第12話 水面の龍
「龍?」
ヒロが呟いた……。
水面を波立てながらスラーッと滑るように泳ぐ姿は月明かりに照らされ、息を飲むほど美しい。
「プレシオサウルスだ…」
僕は呟いた。
3~4mほどの水棲爬虫類。
なんで気づかなかったのだろう……。
絵巻物に描かれていた龍の姿は確かにソレだった。
しばらく水面の龍を眺めていた、龍は潜ったり…浮上したりを繰り返す。
僕らは言葉を交わすことも無く、ただ龍を目で追いかけた。
もっとよく見ようと、ヒロがフラフラっと池に近づく、龍はヒロが近づくとゴボンッと池に身体を沈める。
僕も池に走り寄り、ヒロの隣で池を覗き込む。
くらい水底で、龍が泳いでいる影が見える。
龍がヌッと首を水面に突き出した。
僕らのすぐ前に龍の頭がある。
それほど大きくは無い…頭は僕らより一回り大きいくらいだ。
水面スレスレに顔を出した龍の眼が僕らを視ている。
それはほんの数秒の接触…僕らは龍に触れた。
ヒンヤリとして…ザラッとしている。
銀色を混ぜたような薄い青の身体に深い青の模様が美しい。
「これが龍……」
龍は僕らの前で大きく
その姿は月に向かって何か叫んでいるように見えた。
いつしか止んでいた小雨。
月明かりに照らされた龍が光の粒のようになって水面から虚空へと溶けるように消えていく。
僕らはそれをじっと無言で眺めていた。
龍神池に静けさが戻っても、しばらく僕らは、その場に立ちすくしたままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます