第7話 龍の歯

 絵巻物には描かれていないが、神主さんの話では続きがあった。


 龍神を憐れみ、また祟りを恐れた村人たちは、龍神の胴体を丁寧に埋葬し、祠を建てた。

 それがいつしか神社になって、今に至るという話だ。


 絵巻物の迫力ある絵、でもなぜだか悲しいように思えたのは描いた人が、龍神を憐れんでいたのではないだろうか。

 武者の勇ましさというより、龍神と村人の悲しさの方が前にでてくる。


 ヒロは黙って聞いていた。

 RPGのような龍退治を想像していた僕らは、絵巻物から伝わる悲哀を感じていた。


「で…コレが竜の歯じゃ」

 神主さんは、僕らの前に小さな木箱を差し出した。

 白い綿の真ん中に僕の親指くらいの牙がひとつ収められていた。


 僕らは、神主さんと沢山話した。

 ヒロは親から借りたデジカメで絵巻物と竜の歯の写真を撮っていた。


「今日はありがとうございました」

 僕らは神主さんにお礼を言って、神社を後にした。


 夕食のとき母さんが僕に

「今日も神社に行ってたの?…あんまり神主さんに迷惑かけるんじゃないわよ」

 と軽く小言を言われた。

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