第4話 噂
それから、神主さんのもとに刑事は毎日のように訪れた。
住んでいた県も違う、もちろん面識もない、でも警察は神主さんを疑っていたそうだ。
近所にも聞き込みを行い、神主さんのことを調べ始めた。
すると、いつしか神主が犯人だと噂が広まる。
しかし、どんなに調べても、女性と神主を結ぶ証言も証拠もない。
不可思議な事件は、何の進展もないまま数年が過ぎ…皆の記憶から事件は忘れられていった。
「神主さんが疑われてたんだ」
「あぁ……あの頃は思い出したくないよ……」
僕は、軽い気持ちで神主さんに事件のことを聞いたことを少し後悔していた。
もっと面白い話だと思っていたんだ。
「息子が不憫でね…」
「えっ?神主さん、子供いたの?」
「えっ?…あぁ……当時は小学生か…キミ達と同じくらいだったな、そういえば…」
「今は…息子さんは?」
「うん……死んだんだよ……10年になるかな」
神主さんは、僕の頭を撫で…自分の子供に接するような目で僕を見ていた。
神主さんは、黙って立ち上がって僕らにアイスを差し出した。
「事件のことは、それくらいしか知らないな…幽霊の話も、不可思議な事件がオカルトじみて伝わったんだろうね……ワシは幽霊なぞ見たことないがね」
と笑った。
「なんだ…見たことないのかよ」
ヒロが残念そうに言う。
「池の隅に、女性の供養のために小さな
「アサ!祟られるぜ!」
「よせよ…」
「ねぇ神主さん、今度は龍神の話をしてよ」
ヒロが神主さんに話をせがむ。
「龍神か…そうだな…今日は帰りなさい。明日、この神社に伝わる絵巻を見せてあげよう」
「ホント?」
ヒロが目を輝かせる。
僕もドキドキしていた。
「あぁ…絵巻と、竜の歯が伝わっているんだ、この神社には」
「歯!」
「あぁ、龍の歯だ」
僕らは神主さんと約束をした。何度も何度も、ヒロは念押ししていた。
そして、神主さんと一緒に祠に手を合わせて、その日は帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます