと振るエリスだが、抵抗する素振りもなく徐々に勢いが収まり大人しくなりそのまま抱き上げるとベッドに寝かせその上に覆い被さった。


「あ、あの…もっと…」


 透き通るような翠色の瞳が物欲しそうに俺を見詰めていた。その返事として再びエリスの口を塞ぐと今度は口内に舌を押し込む。

 エリスは体をビクリと震わせ、込み上げた甲高い嬌声は口を塞がれている為くぐもる。構わず呼吸が出来ない程激しく唇を求め合い、互いに鼻息が荒くなる。


「ぷはっ…レヒト…愛してます…」


 一度離れるとエリスの目はとろんと惚けていた。こんな幼女に欲情するなんておかしい…そうは思うが俺の下半身はいつにもなく膨張している。

 雰囲気に流されているだけではないのかと何度も自分に問い掛けるが、一つだけはっきりとしている。

 それは…二度とこいつを失いたくない。

 こいつのファーストキスを奪った時に俺の元を去った時も、アザゼルに連れ去られた時にも感じていた妙な気持ちの正体はこれなのだろう。

 一緒にいるとイライラさせられてばかりだし、何度も本気で殺したいと思った。それでも俺はこいつと離れたくないようだ。もしもこれを愛と呼ぶのならそうなのかもしれない。

 潤んだ瞳を向けるエリスを見据えると、初めてこの言葉を口にした。


「俺も…愛してる」


 その瞬間にエリスの大きな瞳から涙が溢れ出す。そして俺もまた、肩の荷が降りたようにすっと気が楽になった。


「ほ、本当に…?」


「…何度も聞くなクソが」


 自分でも驚く程あっさり口に出来たが、胸につっかえていた何かが取れたようにすっきりしていた。

 エリスを愛している、恥ずかしい事この上ない台詞だが、いざ口にしてみると違和感がない。それは俺がかつてマルスで、こいつと愛し合っていたからなのかは分からない。ただエリスを求めてはいけないという本能的な衝動は今のところなかった。


「私人間じゃないですよ…記憶も何もないし…」


「そんなの俺だって同じだ」


「それにおっぱいもないです…」


 そんな事を言うエリスの胸を服の上から鷲掴みにすると聞いた事のない可愛い声と共に体を大きく痙攣させる。その様子を見て何だか嗜虐心が沸いてきた。


「感度は悪くないみたいだな」


「い、今の…何ですか?」


 当然ながらこういった行為は経験がない上に相当感度が良いらしい。初めて味わった快感に驚きと興味で一杯のようだ。


「こ…これがセックス…?」


「その準備段階ってところだ」


「あ、わ、私達…恋人…になったんですよね?」


 その言葉に何故か胸が締め付けられ、先程感じた不安が再びぶり返してきた。

 それは先程よりも強く、まるでこれ以上の行為を拒むように全身が硬直する。

 今までの俺だったら思わずここで終わっていたのだろうが、寧ろ俺の意思や気持ちに逆らうような不可解な枷に怒りを覚えた。

 もしもこれが罰だとして、だから何だ。もし本当に神から罰を与えられたとしても俺は再びエリスと出会い恋に落ちた。そんな人の恋路を邪魔する神など馬に蹴られて死んでしまえ。

 再び頭が割れる程の激しい頭痛が襲い掛かり、思わず苦痛に顔を歪ませる。


「レ、レヒト…?」


「大丈夫だ…そうだ、俺達は恋人…」


 何とか無理矢理笑顔を作って微笑みかけてやるが頭痛は一向に治らない。


(邪魔するな…クソが…)


