第4羽 剣闘士の草原 4
話し終わると
「これで話が終わったと思っただろう」
「えっ」
まだあるのか、僕がそう言う前に巌は話し始めた。
「2回目の戦いがあったのが先週。そっから今日で6日経ってる。明日で丁度7日目だ。何かあるとすれば、明日だろうな。爺さんはそう言ってるし、俺もそう思う」
「それで」
「ん」
「僕にそれを聞かせてどうしようって言うんだ」
「おめえも明日、一緒に行ってみないか、って思ってな」
「僕をおまえの変な仕事に巻き込むつもりか」
「変な仕事っていう奴があるか。失敬だな」
「僕には陰陽師の真似事はできないぞ」
「陰陽師じゃねえ」巌は帯の辺りをポン、と叩いた。「
そんな事はどっちでもいいよ、と思ったが口には出さなかった。出してしまったが最後、陰陽師と呪禁道士の違いについて延々と聞くことになるからだ。
「で、どうする。明日行くか」
「……考えとくよ」
断るのならもっと明確に拒絶するべきである。ことに巌の様なタイプには。
「よし、じゃあ明日の昼過ぎに迎えに来てやろう、待っていろ」
このように、奴の中ではもう行くことに決まっている。こうなる事はわかっているのだが、それでも、僕には引っかかっている事があった。
「聞いてたかい」
僕の言葉に、ケージに戻っていたブルーボタンインコの伝蔵はうなずいた。
「うむ、大体はな」
ボタンインコはアフリカ南東部を原産地とするインコの一種。体調は15センチに満たないが、大きめの
伝蔵が会議の開催を宣言した。
「それでは第132回定例会議を始める。本日の議長は我、伝蔵が務める。議題は喫緊のものが無ければ、
「異議なし」
セキセイインコのリリイが答えた。
「私も異議なし」
ヨウムのパスタが答えた。
「同じく」
モモイロインコのミヨシが答えた。
「早よ始めようや、もう眠たい」
総勢7羽の十姉妹ファミリーを代表して、トド吉が答えた。
皆の返答を受けて、伝蔵は一つ頷いた。
「ではあの話、率直にどう思った。皆の意見が聞きたい」
「統合失調症の症状ね」ミヨシが面倒臭そうに言った。「幻聴と友達になるなんて典型的。幻聴に悪口言われないだけ幸せな患者よね」
「物語としてはありふれた冒険
「つまりオリジナリティが無いっちゅう訳やな」
トド吉のその言葉に、パスタは反応した。
「それはオリジナリティという言葉をいかに解釈するかによるのではないでしょうか。過去の作品と同様の展開があるからといってオリジナリティが無いと即断できるようなものでは本来ありません。今回の話においても過去の物語との相違点も見受けられますし一概に」
「パスタ」早口でまくしたてるパスタを伝蔵が止めた。「それは論点ではない」
「……すみません、つい」
パスタはしょげかえってしまった。
「はー、ビックリしたー、なんやねんなもー」
「トド吉も茶化さない」
リリイの一言は余計だったか。今度はトド吉がヒートアップしてしまった。
「茶化してません、何でや、何でワイが注意されなアカンねん。ワイは被害者でしょーが」
「そーやそーや」
「お父ちゃんをいじめるな」
背後のファミリーにも支えられ、俄然トド吉がやる気を出したとき。
「会議中である!」
伝蔵の一声で場は静まり返った。
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