 額から流れる大量の汗を見てエリスが不安そうな顔を向けてくる。

 もう二度と…こいつにこんな顔をさせたくはない。

 いつだってエリスには能天気に、アホみたいに笑っていて欲しい。

 するとエリスは両手を俺の頬に当てると自分から唇を重ねてきた。

 先程のような激しいキスではなく、まるで俺を労わるかのような優しいキス。すると不思議な事に頭痛が徐々に治まっていく。


「痛いの痛いの飛んでけー…」


 そう言って今度は優しく頭を撫でてくる。

 何やら主導権を奪われたようで癪だが頭痛が治まったのは事実の為、ここは大人しくしておく。


「どう…ですか…?」


「…続きするぞ」


 照れ隠しにぶっきらぼうに言うとエリスの上半身を抱き起こし着ていたワンピースを脱がせ、再びベッドに押し倒すと白く巨大な翼と長いブロンドの髪が広がった。

 その姿は何処か幻想的で、穢れない純白の存在をこれから汚してしまうのかと思うと今までに感じた事のない興奮を覚える。

 エリスは流石に恥ずかしいのか胸を隠し視線を逸らすが、その仕草の一つ一つが俺の情欲を駆り立てた。


「あ、あのレヒトも服を…」


 自分だけ見られるのは耐えられないのかそんな事を呟く。

 言われた通り全て脱ぎ捨てると股間で激しく自己主張するイチモツを見てエリスの目が驚愕に見開かれた。


「こ、ここここれは…!?」


「お前が前に見せろって言ってたモノだぞ」


「大きさが全然違う!?」


「興奮してるからな」


「こ、興奮…え、私に!?」


 こいつわざと俺に恥ずかしい台詞を言わせようとしているのではないのだろうか?

 一瞬そんな事を考えたが、こいつにそんな計算高い真似が出来ないのはよく知っている。


「…そうだよ、文句あるか」


「何でだろう…す、凄く恥ずかしいのに…凄く嬉しい…」


 嘘偽りなく、本心を何でも曝け出すのは良くも悪くもあるが…エリスはこれで良い。

 それにしても何もせずまじまじと至近距離で観察されるのはどうにも落ち着かない。

 最後に纏っていたエリスのショーツを一瞬で引き抜くとお互い生まれたままの姿となる。…一瞬見えたエリスの恥部には毛が生えていなかった。


「い、いつの間に!?」


「経験の差だ」


 エリスは咄嗟に下半身を隠し今度は胸が丸見えになるがその事に気付かず顔を真っ赤にさせながら恨めしそうな目を向けてくる。


「むむむ…今まで何人の女性と…」


「さぁ…いちいちそんなの数えてない」


「で、でもこれからは私だけですよね…?」


「え、あー…うん、多分」


「なーっ!? 付き合っていきなり浮気宣言!?」


「付き合うって…まぁそうだな、恋人だもんな」


 言ってて恥ずかしくなるが受け入れようじゃないか。

 エリスに近付こうとする度に俺に起きた異変を省みると何かが俺達の邪魔をしているとしか思えない。しかし愛とは障害が多ければ多い程燃え上がるものだ。

 こいつを愛する事を神が許さないというのなら何処までも俺は逆らってやる。

 ぎゃーぎゃーと文句を言うエリスだったが、口を塞ぐと途端に大人しくなる。もしかしたら今後エリスがやかましい時に使える手かもしれない。

 気を取り直し甘い空気になったところで俺は小さな膨らみの先端に舌を這わせた。


 それから一通りの性行為に及ぶが、長い間ご無沙汰だったせいか俺の性欲は中々衰えなかった。

 エリスもエリスで好奇心旺盛なのか痴女の才能でもあるのか…はたまた俺達の相性が良いのか、何れにせよ相当感度が良いようで初めてだというのに何度も絶頂を味わい何度か失神しかけていた。

 しかしエリスの性欲もまた衰える事なく、幼い容姿でありながらまるで貪るように快楽に溺れ行く姿は余りに淫靡で、エリスとの行為がこんなにも良いものとは予想だにしていなかった。

 結局朝方まで体を重ね合った俺達は疲れ果ててそのままベッドで眠りに落ちた。

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